鼻唇溝プロテーシスと鼻唇角プロテーシスは、本来私と父が考案したものです。いや本当、は父が誰かから盗んだのかも知れません。何しろ父は、昭和40年代に、鼻のシリコンプロテーシスをしてみようと目論んだ際に、懇意にしていたホステスを、戦前から隆鼻術をしていた病院(もちろん十仁です.)で受けてもらい、その人が戻ってきたら直ちに抜いて、プロテーシスの材質やデザインや挿入部を見せてもらってから、自分でも隆鼻術を開始しました。その後、父は隆鼻術の名人と称されることになったのは有名です。大多数の症例に対して、台付きL型プロテーシスで本当のアップノーズ(白人の美人の鼻)を造っていました。
ちなみに鼻唇角プロテーシスは、台付きL型プロテーシスの台だけを流用したものです。皮膚・皮下組織の余裕がない症例では、台付きL型が難しい場合があり、その際I型プロテーシスまたはショートL型に台の代わりとして、鼻唇角プロテーシスを挿入したのですが、実はそれは有名なD夫人の初療医が、分離型として頻用していたのをパクったのです。その後他院でIやShort Lを入れた症例にも鼻唇角プロテーシスを追加してあげたり、鼻唇角プロテーシス単独を頻用しました。
さて鼻唇溝プロテーシスは、法令線の充填の歴史を長く物語れます。書き出すときりがないので割愛しますが、昔から加齢顔貌に対して治したい部位の最多でした。昭和30年台からシリコン注入が為され、悲惨な結果を経ました。その後も注入が多用されました。コラーゲン、ヒアルロン酸と安全性が確かめられましたが、持続性はありません。その後またぞろ持続性を求めて、吸収されないものを加えた製剤が横行しましたが、やはり一部が線維化しブツブツになりました。固体も使われましたが、今度は帯状に被包化されて見え見えでした。鼻唇溝には上方の三角形の陥没に、梨状口の外側の”骨の上”にプロテーシスを置けば、見えることもなく、ゴツゴツにもならず、法令”線”の谷も押し出されて浅くなるのです。このことは、症例経験が多数の私だけが知っていることです。
上記のごとく、鼻唇角プロテーシスと鼻唇溝プロテーシスは、私と父が考案したのですが、シリコンプロテーシスに対する忌避感から、一時は廃れていました。最近韓国の美容外科に盗まれてから、再流行しました。韓国は美容医療に対する忌避観念がないために宣伝効果が高いからです。最も韓国は、昔から盗作を得意としてきました。再流行させてくれたので感謝するべきかもしれません。そう考えてみれば、日本国の文化も明治維新以来ずっと真似っこでした。工業も電子も軍事さえもです。もちろん日本の美容医療もUSAの真似っ子から始められました。日韓お互い様ですね。
症例は57歳女性。1年以上前から私に罹ってきました。やや遠方から定期的に罹る人で、ありがたいことです。画像を見れば判る様に、口周りが主体ですが、複数回手術部もあります。
今回ブログ視て下さり、私が父と開発した手術を受けたいと仰る。プロテーシス挿入術の適応は、外から見た形態で判断するしかないが、どちらも加齢で陥没する部位なので、適応があります。でも今回難しい症例でした。何故かとその経過は、画像を提示しながら説明します。
各方向の術前と術直後から診ましょう。
上左図と上右図の違いは明確です。鼻唇角(鼻柱基部)と鼻唇溝(法令線)の上三角が増大しています。ところでアレっと思われるでしょう?左の鼻翼の横に創があります。今回特殊なケースです。画像で見て取れる様に、上白唇短縮術後および鼻翼縮小術後なので、手術時にトラブルが起きたからです。下の近接画像を見ながら説明します。
上右図で、右鼻翼の付け根を切開縫合したのが判ります。その前に鼻唇角プロテーシスの画像。
上図に鼻唇角プロテーシス。左は前から見た図。右は下から見た図。ほぼ円錐型で、幅は6㎜。
上左図の下面像に対して、上右図の様に鼻唇角にプロテーシスを置いてみました。皮下に入るのでこの通りに増量するわけではありませんが、結果を診てください。
さて問題の鼻唇溝プロテーシスです。
上左図は頤プロテーシスの横長の小さいもの。もう割を入れてしまいました。これを細かく切り足して、上右図の様に作ります、厚さは3㎜です。
鼻唇溝プロテーシスは皮膚上の載せた図はありません。合併症を起こしそうだったからです。ここからが特別な症例の説明です。上の様にプロテーシスを作成した後に、左鼻翼の横に傷跡が増えています。
何故難しかったかと言いますと、解剖学的構造が変位していたからです。私が上白唇短縮術と鼻翼縮小術内外法を施行しました。その結果鼻翼が内側に変位し、鼻唇溝も、外側の組織も内側に変位していた可能性があります。もったいぶった説明ですが、結果出血が起きたのです。
鼻唇溝プロテーシスの挿入手術は、鼻翼の内側を縦に数㎜切開して、梨状口(骸骨で鼻の孔の空洞が洋”梨”型)の外側の骨の前に達して(通り道)、そこから骨の前面に沿って剥離していき、適切な大きさの、プロテーシスの面積に合ったポケットを造ります。通り道は狭くても無理矢理突っ込めばもう出て来ない訳で、だから違った部位に動かないので、元々凹んだ鼻唇溝に埋まるのです。韓国では口腔内から入れるのですが、下に通り道があるので重力で落ちるケースがあります。私は診た事あります。八重歯みたいになってました。
顔面の頭蓋骨より外側(中は脳)には、両側に二本の太い(とは言っても外径約3㎜)動静脈があり、そこから何本も枝分かれしています。側頭動静脈と顔面動静脈です。顔面動静脈はエラの下から口角の横を通って、鼻唇溝の最低1㎝外側を通って目頭に向かいます。ここが大事で、鼻唇溝プロテーシスの挿入時には顔面動脈を触らない筈なのです。因みに私は形成外科のベテラン医で、いつも言う様に”糸切り3年、真皮縫合6年、皮弁形成8年”のトレーニングを受けました。鼻唇溝皮弁形成術を何例も手術しましたが、その際この目で眼角動静脈(顔面動静脈は口角の上から内眼角へ向うので名前が変わり、眼角動静脈と呼ばれます.)を視認しています。
さて本症例では、鼻翼縮小術と上白唇短縮術を私が施行した事は頭に入っていたのですが、実際にどの程度、解剖学的構造がシフトしているかは、開けてみないと判らなかったのです。鼻翼から梨状口縁の骨膜の前に通り道を造り、骨の前を剥離していき、5㎜程度外に剪刀を進めた瞬間に、出血が始まり、脈を打っていました。動脈からの出血です。触ると、硬さからして太い顔面動脈ではなく、丁度そこで枝分かれする鼻翼への動脈が骨にへばりついていたのでしょう。
通常のウージング,woozing出血に対しては、バイポーラー,bipolar電気メスで摘んで止められますが、ある程度太い動脈だと無理です。しかも創内への侵入道は狭いので止められませんでした。十数分頑張って閃きました。「前に切開した鼻翼の付け根の傷跡の線を切開すれば、直視下に動脈を見出して摘んで結紮出来る!。」患者さんにも承諾頂いて、速やかに出血を止められました。
この様に難渋し、創をもう一度造りましたが、逆にポケットは直視下に確認し、挿入は外からしました。適切な位置に入ったのを視認しました。
上列に4方向で術前。
上列に術直後の4方向。さすがに出血が多いと腫れます。左鼻翼の付け根に創が有ります。
こうして術後1週間は再出血しないかと、私はビクビクしていました。下列に術後1週間の抜糸後の画像群。私、診察室に入られる瞬間はドキドキしていました。
意外と腫脹の軽快が早かったし、内出血はなく、ほっとしました。患者さんに「出血すると腫れますよね?。48時間までは亢進します。」と問うと「エエー、もちろん次の日なんかすごかったです。」とそんなに気にしていません。更に私「創は前と同じですからお許しを!。それにしても軽快が早いですね。どうしてでしょう?。」と問うも患者さん「いつも治りが早いのよ!。先生が上手だから。」私誉められているのか怒られているのか混乱して「いやア〜、○○さんの身体能力が高いのです。からだが丈夫なんです。本当ですよ個体差は結構大きいのです。」と誉めているのか判らない説明に終始しました。実は私は動揺していたのでしょう。
術後1週間で4方向で診ると、見事に鼻唇溝が埋まって、鼻唇角が前に出て、求めた効果が得られています。
今回術後永らくまでブログ提示を見送ってきました。やはり経過が安定してからにしようと思ったのです。また記載内容が危なっかしいので、何度も書きなおしました。術後1ヶ月近く経ちますが、プロテーシスの位置は適切で、結果は良好ですから遂にブログ公開致します。
術後1ヶ月で診ました。
傷跡は元どおり前に上白唇短縮術の際と同じです。
術後3ヶ月で完成を診ましょう。
よく診ると、表情時にプロテーシスが浮いて見える感じです。でも患者さんは気にしていません。
鼻唇溝の上三角が埋まると、法令線と称される線も浅くなります。口元がスッキリしてお悦びでした。次の話題が持ち上がりました。その際もお楽しみに!。
当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
6月から費用の説明も加えなければなりません。鼻唇角プロテーシス挿入術は15万円+消費税です。鼻唇溝プロテーシス挿入術は両側で28万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として顔面全体を使う場合20%オフとなります。ただし当初は載せませんでした。