2026 . 8 . 8

こめかみから3方向(3Vector)にリフト。結構手間が係りますが、面白い効果。

”直美”や”転科医”は、今に始まったことではありません。いやその前に、近年美容医療が喧伝されて隆盛していますが、美容医療も今に始まったものではありません。昭和51年に形成外科が、昭和53年に美容外科が標榜科目(看板に書いたり広告に載せられる診療科目名)となる前から、美容医療に携わる医師は居ました。すでに100年以上前の戦前に、ごく一部の眼科医が眼瞼(主に重瞼術)、耳鼻科医が隆鼻術を手術していました。アジア太平洋戦争を挟んで、80年前の戦後すぐから、整形外科医院を標榜して、美容整形屋が横行していました。昭和40年代には既に、山手線の各駅(29駅)に美容整形医院が開設されていました。父もその一人でした。さらに東京駅の周囲には、5院ありました。昭和50年代に入ると、チェーン店が横行します。新幹線セーケーと称して、名古屋や大阪と東京を毎日行き来している美容外科医師も、数名居ました。彼らは皆美容外科医でも形成外科医でもありません。昭和53年までは、その様な診療科目はなかった時代ですから。ちなみに私の父は胸部外科医でした。他には産婦人科医や泌尿器科医出身の医師が多かった様です。つまり彼らは全員純粋に”転科医”です。

なぜそうだったのか?。まず第一に、昭和36年までは国民皆保険制度はなく、市民の一部は自費で医療を受けていたからです。ですから医師側も、自費診療の美容整形に忌避感なく移りました。第二にやはり、自費診療は自由診療だからです。つまり料金は医師が決めます。現在のIT社会では相場が出来ますが、特にチェーン店系は資本主義の論理ですから、似たり寄ったりの料金体系です。”(美容)医療”のあるべき姿ではありません。診療内容とその結果は、ピンからキリまで差がありますから、料金は本来まちまちな筈です。

ところで、ここからがポイントです。昔から”転科医”が横行していたのは儲けるためでした。むしろ高度成長期には、高額な方が高級感があり売れました。ですが逆に”失われた30年”以降は、医師も稼ぎが減り、その上国民から医療に向けられる目が厳しくなり、病院の若い医師は忙しく死ぬほど働かせられます。その情勢で最近”直美”が増えました。今や年に200人(医学部卒業者2校分)と謂われています。もっとも上に書いた様に、”直美”はずっと前から多く輩出されてきました。例えば私が北里大学を卒業して形成外科・美容外科医となる同じ年次の昭和61年に、老舗の美容整形であるJ.病院は六人の新人医を雇いました。またT.K.先生は昭和44年にS.医大を卒業直後に整形外科に入局後、名古屋で母親の病院を継いでいます。恩師の形成外科医を招聘して、昭和51年から美容外科を診療し始めました。ある意味”転科医”ですが、ほとんど”直美”です。ちなみに今や売れっ子の、ご子息のT. M.君は、形成外科を研修後継いでいます。どうも”直美”と言う用語は彼が提唱した様です。なお、その意味で私も親子が似ている経歴ですから、彼とは同類で仲良しです。

今回に限らず、”直美”や”転科医”の下手さ加減に心を痛めています。結果の不足や損傷を受けた症例がよく来院します。専門知識に素づく診察技術を学んでいないから、診察不備や説明不足がおうこうし、手術後の合併症が多発しています。私は時間を掛けて丁寧に診察してから、手術時間も十分に用意して臨んでいます。その結果がこれ↓です。今回は、さらに追加として言えば、術後合併症(失敗とは言わない事!:治せないのが失敗)に対する修復治療も、”直美”や”転科医”には対処出来ません。私達”非直美”は、大学病院等の形成外科・美容外科で研修し、沢山の難しい症例を、多くの医師に相談して議論しながら、医学知識を醸成して対処してきました。経験が豊富で知識が豊富なので、巧く治せます。この点もメリットですよ。視てください。

症例は51歳女性。今回も来院されるなり、「ブログを視ました。」と仰います。「これこれ。」と観せて、「3Vectorってありますよね?。」と継ぎます。ここからはカルテを転記します。さらに訊くと、”昨年11月東京の恵比寿のクリニックでMACS Liftを受けました。Jowlをもう少し挙げたい”。診ると、”Malarはコケていなくてゴルゴ線は浅いが、鼻唇溝にも引き上げ効果を働かせたい”。と感じます。「目尻はどうします?。3Vectorならここは?。」と訊くと、”やはり3方向を求めます”。と頼まれました。私は用手的にシミュレーションしながら「わっかりました。3Vectorで、上から目尻を若干挙げます。頬骨隆起部まで剥離して、鼻唇溝も、ほら!、挙がります。Buttressまで剥離して、Jowlにも挙上力を働かせます。」と説明します。一つ患者さんに間違えないでもらいたい事は、シミュレーション時に手指で、[切開部でなく]、[剥離範囲の前端]に当てて挙げると、その通りになります。”ただし生え際の切開部は、3Vectorなら、眉尻の後方よりも2㎝上から5㎝は必要です”。と説明しました。”上端はドッグイヤー防止の為に、前方にも切開追加します”。

手術直前には手術内容を確認しながら、もう一度シミュレーションしながら、今回は診察室で剥離腔のデザインも描きました。その後上にも45度斜め上にも、真上にも引き挙げて鏡で覧てもらいます。上記の切開線も描きます。シミュレーションとデザインの時点でもう嬉しそうでした。

画像は日時に沿って、各方向を見比べていきます。後段に術中近接画像を載せます。

術前の正面像。卵型の美人輪郭です。

術前の切開線は上記の通り。剥離範囲のデザインも上記の通り。

Malarは丸みがあり、ゴルゴ線は診られませんが、鼻唇溝は深めです。頬瞼溝は気になりません。

切開デザインと剥離範囲を近接で診ましょう。

いきなり術直後の画像です。腫脹は局所麻酔も含みます。

切開線上端は前に1㎝曲げて追加しました。そして剥離腔の上端を45度斜め上に1㎝。切開線中央部を斜め45度上に13㎜引き上げました。

切開線下端は真上に挙げていますが、もみ上げに沿って後ろに曲がっているので、上手くずらして縫い、ドッグイヤーは生じません。

翌日は他医に診てもらいました。カルテには”右眼瞼に腫脹”、”頬皮下出血 右頬腫脹はやや硬結+”とあります。血腫には触れていません。

私はあとで画像を覧て、血腫がありそうなら、触診所見が大事だと感じ、残念でした。

右の剥離腔下縁の紫色の内出血線は膨隆しています。

満4日にも、患者さんは心配して来院されました。カルテには”右頬、腫脹、皮下出血+も 翌日は硬結があったが弾性硬で吸収されている。圧痛なし。ドレナージは必要ないと思います。悪化するなら考慮”とあります。

私この画像をあとで覧て、特に正面像では膨隆が血腫だと捉えます。黄色い内出血は起き得るダウンタイムです。

実は本症例の患者さんは高血圧で降圧剤を服用しています。どちらも後出血の原因となるのは明白です。他症例とは差があります。

術後1週間で抜糸のためもあり来院し、やっと私が診られました。「まず内出血は2週間罹り黄色くなくなります。」「左は腫脹です。」”右は剥離腔が硬結、触診上も凝血の硬さと考えられ、血腫と考えられます”。早速処置しました。剥離腔下端を穿刺、NS,Normal Saline 生理食塩水約5㏄で凝血を溶解し、もみ下し吸引しました。さらに上中下3方向を溶かして吸引後、さらに押し出しました。全量排出され平坦化しました。むしろ右側は腫脹も吸収され、左側よりも小さくなりました。7日得ているので逆に再貯留は起きないと考えられます。

正面像では全量排出が判ります。斜位像でも側面像でも、血腫はスッキリと無くなりました。リフトの結果としての挙上の形態は見事で、鼻唇溝は浅くなり、患者さんもお喜びです。

術後1週間で処置後の画像です。抜糸しました。血腫除去の際の穿刺(実は#11メス,Knifeで3㎜切開)孔が赤い点で観られます。剥離範囲の皮膚への知覚神経は切れていますから、痛覚がありません。ですから穿刺や鈍針の挿入が可能です。なお1〜3ヶ月で神経は伸展して知覚は回復します。

今回は、術後1週間で血腫の排出が為されました。患者さんは「ブログに載っている他の症例より酷いのではないですか?。」と困惑されています。私は後でブログを見直したら、こめかみリフトの症例中の半分程は小さな血腫を起こしています。ただし、どの症例も翌日か翌々日、最低96時間までに処置されていて、適切に修復されています。本症例は血腫の範囲が広く程度量が多いのですが、二つの要素が考えられます。3Vectorと広い剥離範囲だから、剥離範囲の下端が長いから面状の血腫で量も多い。高血圧でも術中は降圧剤で出血は多くなかったが、実は降圧剤には血管拡張作用がある為、術後ジワジワと後出血する原因となり得る。今回は予防に為に圧迫バンドを使ってもらったが、圧力に敗けた。本症例は程度が高度となりました。

ただし、血腫は早期に排出すれば、中長期的には、形態的な合併症としての損害には繋がりません。敢えて言えば、早く処置すれば、押し出すだけか、吸引だけで治ります。1週間経つと、凝血していますから、溶解して圧出すれば、本症例の様にちゃんと平坦化します。ただ残念ですが、ダウンタイムの日数の延長となりました。さらに追言すれば、この診療法と手技は、切開リフト手術や皮弁形成術の多くの経験を経ているから出来ることです。”直美”等の医師は身に着けてません。

ここからは、術前、術中、術後、術後の近接画像を追って、詳しく説明します。仰臥位で術者の私から覧た画像です。術中画像は左側です。

術前は左右の近接画像でデザインを視ましょう。切開線は生え際。眉尻の真後ろよりも1.5㎝上から下方に5㎝要します。剥離腔は前縁は眼窩外縁から頬骨隆起へ向かい、上と中Vector用です。後縁はButtress (顔の横の支え)をJowl方向へ鼻唇溝の下端に向かいます。下Vector用です。

切開の上、皮下脂肪浅層(一層並ぶ小さい粒の皮下脂肪下)の深部で剥離しました。上左図では剥離範囲がデザインに沿っている事を筋鉤(長い板)を入れて視診し、バイポーラー電気メスで止血しました。上右図は筋鉤を皮膚上に置いて、デザイン通り広範囲かを視診しています。

上左図では、まず切開線の上端の角の皮膚を45度方向へ引いて、メジャーを当てて創縁と皮弁の距離を測ります。1㎝です。上右図はメジャーを皮膚上に当て、45度方向1㎝の線を描きました

上左図は線に沿って切開。上右図はこれを仮縫合後。

切開線の中央(上から2.5㎝)でも45度方向に引きます。ここは13㎜余裕で引けました。上右図はメジャーを皮膚上に当てて、マーキング。

マーキングを切開。仮縫い。

後方の創縁に合わせて切除幅をマーキングして、皮膚切除します。

上左図は切開した皮膚です。マーキング通りですよね。上右図は縫合終了後。真皮縫合を計17針(約5+1㎝の創の線ですから、約3㎜間隔と細かい)した時点で隙間はありませんね。

続いて皮膚縫合です。髪側の皮膚は厚く、顔側の皮膚と差がありますから、段差を無くす様に細かく丁寧に連続縫合します。

翌日の画像では血痂が少々付着しています。軟膏を塗ってWetにして血が固まらない様にします。

術後1週間で抜糸しました。傷痕(抜糸したので創では無い)に交わる糸の跡の電信柱状の線は消えます。それにしても剥離腔全面に内出血が黄色い。

今回の症例は創、剥離範囲は広く、高血圧と降圧剤内服の影響もあり血腫が大きかったのですが、1週間目に一生懸命処置して、除去出来ました。言い訳ばかりになっているかも知れませんが、私だから、出来ます。経験値と知識が”直美”とは違うからです。

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の提示です。3VectorのこめかみリフトはPRP込みで55万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。