数年前から、私の中で広範囲皮下剥離リフトは定番です。一種のブームです。ところで費用を決める手術名はMACS Liftとしています。フルネームではMinimal Access Cranial Suspension Liftです。訳すと最小の切開で頭蓋骨に吊り上げるリフトです。剥離範囲は関係ありません。顔の軟部組織を、支えるために骨という硬組織に引き上げて吊り上げる方法は、これも定番で、しかも比較的安全で別に難しい手技ではありません。また、切開が少ないのは患者さんに受けが良いのでしょうが、当然剥離が難しいから手を抜かれます。確かに剥離範囲が広いと止血が難しく、また剥離操作は層を一定にするための技術を要します。ですが私は、そのために修練して技を磨いてきました。クリニックのスタッフは学術的に勉強していません。関西では「勉強しまっせ!。」とか言って負けることで稼ぐことを”勉強”と言いますよね。どうもビジネスに役立つ知識を”勉強”という様です。またネットで得る知識は、レビュー,revue :編集者が真偽を審査することが為されないので科学ではないと考えられます。
またJowlは一般英語です。三省堂の英和辞書にも載っています。ですが本邦では、美容用語としてさえ使われません。これも勉強不足だからです。先日あるインテリの(日本人の)患者さんに、Jowl Lift を説明した際には「私英語は普通に話せます。」「ええ〜、分かりますよ。一般の英語です。あまり日常的には使わないですが・・。」「専門用語に近いですね。」と教えてくれました。私「美容医療の専門用語,Technical termですね。」相手は「そうですね。でも欧米では、最近は皆さんが美容に興味あるから使います。」やはりリフトはジョウルが重要です。これからも伝えます。一般用語さえ知らない、コマーシャリズムのビジネス系チェーン店美容外科とは一線を画していたいと肝に銘じました。
その意味で本症例はやはり、残念ながら、いい加減なビジネス系クリニックに嵌められた様です。何故かJowlに脂肪注入をされたのです。私はその言葉を聴いた瞬間に、「ばっかじゃないか?!。」言ってしまいました。さらに前回のリフトはS出身のやはり有名なビジネス系で受けていて、肥厚性瘢痕が丸見えで、耳垂も引っ張られていました。
昨今は美容医療の裾野を広げるべく、特にビジネス系やチェーン店系の美容外科クリニックが、、侵襲の少ない方法を売り付けています。ましてやベテランの形成外科医でさえ、「外科医の最終目的は手術をしないことです。」とか言って非手術を勧め、また機械屋や材料やの稼ぎを助けています。ただし大多数の美容形成外科医は、術前の詳しい説明をしません。料金もぼったくりですし、持続性に関しては、特にプチ整形や、表面からの光系やLASERや電気系の治療は効果の永続性がないのに、説明時には、科学的に証拠もないのに、長持ちする様な説明をしてお茶を濁す輩が横行しています。患者さんは結果で判明するので、「やっぱりビヨーセーケーはダメね!、金儲け主義だわ〜!。」と嘆きます。私が小学生時に友人から「お前の父さんは薬剤師『ヤクザ医師と読む』」と言われた頃と変わっていないんです。こんな姿勢を変えたかったのに、時代背景が悪くなったから戻っちゃったんでしょうか?。
とにかく、広範囲剥離中顔面リフトは靭帯法の次に効果的で後戻りは少ないのです。さらに耳後部を生え際まで長く切って挙げれば、下顎縁より下の頸部にも効果を得られます。持続性も高いです。これは学会で科学的に計測して経年的変化を発表していた私の先輩の医師が証明してきました。チェーン店系のSでは、チョコっと切って剥離もしないで縫うだけの、ナンちゃってリフトをされます。よく私に文句言いに来院されますが私に言ってもらっても困ります。ちゃんとやり直して差し上げます。
症例は42歳女性。5年前が当院の初診で、私がいくつかの手術をしてきました。口周りは今回の部分写真にも載っていますが傷跡は不明で後戻りもありません。3年間は来院されなかったのですが、本年初頭に再来しました。前回の眼瞼の手術についても尋ねられたが、セカンドオピニオンを求めることになり、次にフェイスリフトについての再修正に話題が移行しました。
これまで二回他院でFL: Face Lift を受けています。一目見て傷跡が最大幅4㎜あり目立ちます。耳垂も下がったそうで、尖っています。患者さん、「先生修正手術載せていますよね?。耳の位置!、傷跡の幅!。」と要望されます。「リフト効果の画像も良いし。持続性も載せているし。」私「傷跡はいくつかの工夫で今より目立たなくできますが、なくせはしません。」「耳垂は父によく治さされましたが、工夫があります。」
その後も一度診察します。前医はS.クリニックの出身で非形成外科医。斯界では名の知れたビジネス的美容整形屋です。真皮縫合が不足というか丁寧にできない医師で剥離は皆無に近いと推測されます。近年私は広範囲剥離Jowl Lift を優先事項としていますが、本症例はご覧のとおりJowl fat が下垂でなく膨隆しています。要数的いシミュレーションしても引き上げ力に勝てないと予想しました。したがってまず、予めLS: Lipo Suction をお薦めしました。何故なら、FLとLSの同時施行は難しいからです。一部の医師はLSが剥離の代わりになると主張しますが、所詮蜂の巣状で面での剥離は不能です。広範囲剥離リフトの効果に刃太刀打ちできません。かと言ってこの量のJowl fat は引き上げきれません。
とか言っていたら、Jowl に脂肪注入を入れたことがあると申告されました。そりゃあ〜重いはずです。注入脂肪だとしてもとにかく吸いましょう。では画像を観ましょう。
4方向で診ると、マリオネットラインの外側に膨らみ。
4方向ではJowl の後方まで膨隆が触れます。
上に吸引脂肪の図。両側で3CC。ダイスが三つ入っていると考えればかなりの量です。
術直後:局所麻酔でも腫れます。手術のダメージでも腫れます。顔面神経に麻酔が回って運動低下が診られます。
4方向で診ると、マリオネットラインは消失しています。これも腫れですが、効果でもあります。
脂肪吸引後3ヶ月でFL に至ります。LS 前に比べて下顎縁のカーブに凹凸が減っています。
4方向でもマリオネットラインが短く浅くなりました。刺入傷も消えています。
LSから3ヶ月を経て、Jowl を触れて摘んで触診すると、柔らかくなっています。そうでないと剥離できません。定番の広範囲剥離Jowl LiftをMACS Lift, Minimal Access Cranial Suspension Lift の切開で行います。切開は前回の幅のある傷跡の後を切開して肥厚性瘢痕は切除します。
下列にはデザインの斜位図:耳垂先端にマーキング。耳前の切開線は瘢痕の後。剥離範囲は耳前は2.5㎝、Jowl はマリオネットラインの外まで。耳後ろは生え際に向かって曲げます。
手術時にJowl には注入脂肪が残存していましたが、削りました。皮膚の引き上げは、耳垂先端で1.5㎝、耳珠の上で1.0㎝、耳後部は1.5㎝ずらして引き上げました。流石に三回目の手術では切除量はこの程度です。
なお耳垂は、縫合時に予めSMAS に縫い付けて位置決めして、さらに耳甲介の軟骨に向けて糸で吊り上げます。耳珠は引っ張られて平板にならない様に、前方でアンカリングして前を凹ませて切開線も外耳道にあります。この二点:耳垂が伸びる。耳珠の丸みがなくなると、リフトがバレバレです。もちろん傷跡が不適切な位置で幅ができたらダメです。芸能人がリフト後はアップで映らなくなるのはその結果です。
MACS lift術直後:術直後は腫脹で膨隆して効果が不明です。
ご覧の様に局麻が切れるまでは顔面神経が動かないために口角が下がります。創には血が滲んでいるから目立ちます。
術後1週間:直後よりは主張は軽減していますが、まだJowl から後の耳の前までは膨らんでいます。
ただし4方向で診ると、下顎縁のラインは綺麗なカーブを描いています。
私の夏休みの関係で変則的に術後25日で画像を戴きました。
腫脹がかなり引いてきました。ピーク時の25%程度でしょう。下顎縁のカーブが弧状です。
今回の手術の目的は修正術です。上に書いた様に三回目ですから、引き上げは年齢の割に少ないです。それよりも傷跡の肥厚性瘢痕がどれだけ目立たなくなるか?、耳垂の位置。耳珠の傷跡が隠れるか?。下顎下の締まり具合。など色々な面は中期的に診ていきましょう。
術後2ヶ月で診せて下さいました。
両側とも傷跡の肥厚性瘢痕は軽度生じています。
ケナコルト局注にはまだ硬いのでステロイド塗布で悪化を防ぎましょう。下に術後3ヶ月の画像群下顎角の下の弛みが気になるそうです。そこまで引き上げられませんでした。4方向を視ましょう。
同様に左も。更に創跡は肥厚性瘢痕です。負けました。ケロイドもどきは、一度起きると、同じ所を切れば再発します。でも患者さんは「前より小さいですよ。」と慰めてくれました。私申し訳無さそうに、ケナコルトを注射しました。2週間以降に経過を診せて下さいます。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。広範囲剥離中顔面リフトは80万円+消費税です。顔面脂肪吸引は35万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。