人中とは、読んで字の如く、人の真ん中です。と言っても顔の中心で、口と鼻を結ぶ溝と2本の稜線です。ですから、人中短縮術という手術はあり得ません。人中だけを切除して短縮したら、富士山型の赤唇縁になります。まともな美容形成外科はしませんが、美容整形屋は学術的素養を持たないでビジネスに注心しているから、富士山型の唇をよく見かけます。
さらに言うと、鼻の下は唇です。赤い唇を赤唇、その上の皮膚の肌色の部分は白唇です。日本人だけが知らない言葉です。何故その点が大事かというと、赤唇の形態は白唇の形態に依存しているからで、対称性や歯牙の咬合面との位置関係も白唇が決定するからです。だって上赤唇は上白唇に吊られている訳ですから。もう一度書きます。鼻の下切除術は人中短縮術ではなく、人中を中心とした上白唇短縮術と称するべきです。そして上白唇を短縮すると、上赤唇は裏返って厚くなります。
次いで口角挙上術は唇の手術ですが、吊り上げる相手は口角の上の白唇です。ただし、鼻唇溝(ほうれい線とは人相学用語です)を超えられません。ですから量に制限があります。口角挙上術は口角部の上下の赤唇縁を横V字に切開して口角部の赤唇を遊離させて、口角の上の白唇の皮膚を三角形に切除した隙間に、口輪筋ごと引き上げて縫合します。ですからこれも、白唇と赤唇の手術です。
白唇短縮術は、両側鼻翼基部(これも形成外科用語で鼻翼の最下点のこと)間を全て同じ幅で切除するデザインを原則的に利用します。富士山型を予防するためです。傷跡が広がって後戻りしない様に、経験上5㎜以下の切除を推奨しています。ですから、それ以上の短縮を希望する場合は2回に分けて短縮します。口角挙上術は原則的に上白唇短縮術に合併して行うので、挙上位置も短縮量に匹敵します。た〜だ!、口角挙上術は後戻りが起きます。特に横径は!。挙上効果も重力で後戻りします。ですから2度目の口角挙上術を受ける症例が増えました。1回目の手術でダウンタイムの程度を知り、マスクで隠す日時を予定立てて、手術に臨む時期なのでしょう。複数回の白唇短縮術後に口角挙上術の2回目を希望する方には喜んでお答えしてきました。
症例は43歳女性。ご覧の様に、人中だけでない上白唇短縮術を施行した患者さんです。それも2回に分けて、合わせて4+3=7㎜切除しました。寄せていません。その間実は、口角挙上術も左右差を付けて垂直から30度倒した方向に4〜5㎜のデザインで施行しました。昨秋に2回目の白唇短縮術を施行して3ヶ月後に経過観察し、私が「完成!。」と宣言するや否や患者さんは「口の横幅が小さいので拡大したい。」と仰いました。
早速私は測って、口唇横径45㎜でした。まだ小さいのです。前回の術前の計測値では内眼角間29㎜:鼻翼幅33㎜:口唇横径45㎜で、60度斜め上に5㎜移動したので、三角関数の計算上5÷√3=約3㎜と横径はあまり大きくしていません。しかも横方向は口輪筋の作用で窄められますから後戻りを生じたのでしょう。上下方向はあまり後戻りしていません。結果論ですが、上白唇短縮を追加したので口角が相対的に下がりました。口角挙上術の2回目を希望されました。それにやはり左右の口角の高さに差があるので、私はその時いきなりiPhoneを取り出して、計算アプリを開いてiPhoneを横に倒して関数ソフトにして、三角関数で計算して、45度方向に引き上げるので右6㎜、左5㎜と計画しました。
患者さんは遠方なので、本年に入って手術としました。予めデザインの計画を立てていますからできることです。
画像は各方向を経時的に観ましょう。
上左図は術前。これまでの上白唇短縮術と口角挙上術の傷跡は目立たないです。そんなに口角は下がっていないですが、前よりは下がったとの事。上右図はデザイン。計画通りに差を付けました。
上左図は術直後。横径は拡大しています。高さは対称的になりました。上右図は術後1週間の抜糸後。まだ糸の跡がプリーツになっています。いつかは消えます。
近接画像でもこれまでの傷跡はよく判りません。デザインの差は㎜単位です。
近接画像で術直後は血液が付着して目立つのですが、抜糸の字基には腫脹も引いて来ています。
両側面と両斜位像では、よく見ると左右差が判ります。
術直後は対称的ですが、腫脹でブックりしますし、口吻も突になります。
術後1週間の抜糸後にはまだ疼痛で平行時に力が入っています。
次回術後1か月の画像は蔓延防止時で来院時期が不定となりそうですが、更に良い状態をお見せ出来るでしょう。お楽しみに!。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら20%オフとなりますが、今回は同じ手術の複数回目なので、更にサービスしました。