2022 . 2 . 8

同じアジア人でも外鼻の形態は多様です。中国北方出身者は特徴的ですが、いつもの私の手術法をモディファイしました。

現生人類はホモサピエンスという種の生物です。ただし最近ネアンデルタール人が混じっていることも判明しましたが・・・それはあまり関係無いのでまたの機会に。ゲノム,Genomとは、遺伝子の中でも生物の基本的構造と機能を決定する遺伝子です。ホモサピエンスなら同一の物を持っています。でも遺伝子に変異は生じます。だから個体差があるのです。

約100年前からのグローバル世界より以前は、地域で変異が貯蔵されていましたから、人種差は明白でした。今でも純粋な白人とアフリカ系とアジア人は、遺伝子の発現型に大きな差があり、形態と機能に多様な差があります。もちろん肌の色は明白に違いますし、例えば一重瞼はアジア系だけです。他にもアジア系は白人に比べて鼻の高さの平均値が低いし、アフリカ系はさらに低いです。これらは遺伝子変異が決定しています。学問的に厳然と差があります。

さらに個人差も遺伝子が影響しています。親子間は半分ずつ遺伝子を継いでいて、環境要因も半分程度関与します。逆に一部の環境因子は地域で蓄積するので、似た者同志になります。遺伝子も地域で交配しますから似ます。ここで大まかに分けると、アジア人の中でも北と南では差があります。先ず東南アジア人と東アジア人は顔立ちが違いますよね。そして東アジアの中でも、モンゴル方面や満州方面は中国とは違います。朝鮮と日本は両方が混じっています。人類がアジアに移動して来た際に、肌の色が黄色くなりました。アジア人です。その中で2万年前頃に北方に移動した人類が更に変異しました。当時は最終氷河期で、モンゴルからシベリア付近は寒冷地でした。そこに住む人の中で突然変異で適応したものが生き残り、継代していきました。主な変異として、吹雪でも生きられる一重瞼と蒙古襞や、腋の汗が少ない非腋臭症(わきがのアポクリン腺が少ない)が突然変異から発生しました。逆に冷たい空気を温める為に鼻腔は拡がり鼻は高くなりました。

本題です。鼻根が低いのは日本では所謂縄文系人です。鼻根が低く、眉間が高い彫りのある濃い顔です。二重瞼も濃い顔立ちの一理由です。でもどうやら、中国では北方系の方が鼻が低いそうです。患者さんも言っていました。中華人民共和国は国民をアッチコッチへ移動させて、ごちゃ混ぜにしましたから、遺伝子の地方性は希薄になっているそうですが、鼻は特徴的だそうです。

本症例の外鼻は、その様な意味で同じアジア人でも日本人の標準と違う形態的特徴です。鼻根の一番低い(後ろ)点が下方にあり、鼻骨尖の突(鉤鼻)は軽度で、鼻尖は鼻綾線の延長線上にあるが、鼻尖の位置は鼻翼に比べて上方で、両側鼻翼基部と鼻柱基部が水平線上に並んでいる所謂あぐら鼻です。上記の特徴を兼ね備えている外鼻は日本ではあまり見かけません。

ですから、あくまでも見た目ですけれど、いくつかの面で手術法を通常と変える様に頭の中を巡らせました。モディファイとは変法という意味です。美容形成外科的手術は術前の形態が万人違う訳で(だから治したいのですが・・)、実は言ってみれば前例がモディファイなのですが、元の形があまりにも外れている(正規分布でSD2以上)だとこちらもイメージが湧きにくいので、頭を悩ませます。じっくり考えて良い結果を得たいと思いました。術後経過中患者さんはお喜びです。

症例は23歳女性。昨年末に来院。中国出身者で日本の大学院への留学生。訊くと北方民族の血が濃いそうで、鼻が低い。細かく診ると鼻根から鼻背が低く、鼻骨が開いている(屋根がなだらか)が、先端は尖っている。プロテーシスの適応がある。最大3㎜の厚さが必要。鼻根よりも1㎝上から鼻尖の直上まで鼻翼39:鼻尖>20㎜で鼻翼を寄せると膨らんで余計に大きくなる。埋没と切除3㎜は可能。鼻尖の鼻翼軟骨が別れている二分鼻尖。寄せて耳介軟骨2枚。

年末にもう一度確認。鼻尖とI型プロテーシスは同時に可能。鼻翼を同時にすると鼻がバラバラになるし時間的にも別の日程を示唆した。

本年に手術を予定し、直前に確認。内眼角間より1㎝上までが適切で、長さ4.5㎜のプロテーシスを用意した。

画像は各方向を術前から見ていきましょう。

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正面像では両側鼻翼基部と鼻柱基部が水平です。鼻尖は丸く大きい団子鼻です。下方からでは鼻尖と鼻翼の区別がつかない本当に団子です。

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側面と斜位で鼻綾線の延長線上に鼻尖があります。鼻根とは鼻の一番後ろで低い点。これが内眼角間よりも下にあると野暮ったいのです。

IMG_7920デザインです。鼻根の位置を1㎝上に設定します。鼻尖には移植軟骨の位置が皮膚上に投影して書いています。一辺8㎜のダイヤモンド型です。鼻柱に切開線が見えます。

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13×8㎜の軟骨を細工して、一辺8㎜のダイヤモンド型と剣状の2枚に切り分けて、積み重ねて糸を通して合体しました。側面から見て厚さは合わせて2㎜です。

IMG_7924IMG_7927鼻尖の上に載せます。側面で診ると鼻尖の方が高いので

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シリコンプロテーシスで鼻綾を高くします。厚さ3㎜にしました。

IMG_7932IMG_7934鼻背に乗せました。

IMG_7936IMG_7935プロテーシスと軟骨を乗せました。両方の高さが合っています。

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シリコンプロテーシスを鼻骨上(骨膜下)から上外側軟骨上に挿入して、上端は糸をかけて皮膚へ出して固定します。次に両側の鼻翼軟骨を寄せて縫合します。土台も兼ねます。鼻尖に元々ある鼻翼軟骨上(皮下脂肪下)に耳介軟骨を挿入して鼻翼軟骨に縫合しました。

形を見て宜しいので、創は縫合しました。下面像で、鼻柱に傷がありますが、軟骨移植時には確実に中心に固定するためにオープン法が適切で必要なことです。

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4方向で診ると鼻背が真っ直ぐになり、鼻根が上方移動しています。鼻尖がツンっと高く下方移動しました。眉間に出した糸は結んでありますが、血液で赤黒く写っています。

IMG_7944左耳介の軟骨採取部の前面に綿を詰めて、後面と糸で繋いで血腫を予防します。1週間付けっ放しでいて下さい。

術後は漢方薬(柴苓湯)で腫脹を軽減してくださいました。日本ではあまり効果に疑念を持っている人が多いのですが、中国人は一般的に使われています。効いたと仰っていました。

術後1週間で抜糸しました。

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テープを貼ってから撮りましたから判りにくいですが、鼻尖の形はテープで囲んだ中に移植軟骨があります。鼻背の両側には、シリコン膜を貼って皮膚上から圧迫固定して左右に動かない様にしています。下面蔵では見事に鼻尖が鼻翼と区別出来ます。

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4方向では、シリコン膜は両サイドなので鼻背が綺麗に高くなったのが判ります。鼻尖の高さも適切です。

この後通訳の人が他の患者さんを連れてきた際に、「患者さんが大満足と言っていました。」と伝えて下さいました。良かったです。では次回に、鼻翼の縮小術と挙上術の時期と方法の検討も始めましょう。

当院では厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログに加筆しています。もちろん画像操作はありません。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の説明も加えなければなりません。今回の手術は鼻尖軟骨移植は2枚で28万円、3枚で35万円+消費税です。ブログ提示の契約を頂いたら出演料として20%オフとなります。