可愛い女子には必須の手術となった感のある口唇部手術。白唇部切除術と、口角挙上術の組み合わせでこんなに可愛くなります。手術後一年近く経て来院されましたので掲載します。今回、別の部位の診察の為に来院された訳ですが、お願いして撮影させてもらいました。一年近く経ての画像は滅多にないので皆さんの参考になると考えたからです。但し、ブログ掲載の契約は手術部位だけなので、このブログには口周りのカット画像を載せます。手術時からの変遷を載せて説明します。
症例は36歳、女性。上口唇長(=鼻柱基部〜Cupid’s bow)19mmと長く、鼻翼幅は33mmと大きくないが、口唇幅70mmと大き目。下左図の如く下顎歯槽および下口唇が上口唇より前にあり、そのため上口唇白唇部がだらんと平坦であるため立体感に欠けるため、元より長さがあるだけでなく面が見られ、いわゆる〔鼻の下が長い〕印象を呈している。
この様に、左図の如くデザインしました。切除幅は6㎜です。上口唇の平坦感を解消する為に裏返りをプラスしたいから、皮下脂肪層全層切除で口輪筋は縫縮します。口唇幅に比して切除の距離が少ないため口角が下がらない様に、口角挙上術を要します。シミュレーションで口角は斜め45度=頬骨隆起方向へ5mm、赤唇縁に沿って7mmの三角形の切除としました。
上図は術直後です。
上図は術後1週間で抜糸直後です。
上図は術後2週間です。
上は術後約8か月の画像です。メイクしているので、傷跡は見えません。もちろん運動機能は正常です。力を入れないでいると隙間が僅かにあります。この程度が可愛いのです。
最近口周りの手術が続いています。私は幼少時から、他人の顔を見つめる癖があります。父が私に癖を付けさせたのです。人の顔を見る時先ずは目元に視線が行くものですが、最近口元に目がいく様になりました。職業病ですかね?。そうして視ていると、巷間の多くの人が日常的に口をしっかり締めているのではありません。例えば早足での歩行時は、呼吸の為にほとんどの人が口に隙間を開けています。電車の中で対面の人を見てもスマホを見ながら多くの人は口を開いています。特に現代はダテマスクしている人が多いので、呼吸の為に開いている人がほとんどです。口は見えなくても、そこは私は顔のプロですから、頤の動きで判ります。
術前はのぺっとしていた上口唇が、適度に外反し上赤唇部は前突し、白唇部が軽度湾曲して唇らしくなりました。やはり唇は、白唇と赤唇のユニットの3次元的形態を頭に入れながら手術プランを立てる事が重要だと証明されました。
口元の定番の評価基準にエステティックライン;Aesthetic lineがあります。側面像で鼻尖と頤の最前点を結ぶ線を言います。口唇、それも下と上それぞれの口唇の位置が、線より前にあるか後ろにあるかを評価します。日本人では上下口唇が一直線上にあるのが理想です。
皆さんご存知に様に、アジア人は鼻が低く頤が後退している為に相対的に口唇が前突している傾向にあります。また鼻と頤は骨格が貧弱だからで、相対的に歯槽骨が前方にある傾向にあり、その結果出っ歯だったり、口が尖っていたり、下口唇だけが前突していたりします。白人ではエステティックラインより口唇が後ろにある者が多く、大きな差が有ります。
本症例は、アジア人の中では鼻が低い方でも頤が後退している方でもなく、歯槽骨が前突している方ではなく咬合も正位ですが、上口唇に比して下口唇が前方にありました。エステティックラインプラスでした。上口唇が長く貧弱で間延びしていたから下口唇を押し出していたのです。だから手術適応なのですが、結果的に上口唇を外反させて上口唇縁を上方移動したら、相対的に下口唇が前突しなくなり、上口唇と同列の前後位置関係になりました。エステティックラインが綺麗にゼロ化しました。見事な結果と言えます。いや、それは症例患者さんの美容的観点が正しかったからです。診療は私と患者さんの「共作」です。
実際には、手術侵襲による口輪筋のダメージが回復し切るには月単位を要します。こうして診てきたら1か月目にはまだでした。3か月目には治りました。当初は力を入れないと隙間があります。ただしその前、雰囲気が可愛くなるからどの患者さんも喜びを表わします。
今回拡大図も含めて術後一年の画像を戴きました。上口唇が短くなり、すっきりとしていながら立体的な表情の豊かさが醸し出されると、静的;Staticにも動的Dynamicにも、あたかも表情が相手に好意を示すかの様に感じられます。周囲の誰もが可愛く感じると予想されます。 ピンクの口紅を引いた上下口唇の間に隙間が見える画は話し掛けている一瞬の間の様に感じられ、可愛いです。
今回の話題は創跡です。1年経たら見えませんね。それだけです。いや幅が広がってないからです。真皮縫合を密にしているからです。
口周りの手術は運動の頻度が多い所なので目立たなくなるのに月単位の期間がかかります。唇は一日3回食べる時に開閉しますし、話す機会は個人差があるにしてもよく動きます。白唇は口を尖らす際(ウ、オと言う時。)に中央に寄せられ鼻とズレる力が働きます。口を横に拡げる際には鼻も一緒に動きますから白唇の創跡の線には力がかかりませんが、口角は引っ張られます。横V字の傷跡が引き伸されます。
とにかく口周りの運動は頻度が高いのでその度に創跡が拡げられる力が働きます。縫合した創は顔なら1週間で塞がれます。でも真皮層が強固になるまでには3か月はかかります。真皮はコラーゲン繊維の糸玉です。手術すると切開線でコラーゲンは切断されて谷になり、縫合して隙間を狭くすればコラーゲンが再生して谷に橋渡しをします。埋まるのに3か月かかるのです。その間引き離す力により、コラーゲンが出来ては切れてを繰り返し、その結果表皮も引き伸されます。創跡が広がるとはそう言う仕組みです。
真皮層の谷が拡がらなくする為には真皮縫合が有用です。真皮層のコラーゲンの束同士を寄せておけば橋渡しの繊維が一度も切れません。約3か月で谷が強固なコラーゲンで埋まるまで糸が支え続けます。
実は真皮縫合は難しく習得まで何年も掛かります。二つの問題点があり、糸が出て来ない様に結ぶ、切れ端を短くする技術は0.2㎜単位の技術です。もう一つ逆に隙間が内容に真皮の最浅層を寄せないと意味がありません。これにも0.3㎜単位の技術を要します。私達美容形成外科医は大学病院に入局するなり、桃栗3年柿8年をもじって、糸切り(短く切る技)3年真皮縫合8年と唱えながら毎日修行したものです。先日他の大学形成外科出身の医師に聴いたら、どの大学病院でも唱えられていたそうです。
形成外科の修行を8年以上した医師以外には絶対に出来ません。チェーン店の医師には習得できません。だから、チェーン店で受けた患者さんが、「創跡が拡がって後戻りしました。○㎜だったのが○㎜切ったのに○㎜戻ったのです。」と私に訴えに来ます。私がもう一度切り足して、創跡も無くして差し上げて、何人もに大喜びされました。
私が一生懸命に真皮縫合しても絶対に拡がらないと限りません。取り過ぎや、加齢性に皮膚のコラーゲンが弱い人では、何人かは幅が出来ました。年間百人以上の症例のうちで年間2例です。その点については原因を説明して許して下さい。
本症例は1年経て診れば創跡が見えないと言える典型的な例です。患者さんもお悦びで納得顔で来院されました。