症例は38歳女性。これまでにいくつもの手術を受けています。眼瞼や鼻、他にもいくつかの改善を図って来ました。今年には、私が口周りの手術をしました。ブログにもあります。
今回鼻唇角の角度を優しくする手術をしようという事になりました。鼻唇角下制術です。本名は鼻柱延長術兼鼻唇角鈍角化手術です。実はこの手術の効果は正面からは判り難いのです。斜位や側面像での変化が重視されます。患者さんも好きなタレントさんの斜位の画像を持って来て、この形が欲しいと求めました。
画像は上に記した通り斜位像と側面像を見なくては判りません。下に左斜位像。
よく見て下さい。鼻柱:鼻尖(鼻の頭)の下方から白唇(鼻の下)に架けての、両側の鼻の孔の間が鼻柱です。術後は数㎜下方移動しています。鼻柱がストレートだったのが若干の丸みを呈しています。こうして診ると、患者さんが術前に求めていた画像に従った変化が得られています。そして鼻柱が僅かに下がると、鼻柱から鼻尖に架けて丸みを帯び優しい印象になります。
下に右側面像
明らかに鼻柱と白唇がの角度が変わりました。術前は鋭角(小学校で習う様に90度以下)だったのが、術後は鈍角(90度以上)というかカーブになりました。要するに術前は鼻の下が喰い込んでいたのです。そうだと鼻が下がっている様に見えて、魔法使いのお婆さんの様な意地悪そうな印象を感じさせます。術後の様に鼻柱角が鈍角化すると、優しい印象になります。
若干の腫脹はあります。術直後よりも48時間の方が腫脹が亢進するのはいつものことです。その結果鼻柱を前に押し上げる力が働き、鼻尖が上方移動します。所謂鼻が上向いた状態です。この点は腫脹が消失すると絶対に元に戻ります。
下に2列。上左が術前正面像、上右が術直後正面像。下に近接像。
正面からは鼻唇角が見えないだけでなく、術後早期は腫脹により鼻尖が持ち上げられるため、鼻が上向いた様に見えます。つまり出来上がりではありません。術後1週間を乞うご期待!です。そして鼻柱が僅かに下がると、鼻柱から鼻尖に架けて丸みを帯びこれも優しくなります。
手術法は鼻唇角プロテーシス挿入術です。他にもいくつか考えられますが、形態的効果が得られないか不足する可能性が高いので、現在までプロテーシスを頻用してきました。とはいっても他のところで施行した人は見た事も聴いた事もありません。
本来隆鼻術は、アジア人の低くて幅のある鼻を白人の様に美しい鼻にする為に頻用されました。日本国はアジアで唯一、先進国をキャッチアップしようとしていましたから、白人崇拝の意識(だから戦争をした。)が強く、戦前から隆鼻術は行なわれました。戦後USAに占領されると今度は、若年女性はぶら下がる為に白人の様な顔付きを要しました。隆鼻術の歴史は長いのです。
隆鼻術を行なうに当たっては、白人とアジア人の差異を知らなければなりません。鼻根が低いのは当然高くしたい。鼻スジがダルいのもシャープにしたい。鼻尖(TDP)が上方を向いているなら(ショートノーズ)、下方まで高くしたい。ここまでは誰でも考えます。さて鼻唇角が喰い込んでいる鼻は白人にも居ます。特に南ヨーロッパには多いのです。北ヨーロッパ人はアップノーズが多いのです。どちらが美しいかと言えば、白人の美人女優はアップノーズが流行りましたから、そちらを求めました。
その際には鼻唇角まで必要とします。父は台付きL型プロテーシスを開発しました。他に分離型を使う医師(故古川:D婦人を作製)も居ました。鼻唇角の鈍角化と鼻柱の丸みに注目したからです。私はそれを継承して貯留しています。今回鼻唇角プロテーシスをを求められました。何故私だけが持っているのを知っていたのかを患者さんに聞き及びませんでした。本症例の患者さんは、いろいろな点で美しく仕上がっているのですが、それは美的センスが高いからでしょう。私にとっても彼女にとっても今回の診療行為に及んだ事はラーッキーでした。
鼻唇角鈍角か手術の方法は、増量すればいいのですから、他にも考えられます。鼻柱延長術は鼻中隔軟骨から鼻尖、鼻柱に向けて軟骨を移植して下げるのですが、鼻唇角までは不可能で、喰い込んでしまいます。私は鼻唇角に軟骨移植しようと考えた事もありましたが、耳介軟骨からでは容量が不足するのと、他の部位からだと硬く手しかも採取部位が傷つくから断念しました。やはり鼻柱下制および鼻唇角鈍角化手術にはプロテーシスが最適でしょう。
鼻や口周りの静的&動的形態は、一般人は元より、若い特にビジネスに特化した(C.M.を打っているチェーン店)の医師屋には、形成外科領域にしても美容外科領域にしても、ほとんど理解されていないので、詳しく説明します。
口周りは赤唇を中心に白唇、頤。その上の鼻柱、鼻翼の相対的な位置関係が大事です。
先ず第一に、口唇とは鼻の下の皮膚は白唇で、赤い部は赤唇です。日本の一般人は反知性主義者なので知らないのはまだしも、形成外科を研鑽していない美容整形屋は知る由もありません。形成外科分野では口唇裂の手術を必ず経験しますが、その際各医師銘々が教科書や論文を呼んで勉強しなければ手術はさせてもらえません。白唇,洋語でWhite lipと赤唇,洋語でVermilionを理解しなければ手術法も理解出来ません。コマーシャリズムに毒された一般人が知らないのは仕方がないのです。
鼻柱と白唇の角を鼻唇角というは美容形成外科学上の呼称です。 口唇裂では鼻柱基部が基準点です。裂を生じるのは人中稜ですから、鼻への移行部である鼻柱基部を決めなくては縫い寄せられません。両側の人中基部を結んだ線を側面から見ると鼻唇角なのです。上の画像を見れば判ります。そう言えばこれまでの白唇部短縮術の説明時に人中の説明を詳しく書いています。何しろ人中は人の中心だから対称性の観点からしても重要なのです。形成外科医療の研鑽がものを言います。
鼻唇角の鈍角化はアップノーズの為には必要です。毎回記して来ましたが、アップノーズはショートノーズではありません。鼻尖の位置(TDP:鼻筋の延長線上より鼻尖が低くなるポイント)が上方にあり、高さがないのはアジア人には散見され(要するに鼻ペチャ)これはショートノーズです。隆鼻術後の経年変化でカプセル拘縮して上方移動した際にも同様の変形を来します。アップノーズとは鼻尖が鼻筋の延長戦よりも前に有る、つまり鼻尖がツンッとした形を言います。昔は白人の美人鼻の典型とされました。いや可愛さも伴います。旧い映画のイングリッドバーグマンの台詞ですが「キスする時に鼻がぶつかってゴメンなさい。」な鼻が典型例です。また脱線しました。
鼻唇角鈍角化手術は鼻柱から白唇へ架けてのカーブを美しくする手術ですが、腫脹によって持ち上げられて一度ショートノーズに見えます。しかも本症例はアップノーズにしているので、余計に気になります。でもこの腫脹が解消すれば必ず落ちて行きます。
そして、術後1週間で抜糸しました。その直後の画像です。
右側面と左斜位像から魅せます。側面像での鼻唇角は美しい。これが本当のアップノーズです。そして斜位像がみごとです。鼻柱が湾曲を持って下に丸みを帯びました。これが欲しかったそうです。その形の良さを知っているのはさすが美的センスの高い患者さんです。いや、私が知っているから出来たのです。
正面像と近接画像です。今回は鼻柱から鼻唇角が下がったのが見えます。鼻翼よりも下方に位置しています。所謂矢印鼻になりました。
それにしても白唇短縮術と口角挙上術の傷跡は見えませんね!。影になっているからですが、それだけ鼻が長くなっているから隠れているのですし、白唇がさらに短く見えるのです。
次は術後約1か月です。
白唇部の傷跡は目立たないし、口角の横V字の傷跡は見えません。そして口唇の形態は超セクシーです。それでいて鼻唇角の喰いこみがなくなったのでいやらしくない。これが本当のアップノーズです。鼻が白人の様にツンッとしました。
あまりにも美しいので4方向を提示したくなりました。鼻柱と白唇が作る角度が鼻唇角です。白人の綺麗な鼻は90度以上です。それには鼻尖の高さが無くてはなりません。鼻スジの延長線上よりも前になくてはアップノーズとは言えません。その点で本症例の鼻は理想的です。
そうです。本症例はどんどん美しさを増しています。白人の様な造作に近づいています。鼻唇角の鈍角化は父の時代からの隠しポイントで、私の得意分野です。実は口唇短縮術も父の時代からの命題でしたが、父は赤唇縁を切っていました。べたっとしてセクシー度が落ちます。私は鼻の下の白唇部切除を得意としています。現在本邦で最多の症例を手術しているでしょう。それでは本日もまたこれから、口唇の手術をして来ます。丁寧に!。綺麗に!。デザインにこだわって!いい形態を作り上げます。
術後3か月で完成としました。
唇は皮膚も唇です。白唇,White lipと言います。粘膜部も唇です。赤唇,Vermillionと言います。赤白合わせて口元の表情を魅せます。本症例は美しく、色っぽい。形も綺麗で表情が可愛い。セクシーでもあります。
そして鼻の下は白唇で青子に折れ返りがありますが、白上口唇短縮術の傷跡はその線にあっても見えません。谷線の上にはNostril sillという土手状の膨らみがあります。これがないと鼻の孔の中が見えますから上口唇短縮術は鼻の中を切って土手を切ってはいけないと思います。
ところでNostril sillは鼻翼から内側に繋がっていますが、鼻柱基部の下は土手状はなく鼻柱に直接移行します。だから、鼻唇角の角度が大事なんです。鼻唇角とは横から見た白唇と鼻柱が作る角度です。下の側面像斜位像を診ましょう。
鼻唇角が鋭角(90度以上)で喰いこんでいると、魔女鼻です。鈍角になると鼻尖の高さが綺麗に強調されます。本症例は術前に鼻唇角が丁度90度程度で下が、赤唇がセクシーに裏返っているために鼻唇角が鋭角に見えます。術後3か月で完成した結果白人の様な本当のアップノーズに出来ました。本当のアップノーズとは、鼻唇角が鈍角で、鼻柱基部がが鼻翼基部より下にあり、鼻尖が鼻稜(鼻スジ)の延長線上よりもわずかに前にある鼻です。決して上を向いている鼻を言うのではありません。素人が間違えるだけでなく、ほとんどの不勉強の美容外科医も素人並みの間違いを流布させます。特にチェーン店系の若造はビジネスに特化して美容センスを持ち合わせていませんから、彼らに騙される患者さんが多くて困ります。
苦言は止めて、本症例の出来は綺麗なアップノーズが作り出せ、しかも口元が美しくセクシー。素材がいいからですが、表情も上手。キャラクター的に美的センスが高いと言えます。だからこそこの手術の意味も知っているのでしょう。素敵な患者さんです。
当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
6月から費用の説明も加えなければなりません。鼻唇角プロテーシスは15万円+消費税。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。