顔面骨切り術は、顔面骨格を変える手術です。先天的に顔面骨格の異常を呈する病態は少ないのですが、輪郭は顔面の形態のベースですから、形成外科分野では専門的に研鑽している医師がいます。そして正常範囲でも美容的に骨格改造をして美的に向上する希望は昔からありました。
ただし、骨切り術は大きな手術で、合併症も重篤になり得るし、生体機能を害する可能性さえも皆無ではありません。また特別な設備と器材も必要ですし、医師の体力も要します。だから、形成外科の中の専門家(顎顔面外科医と呼びます。)は数少なく、日本では十人は数えられません。韓国にも多くは居ませんが、設備費用も医師の費用も、まだ流石に本邦の半分以下ですから(一人当たりJDPに比例します。)安く受けられるし、専門家が育って来たので最近韓国で手術を受けて来られる患者さんが増えました。因みに、骨切り術は細かくはない手術なので、コミュニケーションが不備でも結果は得られるし、目や鼻と違って細かい形成外科的な技術を要しませんから、他国で受けても危なくないと言えます。安いし?!。
上に述べた様に、骨切り術は韓国で受ける患者さんが増えたのですが、本邦でも少なからず手術されています。特に両顎を後退させる手術はE-ラインを改善する為に有効です。口が出ていない方が品があり、知性的で進化的です。いつも眼瞼のブログ記事に書いて来た様にアジア人は「吊り目で出っ歯!」と称されます。出っ歯の中で骨ごと歯が出ているなら骨切り手術の適応です。人間は口で啄まない動物ですから、口が出ていない方が人間的なのです。
ところが、両顎を後退させる骨切り手術を受けると鼻の下から口唇が尖っている形から倒れてきます。垂直化して、場合に依っては内反します。尖っていた口唇(白唇〜赤唇)が倒れると相対する人からの正面視では長く見えます。鏡で自視しても判ります。これは当然予想されることですが、骨切り術時に同時に修正する手術は不可能です。でも骨切り術後には口唇(白唇部)短縮術を受けたくなります。
ただし人中を中心に行なう口唇(白唇部)短縮術は、創跡が最重要課題です。その為には形成外科的な、丁寧な真皮縫合を行なうことに尽きます。美容外科チェーン店には形成外科出身の医師は少なく、彼等が手を出した結果、創跡が拡がってその分後戻りします。かといって形成外科出身の医師で美容外科に精通する者もまだ多くは居ません。私は5年来行なって来ましたが、最近では毎日の様に手術しています。半数近くの症例がブログ提示を承諾して頂けます。私の手術結果を見て頂き、創跡の目立たなさと後戻りの皆無が皆さんに浸透した様で、手術希望者が絶えません。それに経過を追って載せているから、術前に計画を立て易いと云われます。 最近は予め予定してから骨切り術、口唇短縮術の順に受ける患者さんが出現します。本ブログにも頻回に載っていますから、計画を立てて来院される患者さんが増えました。今回もその一例ですが、結果は素敵です。
症例は、26歳女性。医療関係者で医学的な理解力が深い。本年4月に来院。両額突だったので、昨年10月韓国でLe-FortⅠ骨切り術で3mm短縮、後退数m。SSRO(下顎骨矢状切り術)で合わせて、頤骨切り術で前突を加え、下顎骨角部V字切除術でエラを小さくした。本年2月には鼻中隔延長術&プロテーシス。鼻骨切り?はよく結果が見えないが受けた模様。口唇はH-A,ヒアルロン酸が入っている。 主訴:両顎骨切り術後、口唇(白+赤)の傾斜が垂直化して長く見える。白唇長(鼻柱基部〜赤唇縁の中央)は17mmと標準値の15㎜よりは長い。顔面縦比は上顔面70㎜:中顔面56㎜:下顔面67㎜と鼻から下が長く、上口唇(赤+白)22㎜:下口唇(赤〜頤)43㎜と黄金分割比の5:8を適要すると上下とも長い。内眼角間33㎜:鼻翼幅38㎜:口唇幅49㎜で黄金分割比の5:8を適要すると口唇を4mm横に拡大可能。
診察すると側面画像で見られる様に上白唇は外反している。白唇部を4mm切除は可能だが、外反は検討する?。口輪筋上切除で折り畳まない?。正面画像で見られる様に人中は幅が狭く明瞭で赤唇縁の弓形も明瞭なので作製する必要は無い。口角は術前に水平なので挙げる必要あり。頬骨隆起方向に5mmは要。 手術当日の診察で確認します。外反しているのでC-カールを作らないつもりだったが、やはりもう少し欲しい。
術直前にはやはり口輪筋を軽く折り畳む事を決めました。口角は頬骨隆起方向なら40度方向で、口角上の白唇皮膚を5×8mmの三角形に切除して引き上げることにした。 術前の正面像と拡大像、両側面と両斜位の4方向像を載せます。
正面像では長い。
赤唇縁は外反しているが白唇の上半分は垂直的。やはり白唇部を外反させたい。 下に術直後の正面画像。
拡大像では創がピッタリ合っているのが判ります。
4方向で、外反していた赤唇と白唇が残りC−カールが強調されました。
今回は手術前と手術直後の比較像から載せました。デザイン図を撮り忘れました。でも読者の皆さんは、上の記載を読めばデザインは判りますよね。次回抜糸時に形態が見えて来ると思います。機能的には通常2〜4週間で回復します。ちゃんと定期的に載せていきますから、お楽しみに!
そして、術後1週間で抜糸しました。本症例は珍しく周りが内出血で黄色くなりました。白唇部(鼻の下)と口角を手術したのに、鼻唇溝(法令線)を越えて頬前が黄色くなりました。アアッー、そうだ!。骨切り術の痕で軟部組織が緩いのか?。Le-FortⅠ型骨切術は上顎歯槽骨を頬骨から外すので、口の中から頬前の軟部組織をよける訳です。その上骨を短縮し後退させているので、相対的に軟部組織が余剰になり(若干収縮します)、緩いので内出血が逃げます。
画像を見たら判る様に鼻翼の付け根の創の横に顕在化して、しかもそれが重力で下法に帯状に流れて行ったのです。
ところが術後1週間にしては腫脹の軽減が早い様です。若しかして医療関係者ですから、自分でなんか付加的な両方を加えたのかも?。それとも体力(生体維持能力=ホメオスタシー)が高いのかも、経済力がある人は栄養値が高く、特にアミノ酸の摂取が多いと膠質浸透圧が高くなり、腫脹の軽減が早いのです。
4方向では口唇が可愛く外反しています。やっぱりこのくらいプラスしてよかったのです。腫脹が引くともっとよく判ります。
術後2週間です。正面像ではもう創跡が目立ちませんが、拡大してみるとギザギザ状です。3層縫合したうち皮膚表面の縫合は連続縫合していますから、螺旋状に糸の跡が残っています。抜糸直後に比べて深さが半分程になりました。次回には創跡の線だけとなるでしょう。
実は想定外のことが起きています。左の鼻孔底の土手,Nostril sillに凹みがあります。右と比べれば違いが判ります。はて?、何が起きたのか?、手術をした身としては思い当たることがありません。考えられる事を二つ。1、真皮縫合が裏から表皮を引っ掛けた?:これなら吸収糸ですから3か月以内に解消します。2、止血の際にバイポーラー電気メスで触った?:もっとも注意している手技ですから起きたらダサい。
これまでの症例で一度も無いです。もしもの際はヒアルロン酸またはPRPで埋めます。 気を取り直して4方向を見ましょう。
可愛い、優しい、品のある口元です。口が出ていないと食欲を感じさせません。人間的で知性的です。実は本当に知的な職業の患者さんです。
術後2週間で客観的に他覚的に腫脹がほぼ見え無い程軽快しています。10人のうち2人目くらいに早いです。術後になんか特別な後療法を施したのかも?。薬剤?。持続的に冷却?。多分精神性の問題でしょう。当初から怖がらないで、手術中も会話を交わしていました。さすが医療関係者です。手術前後に怖がったり痛がったりすると交感神経系が異常に賦活され、血圧上昇し血管収縮し、腫脹の吸収を阻害します。だから精神的に安定していると、腫脹の軽快が早いのです。それが証拠に静脈麻酔を希望する様な怖がりの患者さんは遅いです。ブログ上でも証明されています。
社会的には隠すことなく復帰しているそうです。「鼻の下の傷跡は土手の下の折れ返りにあるので、影になるので気にならない。」そうです。「やっぱりここを切開して良かった。中を切ったら土手が無くなっちゃいますよね?!」ですって。やはり知的で理解力が高く、精神的にも落ち着いているのです。いい患者さんです。 とは言うものの、中期的な術後経過は1か月が大事です。これまでの症例でも明らかな変遷が見られます。こんなに経過が早いのに何が?。その辺は患者さんを診察して訊いてみたいと思います。少なくとも、創跡はより目立たなくなっているでしょう。
そして術後1か月を経ました。
今回の画像はノーメイクです。創跡はまだ見えます。次第に発赤が薄くなって来ました。鼻の位置はほぼ元に復しました。口も閉じます。力を入れれば閉じるのですが、頤形成をしているので下口唇に力が入っても頤筋の[オレンジの皮]が出来ません。*注:オレンジの皮は頤筋が収縮すると梅干しの種みたいにしわが出来ることです。おフランスでは、Peau d’ orangeと比喩してオレンジの皮と訳します。上口唇短縮術を受けると、口輪筋の上半分の収縮力がダメージで弱くなります。すると口を閉じようとしても閉じないので、口輪筋の下半分が収縮力を加える様に働きます。すると同時に頤筋が収縮します。オレンジの皮または梅干しの種になります。ところが頤を前に移動すると自然に下口唇が挙がりますから力を入れなくても良くなりオレンジの皮または梅干しの種が起きません。術直後は軽く収縮していました。術後1か月の現時点では見られません。口は力を入れないでもほぼ閉じています。
さて左の鼻孔底の土手、Nostril sillの厚みはどうなりましたでしょうか?。やはり凹んでいます。まだ原因は判りません。もし真皮縫合なら吸収糸なので約3か月で治るでしょう。裏から電気メスで焼いたのなら、組織が欠損してしまいます。こんなこと始めてです。つまり術後3ヶ月待っても凹んでいたら組織を補います。ヒアルロン酸でも出来ますが、持続性に欠けます。PRPなら、組織を作り出せます。実はご覧の様にゴルゴラインが見られます。若いのに(若いから酷使されるのでしょう。)忙しい仕事なので疲労により窶れてゴルゴラインが出来て来た様です。PRPによる補填が最適です。その際僅かに分ければNostril sillを再建出来ます。そのプランで容認してもらいました。
4方向では見事なE-ラインで口元が語っている様です。知性を見せ付けています。人間は口元が締まっている動物です。でも笑顔は社会で有用です。微笑みを湛えている様に見えるこの口元は、遇う人を魅了するでしょう。
もう一度Nostril sill に付いて説明します。鼻の孔の入り口の顔側の縁は堤(土手状)に膨らんで、鼻翼を廻って入り口はリング上に囲まれています。指を入れて鼻の孔をほじってみれば判りますが、鼻の孔は入り口が細く、中のトンネルの方が太いのです。特に鼻孔の底の堤をNostril sill と称します。これがあるから鼻の孔の中は影になってトンネルの壁と鼻毛は見えないのです。ダーからアー!。白唇短縮術で鼻の下を切除する際にはNostril sillを温存するべきなのです。特に日本人は鼻が低く、また鼻尖が上方にある為に鼻の孔が前を向いている人が多いので、Nostril sillを無くしたら鼻の中が丸見えになります。
これまでにも記載しましたが、この手術は世界的に有名な美容外科医であるオスカーラミレス、Ramirez OMが2003年にThe upper lip lift using the ‘bull’s horn’ approach.として論文発表したのが初出です。もちろんNostril sillは温存します(彼はメキシカンですから、インディオ=非白人も治すのでNostril sillを残します。)。その後の論文を検索したら、変法,modifyedとして、鼻の孔の中に切開線を逃がすデザインが発表されました。確かに露出する創が減りますから、患者さんは飛びつきそうです。韓国でも追随して施行されました。日本のチェーン店系の美容整形屋も真似ました。彼等は勉強しないからNostril sill の単語も知りません。その結果鼻の孔の中が丸見えな症例が多発しました。約3年前までは頻用されていた様で、多くの術後患者さんを診ました。ちょっと下から見ると鼻の孔の中の鼻毛が見えるので笑ってしまいます。
いいですか!創跡は何れかは見えなくなります。だからNostril sill 下の切開線も見えなくなります。ところがNostril sillを切除すると元に戻せません。いつまでもなんか変な感じなのです。そして創は縫合の技次第です。形成外科医出身(とはいっても10年以上の経験)の美容外科医なら細かく真皮縫合出来ます。真皮縫合を密にした時点で隙間が無く出来れば、術後に創跡が拡がりません。ところが残念ながら、形成外科医でこの手術の意味を知る者は少ないのです。彼等はあくまでも形成外科医で(専門的には病気や怪我で置きた変形を治す。)美容学を学んでいないからです。患者さんに聴くと日本中で10人くらいしか綺麗に仕上げる医師はいないそうです。私もうちのその一人に入っているそうです。お褒めに預かりまして・・。 ところが本症例では左側のNostril sillを損ねてしましました。初めてです。真皮縫合の引っ掛かりなら治るでしょう。
そうであることを祈っています。何れにしても術後3ヶ月には手を打ちます。
次回を御待ちください。 なんだか偉そうに書いたり、落ち込んで謝ったりの変なブログになりました。そして、術後3か月がやって参りました。
懸案となっていました。よく見ると、左のNostril sill、鼻孔の底の土手に陥凹があります。かなり目立たないのですが、まだ見えます。原因が真皮縫合なら、もう吸収されている時期です。でも一度引っ掛けた真皮と表皮は組織の回復が遅いのかも知れません。なら治るでしょうか?。いやだからこそそれならPRPで細胞を賦活して回復を図るの策です。他の部位を含めてPRPで対処して行こうと考えました。
ところが創跡の発赤がまだ目立つ症例です。よく見れば判りますが、創跡は拡がっていませんが、創跡の線の上下数㎜が赤いです。若しかして真皮縫合糸が溶解して反応しているのかも知れません。本症例は術後中早期の経過が早く、機能的にも回復が早かったし、周囲の評判もよかった良いですが、想定外の事が起こりましたし、創跡もまだ消えません。もう一度診せて頂きたいのですが忙しい人ですから、待っていまあーす!。
今回術後3ヶ月で卒業にしようと考えてブログを更新しないで新しいログを作りました。でも逆に今後の経過も載せられるなら皆さんの参考にもなるでしょう。実はキャラクターも造作も可愛いので何度でもお逢いしていたい人です。いつもの決め文句:次の治療の機会を「お楽しみに!」しているのはむしろこちら側です。
当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。 6月から費用の説明も加えなければなりません。
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