外科系の医師は複数回手術をポリサージェリー,Poly surgery と言います。いろいろな部位を次々にする場合。一回目手術で上手く行かなかったから、直ぐ二回目をして治そうとする場合。更に上手く行かなくてもう一回と、どつぼに嵌る事もあり得ます。
いくつかのデメリットがあります。先ず創跡の瘢痕が成熟していない3か月以内の手術は、切りにくいし、創傷治癒過程も不良の可能性があります。ですから二回目の手術は必要性に依ります。麻酔は、局麻なら数時間で回復しますが、全身麻酔は回復に数日を要します。内臓への影響です。もちろん費用や手術スケジュールの負担も重なります。何れにしてもポリサージェリーは医療資源を消費するので、患者さんの利益とリスクのバランスに依存します。
そう考てみれば、年単位(4半期=1/4年=3か月以上)の複数回の手術は、ポリサージェリーとは言え、医学的にはリスクは少ないかも知れません。そして美容医療の分野では、むしろ顔面の形態,見栄えは全体像としてのバランスが求められますから、一定の方向性に向けて、複数部位の手術を示唆する事も多くあります。時には、年月に応じて美容的目標のコンセプトが変わる人もしますし、経年変化で複数回の手術をして、変貌を取り戻す様に求められる事もあります。予め後戻りを予想して、複数回の手術を示唆する事もあります。
さすがに私は、口周りの手術を3か月以内に繰り返した事はありません。ましてや口周りの手術は1年以上。今回は3年以上のインターバルです。また他の部位でも年単位は明けています。ただし眼瞼では切開法でも上手く開かない際に、二回目は切らないで、早い時期に補助した事はありました。また例えば、リフト系の切開手術を5年単位で繰り返す事は、巷の美容外科医は面倒がって避ける傾向にありますが、毎回同じ医師、私なら可能です。実際に亡くなるまでに8回フェイスリフトをした患者さんが居ました。
ただし切る手術は、何年経ても正常部位と違う性質を伴います。瘢痕(創跡)は見た目には目立たなくても、無くなりはしませんから、同じ切開線の手術では精密を要します。もし二本線になったらヘタクソですから。私は美容形成外科医のなかでも切開手術の機会が多い方です。何故なら、私は形成外科と美容外科を修練してきましたから縫合が丁寧で、創跡が目立たないと評判だからです。ですから同部位に複数回の切開手術を施行する機会も多いのです。
主に、眉下切開と眼瞼形成術が経年変化への対応。フェイスリフト系は同部位は数年以上のインターバルで、また部位を分けて複数回の手術も進めます。上白唇短縮術では、後戻りがゼロでも、経年変化と、欲張りで複数回手術が増えてきました。口角は後戻りがあるので、二回以降を施行した患者さんが居ますが、創跡は赤唇縁なので変わりません。どちらも医学的に美容的に、出来る範囲の複数回の手術をしてきました。
この二年間以上前から、マスク装用で口周りの手術が増えています。私は既に5年以上の経験がありますから、二回目の手術のチャンスでもあります。多くの患者さんは一回目が良かったので、二回目を安心して希望します。口周りの症例のブログ掲示は、目が載らないので識別不能だし、料金を20%下げるので、皆さん許可されます。その結果二回目が多数載っているので、更に複数回症例が増えています。私としては、まさに海老で鯛を釣る状態です。本症例の患者さんも、いきなり診察時にモニターの申告をされました。またまた嬉しい結果をお見せ出来ます。
症例は45歳女性。約3年半前に上白唇短縮術と口角挙上術と鼻唇角プロテーシスの同時手術を施行しました。術前の白唇の縦長は人中部で18㎜。5㎜切除し、白唇が平坦で人中が浅く弓がなだらかでしたから、1㎜寄せました。内眼角間33㎜:鼻翼幅35㎜:口唇横径46㎜で、計算して口角は45度方向に5㎜挙上しました。ご覧の様に鼻唇角プロテーシスで、両側鼻翼基部と鼻柱基部の位置関係は下向き三角に出来ています。
1年後には人中部の白唇長13㎜と後戻りゼロ。鼻唇角は増量を希望されて入れ替えました。十分に下がって更に満足されていました。こうして思い返すと一回の手術で完璧を期するよりも、複数回の手術で一歩ず付」希望に近づける手順を否定しない患者さんと考えられます。
昨年末に2年ぶりに来院。早速測ると「前の手術から3年半経ても後戻りゼロですね。」とどちらからともなく宣言し、患者さんはお喜びです。傷跡も不明に近いと仰って下さいました。でも「欲が出て、C-カールをもっと強調したい。」「その上に人中をもっと狭くしたい。」と仰ります。私が、「そのためには深い人中窩を使えば出来ます。」と説明すると、さらに患者さん「結節をさらに造りたい。」と仰る。私が診ると結節はあるが、もっと前に出してセクシーにしてもよい、患者さんのタレント性=特性や人格を感じました。患者さんは人中幅を自分で測ってきたそうで、私は促されて人中幅を測ると、Cupidの弓の頂点の幅は13㎜あり、これも患者さんの希望で10㎜まで狭くしたいとのことでした。つまり1.5㎜両側で×2=3㎜狭くするシミュレーションしてみせると期待されて楽しそうでした。上白唇の縦の切除幅は2㎜で充分です。
術直前診察で、3㎜切除しても閉口制限は起きない。口角はあとで検討しましょうとお願いしました。 画像は術前から、つまり一回目の3年後です。各方向を視ましょう。
実は下顔面が長めの中で口唇交連から下が長いのですが、短縮出来るのは上白唇です。赤唇は形が明瞭で綺麗ですが、もっと前に出したい気持ちは理解出来ます。そもそも人中部に限らない上白唇短縮術で、こんなに赤唇が変わる事を知っている人はそんなに居ません。経験患者さんだけが知っている事です。前回の創跡は近接すれば見えますが、日常は隠せるとおっしゃいます。
近接画像で笑顔を造って下さいました。この画像からは口角挙上術は不要と診られます。下面からでも一回目の創跡は見えません。上赤唇のドライウェットボーダー=粘膜皮膚境界線が見えるという事は、赤唇が外反している証拠です。
4方向で診ると、やはりE-ラインよりも口吻が後なので、赤唇を前に出しても良い症例です。
下にデザインは3㎜切除です。鼻翼横へのドッグイヤー修正の長さは短くなります。ちなみに鼻唇角プロテーシスで下げた分鼻柱下の傷跡は湾曲しています。
なお、赤唇縁のCupidの弓の頂点を診ておいて下さい。デザインに描いてありませんが、術中に両側鼻柱基部を直下の白唇と真皮縫合するのでなく、下辺に1.5㎜外側にマーキングしてから斜めに真皮縫合します。
下列に手術直後です。
先ず、Cupid’s bow, 弓の頂点の幅に注目して下さい。術前より明らかに狭く急になっています。腫脹で変形しているので計測はしていませんが、13㎜が10㎜になっている筈です。
下面像でも赤唇が外反してます。人中が深く狭くなっています。鼻柱基部と人中稜の位置関係を変えたからです。
4方向どこから診ても手術直後の創はまだ目立ちます。側面でE-ラインを診ると、赤唇が外反して前に出ても、まだ口吻はライン上です。
下に術後1週間の抜糸後。
鼻翼横の連続縫合糸は残しますが、透明糸ですから、目立たないでしょう?。両側鼻翼間は抜糸しましたが、私が引っ掻いてしまうので赤くなって写っています。形態的にはまだ腫脹が35%程度は残るため評価が難しいです。赤唇の結節はセクシーで、弓も急で人中が深く狭くなって赤白口唇の表情が更に引き立っています。
下面像で両側鼻翼間の”傷跡”を診ると、線は谷で鼻孔底隆起の麓ですから見えなくなります。幅もゼロのままでしょう。糸の跡も消えていきます。腫れが引いてきて、残念ながらドライウェットボーダーが後に戻りつつありますが外反はしています。
4方向で腫脹が引き始めてE-ラインよりも口吻が後になってきました。口元に品があります。人間だけが口で啄まない動物なので、口が出ていないのです。人はもっとも進化した動物ですから!。
下に術後2週間の全抜糸後。
ご覧の通り、前週に抜糸した両側鼻翼間の創跡は糸の跡も消えて来て、幅も線です。逆に鼻翼の横は、抜糸時に私が引っ掻いてしまい赤く傷んでいます。これも消えていきます。形態は腫脹の軽減に連れて、予定の変化が見えてきました。
下面像でのドライウェットボーダーの見え方は減ってきました。ドライウェットボーダーとは今まで表側に露出していた乾いた赤唇と下口唇と合わさっていて、唾液(口唇腺)で濡れている赤唇の境目です。ウェット赤唇が露出しているとカサカサになり、剥けてしまう可能性があります。もっとも一時的です。
側面像で診ると、何とも口元が楚々としていて、しかも斜位像ではセクシーな口元です。今後創跡が落ち着いたらメイク像を観たい気持ちです。二回目の上口唇短縮術がこうも効を奏する人を観るのは楽しい事です。いや、多くの私の患者さんは綺麗なのです。美容外科冥利に尽きます。
術後1ヶ月で跡が落ち着いてきました。
正面像で傷跡が目立たなくなりました。近接像でも赤い線が見えますが線は幅が狭く、凹凸も目立たなくなりました。
それにしても赤唇の前向きがセクシーで、久しぶりに書きますが、キスしたくなる口元です。いや最近は映画のキスシーンと表現しています。
何しろどの方向で観ても、魅せられる口元です。
術後3ヶ月の完成図を観ましょう。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の提示です。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円+消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。