いくつかのサイトで、私の行なう口周りの手術の話題が載っています。
○創跡が綺麗で目立たない。○形態の設定が適切。○手術前の評価が念入り。○美容学に基づいた顔面バランスの評価に依る手術法(デザイン)の選択が丁寧に為される。等々の評価を頂いている様です。私が真面目に【診療】しているからでしょう。主にブログに載っている画像と説明の内容が評価されています。ただし一部には、×カウンセリングが長くて面倒。×希望通りの切除を避ける。等の悪評もある様です。更に×数症例に於いては創跡が見えるのですが、許容されています。
最終的に創跡が見えるのは、年間約100例のうちの一例以下で、それぞれに原因も考察されているから、読んでいる患者さんは理解しています。それに正直に、改竄無く提示しているので信用が得られているのでしょう。必ず術前から載せて、すごい画像の術直後から術後3ヶ月の完成まで経過を追っていますから、いいとこ取りでないし経過が解るから、患者さんの計画を立てるのにも有用だと好評です。もちろん私の説明時にも応用します。
実は最近特殊な症例が増えてきました。骨切り術後の口周りの変化を治したい症例です。口周りは骨格性のバリエーションが広く、しかも形態は骨と軟部組織のバランスから成り立っていますから複雑な考察を要します。その中でも側面から見た鼻、唇、頤の位置関係はエステティックライン,(A)Esthetic line:略してイーライン,E-lineと称され最重要項目で、一直線上が理想とされます。少なくとも口が出ていない方が美しいのは間違いないでしょう。何回も書いて来ましたが、人間だけが口で食事を啄まないので、口が出ていないのが人間らしいのです。
そこで予め、骨切り術でE-ラインを作り上げてから、口周りの形態を更に修正する事を計画する人が多く来院することになりました。良く解っている人です。両顎の歯槽骨を後退させると、口唇、特に上白唇部の傾斜が変わります。前に尖っていた口唇が下向きになり、長さは変わらないのに前方から見える長さが増えます。サイト上でもそうですし、最近では予想を立てて順次手術することが常識的になりつつあります。予め口周りの手術を予定しておく様に奨める骨切りを得意とする形成外科医も現れました。さすがに私を紹介しては居ない様ですが、私は美容形成外科医30年で長い間に有名な(上手でまともな非美容整形屋)医師には顔が利くので、患者さんが私がどうかを訊いたら骨切り医も奨める様です。予め段取りを決めて来る患者さんもいらっしゃいます。
更に一層計画的に、私に先ず骨切りを予定していることを告げながら、口周りも希望していると私に告げ。まず骨を切ってからもう一度来院されて、「やっぱり口唇短縮術が必要だったのよ!」と依頼して来る患者さんさえも居ました。私に見せて「そうでしょう?。」と問いかけます。私は思わず「そうなんです!。」と患者さんと意気投合してしまいました。その上で「彼等が口周りの切開手術をしないなら、私に任せて下さい。」と心の中で呟きます。確かに両方の手術を請け負っていたら時間が足りないし、得意な好きな手術ばっかりしていた方が、その手術の精度というか、質が向上するのです。これまでブログにも書いて来ました。私は手術を重ねる度に進化しています。
そのような訳で最近の数例は骨切り術後の症例が続いています。本症例は典型的です。よーく知っている仲良しの形成外科医が一次的術者だから、骨格の出来映えが素晴らしい。二次的に私が口周りの手術、いつもの白唇短縮術+口角挙上術をすることが出来て光栄です。患者さんの努力に対しても敬意を表します。得られる結果が良好であろうことも予想されます。何しろその道の第一人者二人のコラボレーションですから。いや違います。素材=患者さんの外面と内面が美しく、調和が取れているからです。品がある人だから良好な結果が予想されるのです。
症例は30歳、女性。白唇長:鼻柱基部〜弓の底=19mm。昨年12月に他院(日本一骨切りが上手い美容形成外科医の一人)で歯槽分節骨切りでセットバック:上顎後退5mm歯牙を2mm削り、同時に下顎を歯槽分節骨切りで咬合を合わせた。E-ラインがマイナス3mmになり、美しい口元だが、白唇部の傾斜が無くなって長く見え、余った感と長くなった感じ。客観的にも長い。当然の如く短縮の適応である。本症例の患者さんは調べていたし、理解していた。
顔面の縦バランスは上顔面(生え際〜眉下)65㎜:中顔面(眉下〜鼻下)60㎜:下顔面(鼻下〜頤尖)68㎜で下顔面が長い。下顔面の配分は上口唇(白唇+赤唇)25㎜:下口唇(赤唇+頤)48㎜で5:8が理想なら両方が長い。頤は綺麗なカーブで、下顎縁のカーブも綺麗なので、下顎を触る必要は無い。やはり上口唇を短縮して下顔面を短縮するべき適応である。なお画像でご覧の様に人中は溝がありCupidの弓は明瞭。検討の結果。幅5mmを口輪筋上まで切除で、口輪筋を折り畳んで外反を得る。人中や弓は作成しない。
顔面の横バランスは内眼角間35㎜:鼻翼幅34㎜:口唇幅44㎜で黄金分割比の5:8が理想なら3mm横に拡大したいから、口角挙上は45度5mmが適応と考えられた。
下に術前、デザイン画、術直後、術後1週間の抜糸直後の正面画像を並べます。
骨切り術後で締まりのある口元ですが、長くなった白唇が間延び感を見せていました。デザインは上記の通りです。術直後はいつもの様に局所麻酔の分量と腫脹で膨隆していますが、短くなったので、すっきり感が美しい。術後1週間でもいくつかの点が解消しています。鼻の位置が元に戻りつつあります。赤唇縁の特に弓の頂点が術直後は引っ張られていたのが、術後緩くなります。口角部の赤唇部は内出血ではみ出して見えます。患者さんは「右側は治り難いのです。」と教えてくれました。
下に二列、術前と術直後の両側面と両斜位の四方向。
E-ラインがマイナスだと強い印象を呈します。外人の顎です。上白唇部の傾斜(C-カール)が無く平坦です。外人顎なのに赤唇が薄く、アンバランスです。
上2列は術直後と術後1週間の4方向です。 術直後は局所麻酔の残存(数時間)で動作が異常です。痛々しそうな顔にも見えます。術後1週間ではいい表情です。口も閉じていますが随意的です。筋と神経が回復して不随意に表情が保たれる様になるのは、2〜4週間掛かります。まだ白唇部は腫脹で内反しています。どの点も治るのはお互いに知っているから心配ありません。
下に術後2週間の画像
側面像斜位像では、口角の傷跡が見えます。本当に治りに左右差が起きています。「何しても右側の治りが遅いのです。」と仰る通りです。しかし素敵な口元です。
本症例では人中や弓は作りませんでしたが、人中は短くなるので溝から窩になりはっきりします。赤唇も適度に露出して冷たい印象ではなくなりました。おしとやかで知性的で進化人ですが、冷たい印象ではつまらない。唇は可愛さを現します。
何回も書いて来ましたが、口唇(白唇部)短縮術の鍵は創跡にあります。そして創跡が目立たなくなる保障は真皮縫合の精密度に依存します。私は口輪筋、真皮、皮膚表面の3層縫合しますが、真皮縫合で隙間無く寄せておけば術後も創跡が拡がりません。実際には、私はこの手術での約4㎝長の創に対して最低18針の真皮縫合をしています。2〜3㎜間隔です。でも見せたとしてもその時点では創が閉じているので何針かあるのかは見えません。結局ブラックボックスなのです。つまり結果に依存しています。
真皮縫合とは皮膚の裏側の、コラーゲンと弾性繊維のつまった真皮層を縫い寄せます。ただの中縫いとは意味が違います。10年近く研鑽した形成外科医の得意技で、他科の医師には出来ません。美容外科のチェーン店には、形成外科の研修を受けた医師がほとんど居ません。チェーン店で口唇短縮術を受けた患者さんはみ〜んな、創跡が広がっています。そして幅3㎜になったら、後戻りも3㎜しています。私は後戻りさせません。創跡が拡がらないからです。
術後2週間ではまだ運動回復が成立していません。ただし私は、この数年間というもの年間100例前後の症例を経験していますから、標準的な術後経過を認識しています。どのようなデザインで手術すれば、どのような完成時の結果になるのか予想できます。本症例も素敵な結果が頭に描かれています。やはり中期的経過は術後2週間では完成しません。術後1か月では更にダウンタイムを経て形態も機能も軽快しているでしょう。お楽しみに!