2022 . 10 . 25

面長で頤が前突していてもJowlは見られます。いや余計目立つのです。広範囲剥離Jowl lift が効果的です。

Jowlをみなさんに説明しても、知らない人が多かったのですが、一人だけ英語の堪能な人が理解されました。USAの美容医療界では常識で、いかに治すかで苦労されています。日本美容外科学会では、先輩でUSAへの留学経験があるDr.Utがよく使います。彼は術前術後と年単位の長期的経過に於いて、皮膚に印を付けてその位置を測って後戻りの程度を計年的に報告している本邦唯一人のリフト手術に命をかけている美容形成外科医と想います。

Jowlとは直訳すると動物の顎。特に豚で下顎縁からぶら下がって垂れた部分を指します。日本では同じ動物でも”ブルドッグ”と云われます。人間に応用して、下顎縁のカーブから、外側に膨らんだ部分。マリオネットラインの外側への皮下脂肪塊の下垂を称します。ご存じの通り、マリオネットラインは口角から斜め外下への溝です。操り人形の下口唇から下に割れた線のところですからこの様に称されます。欧米でも使われます。マリオネットラインにはRetaining Ligament, 支持靭帯があります。骨と口角下制筋と皮膚をつなぐ靭帯で、脂肪塊は下垂いてきて靭帯につっかえます。だからマリオネットラインが深くなるのですが、下垂してきたJowl を引き上げればラインも浅くなります。フィラーでマリオネットラインを埋めるのと、Jowl を減らすか挙げるかの。どちらが効果的かはケースバイケースですが、併用が最も効果的です。

広範囲剥離Jowl Lift は耳前部から耳垂を回って耳後までの切開から、Jowl を越えてマリオネットラインのすぐ外側まで皮下を剥離します。その後皮膚を引き上げると、Jowl fat を潰して皮膚が移動します。皮膚の裏面が上に移動して脂肪層と癒着します。剥離したから癒着するのです。面で癒着するので後戻りも少ないのです。

近年アベノミクスの”遺産”で景気が良くなって、美容医療機関が林立しています。二つのソースがあります。一方の形成外科のトレーニングを受けていないで、チェーン店系で数年間トレーニングを受けた医師は、美容整形ビジネスを学んでいても医学的医療を学んでいませんから、まともなリフト手術は出来ません。剥離しない”なんちゃってリフト”はよく為され、私もその術後を時折り診ます。もう一方は、形成外科医局でトレーニングを受けた医師が、安く使われる医局を見限って美容形成外科医院を開業することが増えてきました。残念ながら彼らは美容外科のトーニングの場を持たないで開業しますから、手術法も手探りで学んでいくしかない様です。

現在広範囲剥離リフトを常用している美容外科医はネット上で検索しても数少ないです。

症例は61歳女性。ご覧の様に面長で、頤が長く前突していつまりE-ラインよりも口が後にあります。したがって、下顎縁のカーブはU字型でなく、V字形のはずです。ですが、Jowlが外に膨らんでいる為に、V字形でなく長いU字形を呈しています。V字形を望むことは難しいとしても、長いU字型はもったいない話となります。若年時に観られていたはずの特徴的な輪郭を活かして、Jowlの膨らみを縮小したい考えは汲みたいと思います。

カルテを視ましょう。頤が長い。前突もJowl は垂れた。数年前V.クリニックで糸リフト2回。下眼瞼皮膚の小皺。数年前手術も表情が多彩で再発した。上中下リフトに興味があり来院。上中分けると無理です。優先は広範囲剥離Jowl lift 45度よりも上方向に耳輪上から曲げる。1ヶ月以上空けて下眼瞼皮膚剥離リフトを可能。

カルテにはあまり所見が書いていませんが、手術は早速希望されました。

手術当日の術前診察では、頚部には弛みがない。耳後部で止めないでドッグイヤー修正のために曲げる。もみあげは切らないで耳輪前から前方に曲げてドッグイヤー切除。PRPを糊として併用。

画像は各方向を比較していきましょう。

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術前の画像とデザイン後。Jowl まで剥離します。

術中写真は撮りませんでした。引き上げた皮膚は耳垂部2.5㎝、耳珠上部1.5㎝、耳後部1.0㎝です。年齢相応に多めです。

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上左図の術直後は腫れてJowl が膨らんでいます。翌日も診ますが画像はありません。疼痛は重度だそうです。特に耳介が痛いそうですが、耳介の知覚は正常でした。Jowl を含む剥離範囲が全て腫脹して膨隆していました。ただし触診上血腫ではなかったです。顔面神経はIntact, 顔面表情筋は正常に動きます。創経過は外出血はあったが、血痂除去しても再出血はなかったです。

上右図は術後1週間です。1週間で耳前部を耳珠を除いて抜糸しました。まだ疼痛が強いそうです。顎が常に痛いとのこと。

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術後2週間で全抜糸しました。まだ下顎角部に圧痛が残ります。血腫ではありません。内出血が多い部だったのです。まだ腫れてJowl は挙がっていても大きい。右耳後部に毎日1時間疼痛があるそうで、大耳介神経の枝を糸で巻いたかと考えられますが治ります。

上右図は術後1ヶ月です。Jowl から下顎縁に掛けてなだらかなカーブになった結果的に、おとがいが目立たなくなった効果は認められます。

IMG_4101いよいよ術後3ヶ月です。後戻りしていないかなあ〜?。そこが問題です。少なくとも患者さんは満足しています。

4方向を比べてみましょう。

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斜位像でマリオネットラインの後ろにJowl が弛んでいます。

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側面像でデザインを観ましょう。耳垂に引く方向をマーキングしています。切開は耳輪前と耳珠だけ描いてあり、この後局所麻酔後に全切開線を書き足します。剥離範囲は口角の後ろまで点線で囲んで描きました。

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術直後はまだ腫れが少ないのでJowl から下顎ラインにかけてのカーブが曲線です。

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術後は48時間がピークです。術後1週間の上記画像では黄色いです。やはりJowl だけが腫れているのではないので、下顎縁のカーブが曲線です。

IMG_3031IMG_3030IMG_3028IMG_3029術後2週間でも、腫れはまだまだ残ります。

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術後1ヶ月です。

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完成ですね!。次に進みます。

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の説明も加えなければなりません。広範囲剥離中顔面リフトは80万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。