口周りの手術は白唇部短縮術と口角挙上術の併用が主体です。私は日本一丁寧に傷を縫合する美容形成外科医ですから、手術時間を要します。SNS上でかなり話題に上がっているそうです。患者さんが増えて、最近では鼻下と口角の、どちらかから二回に分けて受ける患者さん、またはどちらかだけで済む患者さんも居ます。それなら、当院の手術時間枠の3時間45分以内に2例出来ますが、両方ではやはりぎりぎり一例しか出来ません。どうせ1症例に限るなら、さらに時間を取って静脈麻酔で楽に受けようという策もあります。それに静脈麻酔下で手術すると患者さんが楽なだけでなく、痛がらないので手術中に気を使わないでよいし、出血が少なく術後経過も早く治ります。今回はまずその手術前、手術直後の画像を見て、これまでの症例と比べてみれば判るでしょう。
症例は、29歳、女性。昨年1月S美容外科でで鼻プロテーシスと異種軟骨で鼻中隔延長術を受けたが、見ての通り鼻尖が下がっていない。しかも見ての通り鼻柱の傷跡が線状に陥凹しています。この点はいつか治したい希望でした。診療中どちらが本題か判らなくなりました。やはり本題はこちら。白唇長(鼻柱基部〜赤唇縁の中央)=20mm。歯科矯正中でもデバイスは口腔側にあり支障は来さない。白唇の傾斜が強い、つまり前突。しかも白唇から赤唇へ向けて内反傾向、つまりC-カールがない。
計測すると、顔面縦の比率は上顔面(生え際〜眉下)68㎜:中顔面(眉下〜鼻下)62㎜:下顔面(鼻下〜頤尖)68㎜で下顔面が長く、上口唇(白唇+赤唇)26㎜:下口唇(唇〜頤尖)45㎜と5:8ではあり、上下とも長い。顔面部品の横比率は、内眼角間35㎜:鼻翼幅36㎜:口唇幅55㎜黄金比率の5:8に比べて口唇幅が2㎜小さい。人中と弓ははっきりしている。
上記の診断から手術プランを立てました。上口唇は5mm切除の適応。口輪筋を折り畳みC−カールを作る。歯科治療は2週間避けること。口角は30度方向に5×8㎜引き上げて余り大きくしない。静脈麻酔を希望した。
先ずは術前と術直後の画像を供覧します。
術前の正面像は上記の通りの形態です。デザインは静脈麻酔の前にします。あおり運転いや、下からあおりの写真ですから、口角のデザインの角度が違って見えますが、30度目尻方向へ引き上げました。
手術直後の画像は血痂が着いています。鼻が横下に引っ張られています。数週間で必ず元に復します。皆さんにこの様な経過をお見せして、必ず治ることを画像で証明したいから、こうして術直後から定期的に提示していきます。すごい画像を載せるのはその為で、隠し立てはしません。
右側面と左斜位の画像、左二葉は術前、右二葉は手術直後です。腫脹が強い症例です。静脈麻酔をかけると、痛くても血圧が上がらないので、手術中から出血が少なく術者としてはやり易いし、患者さんも楽ですが、血圧が上がらないのは末梢血管が拡張しているからで、血管から体液が漏れ出し、局所の組織内に細胞外液が溜まります。つまり腫脹(腫れ)がいつもより多くなります。従って、形態的、機能的な評価は難しい。
今回は静脈麻酔下での手術直後の画像を載せました。実は静脈麻酔下での切開手術の術後経過はむしろ早いでしょう。出血が少ないからでもありますが、静脈麻酔で受けると痛くなかったので、術後の精神状態が安定しているからでもあります。
こうして静脈麻酔下での口周りの手術の画像掲載を開始しました。術後1週間では随分良くなることでしょう。お楽しみに!。
本年6月からは術後経過の画像と説明を1シリーズのブログに足して行って更新することにしました。下記の説明を、経過ごとに書き加えても読むのが面倒なだけだからです。
上の画像二葉は術後1週間で抜糸した直後です。
4方向で傷跡が目立たないのですが、腫脹で白唇が膨れていてまだ形態が見えてきません。動的機能は回復途上でした。もちろん構語に影響は及ぼしていません。
そして術後2週間です。正面像と近接像です。
鼻翼の幅は戻り始めました。術前から鼻翼の位置は下がっていましたが、鼻柱の位置も下がったので現時点では鼻翼だけが下がって見えません。もちろん鼻全体が引っ張られています。それにしても口角の傷跡は既に隠せています。そしてキュンと挙がった口角は笑顔を演出しています。
4方向でも、笑顔を湛えた様で優しい印象です。口紅だけで隠せます。赤唇中央がチュンっと前に裏返って、幅も上下の比率が合っています。実は赤唇の幅も黄金分割比が適切とされてきました。5:8です。
鼻の位置と閉口時の隙間は筋肉の回復に依存します。手術後の腫脹は表情筋のトーヌスを伝えません。覚醒時は顔面表情筋も体幹や四肢の筋も常に弱く力が入っています。座っていたり立っていたり姿勢を保つためであったり、手足を使う準備のためだったり、顔の表情に精気を見せる為です。もちろん話す、食べるもです。これをトーヌスといいます。
手術後は、顔面表情筋に向かって脳から常に神経の電気信号が流れてきているのに、表情筋が腫脹で浮腫んで動きが弱いのです。肉離れと似た状態です。
最近多くの症例を経験して、筋力の回復の標準的順位が把握できるようになりました。口を閉じる口輪筋は早期に回復し、画像で見られる様に術後1週間では隙間が気になりません。術後2週間ではトーヌスが伝わり意識しないでも就寝時でも閉じてきます。鼻翼を寄せるのも口輪筋ですが、測ると、術後1週間で術直後の半分戻り、早い症例では術後2週間でもとに復します。鼻翼が引き下げられるのに抗するのは上口鼻翼挙筋ですが、標準的には術後3週間、遅い症例でも4週間で戻っています。鼻柱基部を挙げるのは鼻柱下制筋ですが、いつ戻ったか判らない症例が多いです。それに、人中短縮術と称する患者さんが多く居る様に、人中部が引き下げられます。だからむしろ戻らない方がいいのかも知れません。本症例でも両側鼻翼基部と鼻柱基部を結ぶ三角形が術前は上向きだったのに、現時点では直線上にあります。鼻翼の位置は戻って欲しいのですが、鼻柱の位置は戻らない方がいいのかも知れません。
術後2週間までの形態的評価をしました。上に書いたようにまだ変わります。そして腫脹の消失もまだで、口唇の傾斜や、外反。口角の形もまだ変わります。本症例の患者さんは明るく表情が優しく、可愛いので術後4週間をお楽しみに!
手術から1か月が経ちました。
今回は薄くメイクしたままです。創跡はまだ隠したいからです。出歩く際は、ファンデーションで白唇部の傷跡の赤い線を隠して、口角の傷跡は今や口紅だけで見えない様です。実は口角の横のV字の傷跡は、術直後からの腫脹(腫れ)で前に出ていますが、術後経過と共に口角は顔面の湾曲に沿った後方へ戻りますから、特に上赤唇縁は見えなくなって来ます。ただし挙上度は保たれています。
4方向で見れば、口角の位置が顔面のカーブに沿っているから後方にあるのが判ります。術後から経過を診て来ても明らかです。それにしても可愛い表情を魅せています。手術でそうしただけでなく、本症例の患者さんは内面的に優しいからです。不随意的に笑顔を呈しています。だからこそ笑顔が似合います。
かといっていつも笑顔を作り続ける訳にはいきません。随意的に表情を作り続ける事は不可能ですし、随意的に表情筋を動かしていると周囲から作り笑いだと判ります。`森川の法則`を紹介したことがありますが、感情が不随意に現れる表情は両側性なのに対して、作り笑い等の随意的表情は非対称性です。もう20年前に父が論文を書きましたが、統計上で手が右利きの人の約70%は顔も右利きだと判っています。例えば右口角が強く挙がる笑顔は作り笑いの表情の可能性が高いと考えられます。皮肉な表情は片側の口角が下がります。財務大臣が典型ですよね!。
もとい、こうして見ると手術で形態を作り表情を随意的に作らないでも可愛い表情を呈している様にすればその内面性もより可愛く過ごせるとのです。画像を見ても随意的な表情ではないのが明らかで、可愛いキャラクターが現れています。何でも接していたい癒される女性です。
当院は、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。