形成外科医と美容外科医は、医師としての質が違います。診療対象も違いますし、保険診療と自費診療の違いもあります。原則的に病気や怪我等の原因の結果としての形態的変形を治すのが形成外科で、保険収載の可否は厚労省が決めます。健康でも形態的に治したい場合は美容外科診療になります。しかしどちらも、対象は体表に近い形態を治すので、解剖学的(構造)知識と機能的知識は共有です。実はUSAでは、Plastic surgery,形成外科とAesthetic surgery,美容外科はどちらも自費診療です。診療科目名もAesthetic Plastic surgery等(他にも)と一緒くたにしています。
ところが、形成外科医は大学病院や大病院で研修しますが、美容外科医はいきなりクリニックに就職するか、他科での研修後転科して来る者がほとんどなので、系統立った研修を受けません。また、形成外科専門医は、最低6年の研修後に、日本医学会が管理する日本形成外科学会の試験を受けて合格してから認定されますから、現代の最高の医療水準をクリアーしているものだけが持ちえます。対して美容外科専門医は、そもそも日本美容外科学会が二つあります。形成外科専門医取得後に、3年間で症例を重ねてから審査を受けて専門医(国内に約100人!)に認定される(私も取得)JSAPS,Japn Society of Aesthetic Plastic Surgeryという日本美容外科学会と、面接と症例数だけで、適当に専門医を認定するJSAS,Japn Society of Aesthetic Surgeryです。私はJSASの専門医も取得しましたが、粗製濫造なので現在は更新していません。
研修、研鑽、トレーニングの過程は、技術修得はもちろんですが、学術的な最先端の知識を頭に入れる事も重要です。年単位で新しい手術法が開発されるからです。ところが、医師となって初期から勉強し始めないと、更なる新しい知識も身に付かないのです。小学校の勉強が出来ないと、中学高校と上に挙がっても勉強が出来ないのと同じ道筋です。特に美容形成外科医の知識は、当然に欧米国が先行していて、英語論文が最先端です。また専門分野では特有の用語,Technical termがあります。専門分野の論文を若い時から読み漁らないと、新しい論文も読めないから、先端の知識が身に付きません。私は医師となってすぐから、当時はまだ貴重な一冊数万円の形成外科と美容外科の正書(当時の最高水準をまとめた教科書的な分厚い本)を、日本語で2冊と洋語の2冊を買い読み尽くしました。その後は数ヶ月で書棚一段分買い足し、さらに和洋の論文を読みまくりました。こうして新しい手術法を常に模索していました。医局で一番早く手術した方法も多々あります。
基、何故学術的な素養が必要かといえば、今回の鼻翼縮小術皮弁法は、形成外科的知識と技術がなければできません。それどころか、形成外科以外の医師は、皮弁という用語さえも知らないことがほとんどです。整形外科医は回転植皮とか称して、骨や腱の手術後に開いた傷を治そうとしてやってみて、多くは壊死させていました。もちろん、美容外科医院に上に書いた様な6年以上の形成外科研修歴無しに就職した医師は、手術名は知っていてもやったことないからできません。
なにしろ鼻翼縮小術は、埋没法では戻ります。外側の切除が適応となる症例は25%程度で、75%の非適応患者さんにすると、ウサギの様なぺちゃんこの鼻になります。鼻孔底を縦に切除して縫い縮めても、粘膜ですから伸びて後戻りします。今から約10年前に皮弁法が発表されました。論文を読んでやってみたいと思ったのですが、難しい。皮弁と言ってもトンネルの中を通すので、表皮をデ”ヌード”(裸にする)ので、上手に削らないと壊れるのです。7年前に仲の良いR.美容外科のH.美容形成外科医と話していて「ああ〜あれは完璧に剥かなくても大丈夫だよ。トンネルの中で表皮はネクル(壊死)から。」と教えてもらい、やってみたらうまくいったのでその後頻用してきました。こんなところにも勉強家同士のキーポイントが相通じたのです。
そして今から7年前から、私は人中を含む上白唇短縮術を頻用してきました。その際鼻柱基部と人中陵をずらして縫い赤唇を可愛くしてきました。ある時思いついて、鼻翼縮小術皮弁法と上口唇短縮術を併施して、ずらして縫合したら白唇中央部付近が膨らまないと考えました。結果は確かに出ますし、鼻の下の線状の傷跡が線方向に拘縮して鼻翼がより縮小するケースが観られます。これも形成外科医としての、創に対する知見があるから解ったことです。
症例は32歳女性。遠方からですが、5年前に来院されて、画像でご覧いただける様に、私が上白唇短縮術と口角挙上術を施行しました。もっとも、あまりに綺麗に縫合したので画像上は見えないかもしれません。そして、当初から外鼻部についても検討の余地がありました。鼻翼の最大幅が37㎜です。
5年ぶりに大阪院に来院されました。前の手術後の経過には満足されていて後戻りも皆無に等しいと言って下さいました。鼻を小ぶりにしたいと主訴に書いています。鼻翼最大幅37㎜:鼻尖幅16㎜で鼻翼の丸い膨らみはない。外側切除は不可。埋没法でも皮弁法でも鼻尖幅の2倍の32㎜を目標としたいと考える。ついでに上口唇を追加切除すれば、人中が膨らまない事はブログを見てご存じでした。3㎜切除追加が可能。
やはり遠方なのでスケジュールは立てず、数ヶ月後に銀座院に来院されました。鼻翼幅37㎜を皮弁法で縮小する希望をされました。いきなり方法を説明します。「両側鼻翼内側を茎部として鼻孔底に2.5㎜ずつの皮弁を作成して、鼻中隔の下にトンネルを作って通し縫い合わせます。」「知っています。」と患者さん。私「上白唇短縮術は鼻側の創縁と口側の創縁をずらして縫合して、人中付近の上口唇が前へ押し出されることを防ぐ目的です。これは私のオリジナルですが、二法を頻回に手術している私だから出来ますし、その意味を知っています。」と偉そうに説明を続けるも、患者さん「そうですね。知っています。」と、当たり前の様に希望されます。私嬉しくなり、「じゃあ、今回の3㎜の上白唇短縮術の料金はその為だから、3/5分で戴きます。」とサービスします。患者さんも嬉しそうに「お願いします。でも静脈麻酔でお願いします。」と、”そうか前回もでした”。手術と麻酔費用と移動費もかかるから、スケジュールは満を辞して立てるのです。
術前には確認します。両側の皮弁は2.5㎜幅で、37㎜を32㎜まで縮小する目標。白唇は3㎜切除で人中部で寄せない。
画像は各方向を経時的に診ましょう。
上列に正面像の術前とデザイン後。3㎜の上口唇短縮術のデザインですが、両側鼻翼横のデザインは、後でトリミングします。鼻孔底隆起に縦の二本線は、外側は鼻翼内側壁に向かい、隆起上は幅2.5㎜切除します。鼻孔内は同様の幅で皮弁を作りますが写真は撮れませんでした。
術中に鼻翼縮小術皮弁法直後には33㎜でしたが、鼻翼横の創縫合後には外側の皮膚が腫脹して34㎜となっていました。翌日はさらに腫れて35㎜でした。
上右図は術後1週間です。ヘルペスを発症したので一部の傷の癒合が不良でした。部分的に糸を残しました。
術後2種間で全抜糸しました。ヘルペスは外用薬で治癒へ向かっていました。「鼻下の傷跡が線方向に拘縮して鼻翼幅のサイズが予定より短くなる症例もあることを説明しました。
近接画像でも鼻孔内のデザインははっきりとは写りませんでした。前の方だけ僅かに見えます。ですから手術時は、白唇を下に引っ張って鼻孔内も引き出しながら皮弁挙上します。
術直後像ですが、鼻孔底隆起上の創は真皮縫合すれば消えていきます。上右図は抜糸後ですが、確かに目立ちません。
術後2週間では腫脹が引いてきて形態が見えてきます。サイズも35㎜です。「今後拘縮が起きて、好影響を及ぼすといいですね。」と教えておきました。
下面像は術前と術直後から。比較したら、鼻翼は明らかに縮小しています。創は鼻孔底に縦にありますが、実は本症例は他院で鼻翼縮小術外側切除法を受けていて既に傷跡があります。
上左図の術後1週間ではヘルペスが右鼻孔底にも波及してそう治癒が遷延していましたが、上右図の術後2週間では、傷跡は目立たなくなっていきました。サイズは34㎜です。
上中図で斜位像では上口唇短縮術の影響で術直後には腫脹していました。上右図の術後1週間ではヘルペスで赤くても腫脹は軽快中でした。鼻翼はまだ腫れていますが、短縮効果は可愛いです。
側面像で見られる様に、術直後に鼻尖が上方移動するのは、上口唇短縮術の定番ですが、鼻翼縮小術でも起きます。ところが上右図のごとく術後1週間でかなり降りてきました。上口唇の影響がズラして縫った為に軽いのでしょう。上口唇短縮の効果は3㎜でもC-カールで可愛いでしょう!。
術後1か月からは比較画像では無く一緒に載せます。
形態的には満足です。サイズは35mmで止まっています。
E-ラインの前後位置との関係もあり赤唇の突が似合う。下面像で創跡を診ても縦線は目立たないです。横線はまだ赤いですが、消えていきます。前回で知っています。上の画像でも見えません。
後は鼻翼サイズの問題です。3か月は診ましょう。これ以上後戻りしないでしょう?。下に術後3ヶ月の画像群。
まず鼻翼幅を測ります。35、5㎜で後戻りは止まっています。白唇の長さは「うーーんと一回目何ミリで二回目何ミリで・・。」カルテに記載が不足です。探し出して「一回目に17㎜を5㎜切って、二回目に12㎜を3㎜切って、」測りますと10㎜です。後戻りゼロでなかったのですが、私「完成!。」と告げます。「二回目は若干傷跡が広がる時があります。」と言い訳して気移設画像を見ても傷跡は綺麗です。
斜位像や側面像でも口元がスッキリしています。なお下から見ても傷跡は見えません。
二回目の白唇短縮術に鼻翼縮小術皮弁法を併施すると、結果が得られて、永続的効果も得られて、お得です。
当院では、厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。
医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えます。切らない鼻翼縮小術は18万円+消費税です。鼻翼縮小術皮弁法は28万円+消費税。上口唇短縮術は28万円+消費税ですが、今回は2回目で切除幅も少なくいので60%額です。なお口角挙上術は25万円 +消費税。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。