フェイスリフト Face Liftの歴史は長い様で短く、シワ取り術 Rhytidectomyと称していた頃まで遡っっても戦後です。割と大きな外科的手術ですから抗菌剤が発明されてからですし、第二次世界大戦時にはそれどころではなかったのです。1950年代にはUSAのCosmetic surgery:日本語に訳すと美容外科医が論文に書いています。日本人も1962年には論文を書いています。前に目頭切開の説明時に載せた眼形成外科医の内田先生です。その後1974年にSMASの概念が開発されて、欧米ではFace Lift手術が美容外科手術の中心として美容形成外科医 Aesthetic Plastic surgeryがこぞって施行しました。レーガン大統領が受けたのは有名な話です。
日本では美容整形医と称する医師は市中の開業医がほとんどでしたから、大きな手術であリ、解剖学的に深い形成外科的知識を要するFace Lift手術は、少ない施設でしか行われていませんでした。その中で父は、半分の時間で出来る片側ずつのシワ取り手術を、銀座のビル内のクリニックで行っていました。片側ずつなら可能だと吹聴していました。昭和53年(1978年)に日本で美容外科が標榜科目に法制化されると(つまりその後は美容整形と称するのは違法化)、広告宣伝するチェーン店が勃興して、その分施設と医療スタッフを充実させて、フェイスリフト手術もどきをし始めました。もどきというのは彼らは形成外科の素養が無いし、勉強もしていないのでSMASを触れませんし、逆にSMASを触って、その深部の顔面神経を傷める医師が続出したからです。
私は医師になって6年目(今から26年前:1993年)に始めてSMAS Face Lift を手術しました。北里大学形成外科は、昭和46年に開設されましたが、初代教授はUSA帰りで、USAでは形成再建外科,Plastic and Reconstructive surgeryと美容形成外科,Aesthetic Plastic surgeryは同一科目ですから、北里大学形成外科・美容外科では開設当初から美容外科診療を行なっていました。現在でも積極的に美容外科手術を行なっている大学病院は少なく、美容外科医療をバカにする教授さえも居ます。原因は美容整形屋が医学的に低劣なのに金儲けに走ったからです。もちろん父もその一人で、だから30年前(私が形成外科医になる前)には鼻つまみ者でした。ただし私はそのお陰(お金)で育てられたので天に唾することになります。お彼岸に墓参りして謝ってきました。基、その結果幸いに、私は入局直後に講師(学生時に私を誘ったFy先生)のフェイスリフト手術に立ち会う事が出来ました。さすがに大学では、しばらくFace Lift手術をさせてもらえませんでしたが、銀座では手伝っていました。でもそれは父の行なうナンチャってFace Liftです。6年目には講師が替わり、Ot先生の教え子の後輩に手術を手伝ってもらい、銀座美容外科医院で初めてSMAS法でフェイスリフト手術しました。その後は銀座美容外科では私がFace Lift手術を担当しました。
ただしその後10年目に、今度は北里研究所病院でUt先生に教えを受けました。彼はやはりUSA帰りで、当時USAで売れっ子だった美容外科医に師事してきて、Ut先生はリフト手術に命を懸けていました。彼云く「僕は黒子やタッツウ−の位置を計測して経年的に後戻りの程度を測ったんだ。SMAS法は1年後に2年分戻る。皮膚だけ切って縫ったら1年後には元通り。長持ちするのはリガメント法しか無い。次がエクスパンドリフトだ。」
その後Ut先生はリガメント法を身を焦がして(かなりの体力)続けています。でもものすごく高額(最低500万円)で、手術時間も通常の3倍以上(最低8時間掛かります。さすがに高年齢化したUt先生は月に数例くらいしか出来ないらしいです。そして私はこの10年前から、切開リフト手術の際にはエクスパンドリフトをお奨めしてきました。皮下を広範囲剥離して、部位に依ってはSMASを縫縮します。ただし創から遠いポケット部分の出血を止血するのは手間と時間が掛かります。ですから、今回の症例の様に部位ごとに分けて丁寧に、一つ一つを手術していく様にお奨めしています。面倒でも効果が絶大で、持続性も高い手術です。考えてみたら、父が片側ずつフェイスリフトしていたのと同じ策です。やはり父子なんですね。ちなみに患者さんとは診察中にいつも色々な美容医療の話題を交わし、Ut先生の面白い話をしたら、黒子を測ってくれました。こめかみリフトの回に載っています。
症例は41歳女性。これまで幾つかの手術を受けてきました。眼瞼はよくできているます。口周りもスッキリしました。Jowl lift を広範囲剥離で見事に挙げたのが見て取れます。ブログにも載せました。そして前回こめかみリフトを同様に広範囲剥離で行おうと提案されました。実はブログに何例か載っています。5年前に他院で頬前(ゴルゴライン部)に脂肪注入を受けていて、針で剥離したそうです。ハニカム化した訳です。たるみ感が見えて効果が足りないし、Jowl lift で下顔面がすっきりしたからバランスをとりたい輪郭を呈しています。3ヶ月前にこめかみリフトを広範囲剥離で行い、こちらも見事に挙がりました。
今回ネックリフトをすることになりました。上:こめかみリフト広範囲剥離。中:Jowl lift 切開広範囲剥離。下:ネック(下顎下、頤下)リフト。上中下に分けてそれぞれを切開リフトで、広範囲に皮下剥離しました。それぞれはブログで画像を見てください。
まずは今回の術前、広範囲Jowl Liftと広範囲側頭Liftの術後です。
正面像では下顎縁より下は隠れますが、エラ(下顎角部:人間は魚ではないから鰓はない。)の下にたるみが見えます。
下に両側側面と両側斜位像。デザインも。
上に右側面像とデザイン画。下顎縁の下にたるみが見えます。デザインはその範囲を剥離するために点で囲みます。
両側斜位像。二重顎というほどではなくても、下顎縁の下に膨らみがあります。
左側面像とデザイン画。右と同様にたるみがみられます。デザイン上の耳の後ろの切開線は耳垂(耳たぶ)の先端から折れ返りを上がっていって、耳前の耳珠(トラガス)の真後ろから後ろに子を描いて行き、生え際へ降りてきます。
下面像と顎下のデザイン画。ご覧のように頤下を切開します。ここから広頚筋の引き寄せ(またはZ−形成術)を加えます。点で囲んだ剥離範囲は下顎縁の下方全体です。
説明不足で判りにかったでしょう。本症例の患者さんは幼少時に熱傷を負い、特に警部に瘢痕が散在しています。部分的に皮膚が拘縮している為に、他院の形成外科で修正術を受けてきました。線状またはZ型の瘢痕はその跡、面の瘢痕は拘縮が軽度なので手術していない部です。実は頤の下に面上の瘢痕があります。剥離が難しいかもしれないと危惧していましたが、幸い深くなかったのでできました。
切除した皮膚は最大15㎜幅です。二重あごの頤下から削除した皮下脂肪は量を測りませんでした。
下に術直後。
下顎角部のたるみは消失しました。下に術直後の両側面像を両斜位像。
どこから見ても下顎縁の下に影ができました。側面で見ても、頤下の二重あごもTurky neck,七面鳥のようなヒダも見られません。ただし頤下の縫合創は盛り上げた分見えます。
下面像では頤下の縫合創が見えますが、正面からでは見えません。凹んでいるのは皮膚が弛まないようにアンカーリング,Anchoringした点です。頤から鎖骨へかけてはC-カーブとなっていますが、これをL-カーブにするためです。頤下で皮膚を取りすぎると、Bow string,弓の弦状に直線化してしまうので、引き上げました。
いよいよ術後1週間で抜糸しました。
本症例の患者さんはいつもなぜかダウンタイムが短く、腫張は早く軽快し、内出血も軽度です。ところが今回は疼痛が強く、まだ続くようです。広頚筋を乳様突起状のSCM muscleに吊り上げた際筋膜状の神経をくくったのかもしれません。軽快を待ちましょう。
下には両側面像と両斜位像。
下顎縁ラインの下に影ができてスッキリしました。ちなみにもう一つ、左大耳介神経領域である耳介下半分が低知覚です。引っ張ったかくくったかですが、月単位で治ります。困ることはありますでしょうか?。ピアスを装用し難かったらごめんなさい。
術後1ヶ月で経過観察として来院されました。
あと戻りはゼロに等しいです。正面からは下顎下の効果は判りません。問題の神経症状ですが、異常知覚=ピリピリ感となりました。これは回復の証拠です。
両側側面像で診ると、Anchoring部の糸の跡は消えましたが、頤尖から鎖骨へ架けてのC字のカーブが出来上がりました。このカーブは曲線ですから、直線距離とすると長い訳で、弛緩すると直線化して七面鳥の首になります。白人では頤が後退していないのでTurkey neck は加齢顔貌の定番です。本症例も頤があるから目立ったのですし、傷跡も影響しています。同じ意味で弓の弦, Bow stringとも言います。途中のふくらみは真皮縫合した傷跡です。真皮縫合が吸収されれば平坦化します。
次回さらに1ヶ月後の拝見したいと思います。お楽しみに!
当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。ネックリフトは35万円+消費税です。リフト手術は顔面全体を載せますから、ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として40%オフとなります。