度々私は、”直美”や非形成外科医を指弾して来ました。その心は、外科的技術と医学的知識の不足な医師が横行して、結果に困惑している患者さんが、私に続々と来院されるからです。私は困りながら、うまく修正して来ました。当院にいらっしゃる患者さんだけでなく、昨今は美容医療のクリニックが増えた結果、診断が稚拙で、適応でない手術手技と不思議なデザインプランを使って施行されて、満足でない形態と機能を呈する患者さんが多発しています。SNSを利用して、ビジネスに特化している医師が横行していて、特に彼らは医学的研鑽と修練を怠っています。ちなみにブログはSNSですが、症例紹介と医学的説明に終始して、皆さんの理解に寄与しています。
ところが今回施行する二つの手術内容はそれだけではありません。本日のお題は、非形成外科医である父から授けられた、二つの経験と知識にもヒントを得ています。秘密ではありませんが、多くの医師は知らない美容医療の手術法の特殊な知識です。
頤部の手術には、二つのポイントがあります。
一つ目は、頤部の後方の頸部への移行部には溝があり、正面像では隠れて見えません。側面からでも影になっていて見えません。ですからここは切開出来ます。もちろん丁寧に真皮縫合を要します。アアッ、この点は父からの相伝だけでなく、形成外科医の得意分野です。なお、頤の後方の手術は二つあります。
一つは二重顎のリフト手術です。多くの症例はおとがいが後退しているのが原因ですが、そうでない症例も存在します。頤の後の中央には広頚筋の筋体がないのですが、筋膜上に皮下脂肪が溜まります。これが二重顎の本態です。これに対して、脂肪吸引がトライされますが、カニューレ挿入部が遠く、他院で受けてもうまく取れた症例の結果を診たことがありません。また取れたとしても皮膚が余って、結局垂れ下がります。そこで私は!、二重顎に対しては、頤の後方を切開の上、皮下脂肪の削徐術をお勧めしてます。削徐とは皮膚の裏側に一層だけ細かい皮下脂肪を付着させながら剥がし、深部にある皮下脂肪を剥離剪刀(形成外科医専用の鋏)で削り取ることです。腋臭症(わきが)手術等でも使われる形成外科的手技です。私この手術をしていて心の中で「腋臭症手術みたいに根気を要するな!。」と呻いています。口に出してしまったこともありました。丁寧に根気よく削れば、広頚筋々膜が診られ、皮下をスカスカに出来ます。そして大事なことは、皮膚を戻して縫合したら、アンカーリングAnchoring(錨)縫合して、皮膚と筋膜を密着させて、さらに皮膚上から圧迫固定します。通常2〜3週間で皮膚と筋膜が癒着して、ぶら下がらなくなります。
もう一つはE-ラインが一直線上にあったり、頤が前突していないる人で、しかも痩せている患者さんは、ターキーネックが起きます。これに対しては広頚筋の処理(典型的にはZ-形成術ですが、最近の症例では切断(三角形に切除も)だけでも効果が得られる事が判って来ました)が行われます。切開線は同様に頤後方の溝の横切開です。筋を見出すのに解剖学的知識を要しますから、形成外科医の得意分野です。
もう一つのポイントは、当たり前ですが大事な形態的要素。頤プロテーシスは横長棒が横行しています。他院で入れられたものでは、それ以外のものは見たこともありません。結果おとがいが水平線を持ってしまい、強そうな男顎状態になります。酷い症例では割れ顎、ケツ顎になったのも見たことがあります。そこで一言!。頤プロテーシスは三角形(実際には尖っていたら危ないので半円形)でなければ、頤部の下顎骨縁にフィットしません。一言、父がいつも強弁していました。その上オーダーメイドで、この様な形のプロテーシスを造らせて、多用していました。ちなみに彼のアプローチは、口腔内からと頤下からと半々でした。20年前に父が亡くなってからは、遺産ではありませんが、私は残りを保存して使っています。ただし縦径があるので、口腔内からの挿入時には、口腔内の入口から出ない様にするための工夫が必要です。私は入口の皮膚側と骨膜をアンカーリング縫合してトラップ,Trap(サッカーワールドカップ観てますか?、ボールを脚の前に止める技のこと)しています。ちなみに昔、父がプロテーシスを頤下の皮膚から入れた患者さんは、通り道があるので徐々に落っこちて来て、私が入れ直したことがあります。ですが私は現在上の手技と牽引糸の併用で、安定的結果を得ています。ここで頤プロテーシスの二形の画像を載せます。イメージとしてこれが入ったら頤縁の形態がどうなるか解りますよね。
よくある横長棒状。下方に入れたら長くなり、水平線が出来ます。上方に入れたら二段顎になります。いずれにしても不自然です。ただし入れ易いから、非形成外科・美容外科の”直美”連中は多用します。
やや尖った三角形に近い半円形の、#形の良い物。半円形が頤の下顎骨縁にフィットし、上方の縁の折れ返り線が、頤唇溝(いしんこうと読む)となります。父はその形態を”乙女チック?!”と表現していた。
症例は50歳女性。本年初頭に初来されました。ブログを覧たそうです。それも多くのカテゴリー(ブログはキーワードの設定のために、部位や解剖、手術法などのカテゴリーに分かれていて選べます)をご覧になったそうで、いきなりいくつもの部位の手術について聴いてきました。素敵な女性なので、私は気合いを入れて楽しみます。まずこめかみリフト、前額リフト、Jowl Lift、他にも頤の話題は出たと記憶しています。ですが時間の関係で、次回また来院して再診(察)となりました。
こうして2ヶ月後に他の手術で来院された際に頤の件に触れました。カルテには”頤下二重顎の皮下脂肪削除と頤弛みは皮膚切除で。プロテーシスは三角形で上に移動。左にあるのでもちろん中央化, Medializationを図る”とあります。
その1ヶ月後に、さらに手術プランを詰める為にもう一度診察しました。カルテを転記します。頤プロテーシス:前回口腔内からでした。今回同じ切開を使います。2年前にSe.で入れた、左にずれたし痛かったから抜いた。抜いたものを見せてもらったが、丸かった。私は「楕円形でしょう?。」と聴いた。厚さが65㎜だった?。いや6.5㎜?。私は”縦長?”と思いました。面長に見えるから頤を長くしたくないので、今回は前に出したい。私は「下=下顎骨の頤尖より下は剥離しないと頭に入れておきます。」と念を押して、さらに定規を当てて「E-ラインからして頤は前に5㎜だけが適切ですね。」と告げました。次に頤下二重顎改善術:頤下脂肪削除は頤下に留めましょう。後ろ側の下顎体部の下はJowl lift時に引き上げましょう。その場合MACS Liftの切開は耳後部を生え際まで要します。こうして手術に至りました。
約1ヶ月後に手術となりました。手術直前に確認の為にもう一度詳しく診察しました。患者さんの申告。「昨年末にプロテーシスを抜去しました。」私”ポケットはくっつき掛けていて剥離しやすいかな?”と思い”楽?” ”逆に広げすぎない様に注意しよう”と胸に刻みます。術直前に反芻しておくと忘れないのです。カルテにも”ポケットは下顎骨縁までに留める”と銘記しました。患者さん「6.5㎜も下に落ちた。左にシフトして神経に当たった。」再強調するから、私「頤神経に当たるのは危なかったですね。でも今は知覚異常はないのですよね?。」と確かめて”左の剥離時に触れない様にそおっと切ろう”と注意点を反芻します。さらに「4〜5㎜前にしましょう。牽引糸も要ります。」と確認しました。二重顎については「頤下脂肪は一層残して全摘します。皮膚切除は可及的にします。」と言うと患者さん訝るから「Bow stringにならない様に!。」と弓を引く実演して理解してもらった。”解ったかな?”。とにかく手術開始します。
画像も二つの手術を並行して載せていきます。
術前の正面像から。
頤プロテーシスが下方にあり、頤尖に水平線も観られます。若干左にあります。
頤の下面像です。頤の後に溝があり、その後方の膨隆部を囲んでマーキングしました。
側面像で観て、二つの手術前の形態を説明しますと、頤プロテーシスが下顎骨縁よりも下方にあります。E-ラインは直線上にあります。頤部の後方に溝があり、その後方が弛んで膨らんでます。
下には手術直後の画像群。
腫脹で長くなっています。実際の手術手技の所見としては、プロテーシスの位置はポケットに依存しますが、頤部の下顎骨縁よりも上までしかありません。これから徐々に短く見えて来ます。ちなみに上右図は頤下から削徐下皮下脂肪です。量は測り忘れました。
側面像で二つの手術の効果が視えます。プロテーシスは前に突となりました。牽引糸がチラッと観られます。頤部の後方の二重顎は消失し、頤から鎖骨部へ弧を描いてます。
下には術後2週間の画像群です。
上左図は正面像です。まだ、腫脹が残り長く見えます。ただし中心化されていて、もちろん神経症状もありません。本症例の患者さんは美人で、美的素養が豊かで、理解力が高いので、頤下の圧迫は適時付け替えても良いとしました。上右図は圧迫を外した下面像です。頤後方の創痕のさらに後が、術前のデザインでマーキングされている削徐した部です。触診上もう癒着していました。創痕は赤い線ですが、白くなれば観えなくなります。
側面像で二重顎が解消しています。今回は頤プロテーシスを上方移動させた効果と、皮下脂肪削徐の効果のカップリング技が見事な結果を呈しました。創痕の線は真横からでも視えない部です。
斜位像ではなんとなくプロテーシスの位置が上方移動しているのが解りますかね?。ただしまだ腫れて、その下が膨らんでます。
術後1ヶ月で再診します。
腫脹が軽減して、頤が短くなり、今回は上手く出来たとお悦びです。その所以は患者さんが美容的な理解力が高く、私とのコミュニケーションが深く得られたからです。口腔内の糸は溶けて抜けて、飲み込んだのか?。自然に抜糸されました。
頤後部の傷跡はまだ盛り上がっていますが、この部位は緊張があるので平坦化します。そもそも緊張に耐える様に盛り上げました。
プロテーシスの下縁は、触れると下顎骨縁の前までに留まっています。最前突部はさらにその上です。上のプロテーシスの画像の通りです。つまり前に出て、短くなりました。
術前の画像と見比べれば、二重顎は改善して綺麗です。圧迫は不要となります。傷跡は側面からは見えません。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えます。二重顎に対する頤下脂肪削除術は35万円+消費税です。頤プロテーシス挿入術は消費込みで22万円です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。





























