リフト手術は剥離が肝腎です。皮膚またはSMASを剥離して、引き上げた位置で皮膚の裏面と脂肪層の面を癒着させることです。線(糸)や傷の癒合に依存しないで、顔の表面を持ち上げられます。そして癒着した面は、すぐには外れません。逆に数ヶ月後には拘縮して、より強くなる症例も多く診られます。剥離操作がリフト手術の質を担保します。
そこで糸リフトは線ですから、持続性がありません。ネット上に、線状に癒着を起こして拘縮させるという売り文句が見られますが、面状の癒着に比べれば、百分の一程度の効果と持続性しか求められません。
しかし、剥離操作による面は拘縮の程度にばらつきが診られます。例えばJowl は平坦化しても、後方にその弛みが持ち上げられて、咬筋付近が段々になったり、こめかリフトでゴルゴ線を無くしても、鼻唇溝の外側は力が届かないなんてこともあり得ます。
そこで切開リフトの合間に、糸リフトでメンテナンスしていくのも”あり”でしょう。糸リフトには、古今から幾つもの種類があります。今この版で全て紹介するのは紙面の関係上無理がありますが、分類を書きます。
まずリフトですから、支持点があるかないかです。耳の前や後ろ、こめかみ等から刺入する際に皮膚を支点にするのが定番です。逆にただ糸を入れるだけで始点がないのが、典型的には金の糸です。ただし金の糸は高いから誇れるし、金は錆びないから、永久に入れて置けるメリットはあります。格子状に入れいれば何十年経っても張りが保てますという売り文句です。ホント〜?。
次に皮膚側に引っ掛かりがあるかないかですが、一定の間隔で棘トゲがついているのが多くみられます。3Dリフトはコーン型の引っ掛かりで脂肪組織を抱えるので、私はJowl に使います。昔はただの糸を入れてループにして引っ掛けるのをみたことがありましたが、すぐ戻りました。いずれにしても引っ掛けても抜けます。ないよりマシということです。
次に吸収性と非吸収性ですが、やはり非吸収性では、生体反応があり得ます。物質としては金だけが安全です。そして上にも書いた様に、糸リフトは始点があろうがなかろうが、皮膚の裏に引っかかっていようがなかろうが、顔の皮膚は意外と重いので、後戻りは早く2年は保ちません。だから、吸収性(通常約1年)でも、非吸収性でも意味は変わらないのです。
今回は患者さんからの提案を受けて、切開リフトの合間に糸リフト,Thread liftを施行しましたが、別の意味があります。画像を見ながら説明します。
症例は43歳女性。広範囲剥離を利用した切開リフト手術をブログに載せた初期の患者さんです。他にもいろいろ提案を頂き、4年前から私を常用して下さっていました。
歯科矯正して上の5番目を抜歯したら、その部位の外側の軟部組織が余った感じ。つまりそこはJowlの上と後ろ。そもそも3年前に私が施行した広範囲剥離切開リフトの効果が全く後戻りしていないので、Jowl は弛んでいません。
今回まず、鼻唇溝の外側に向けて、こめかみの生え際、眉尻の水平点から糸を入れました。実はJowl の外側に入れたかったのですが、日にちを変えました。
正面像から視ましょう。
上左図が術前、鼻唇溝(法令線)の外側の弛みが見えます。上右図が術直後、弛みは引き上げました。
上左図は術後3日です。この日にJowlに向けてもう一本ずつ入れました。Jowl は膨らんでいませんが、その後のエラ付近が膨らんでいます。上右図はその直後。マリオネットラインからJowl、エラに懸けての下顎のラインが直線的になりました。
上左図は術後2週間です。落ち着いてきました。左頬の糸の引っ掛かりは外れてきました。でも引き上がりは保たれています。上右図は術後1ヶ月です。よく保たれていると仰ってお悦びです。
下には4方向の画像群。
こめかみからの刺入前の両側面像。
術前の両斜位像。
こめかみからの刺入直後の両側面像。左頬骨隆起部の皮下に糸が引っ掛かってしまいました。ただし鼻翼の横の弛みが減っているのは見えます。
こめかみから刺入後の両斜位像。鼻唇溝の外側は平らです。
耳前部からJowl に向けて刺入直後の両側面像。Jowl はさらに減ります。後のエラ付近も膨らみが減りました。
耳前部から刺入術後の両斜位像。咬筋部も減りました。
術後2週間での両側斜位像を観ましょう。
引き上がりは保たれています。側面像でも。
患者さんはお喜びです。
上の四葉は術後1ヶ月
上の四葉は術後3ヶ月。まだ後戻りは診られません。
院は、厚生労働省より施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ホームページの修正を行っています。
・麻酔薬にて、ごく稀にアレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは2日~1週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起きる可能性があります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、糸を挿入した部位は、笑ったり・触ったりすると違和感や痛みを感じることがありますが、2週間程度で改善してきます。・糸を挿入したところが、一時的に違和感(異物感)や引きつれ感を感じる場合があります。1~3カ月程度で徐々に改善していきます。・稀に、糸を挿入する針孔から感染する可能性があります。その場合、適切な処置を行いますのでご来院ください。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴はお控え下さい。・手術後3日間は、手術の刺入部位のお化粧はお控え下さい。
費用の説明も加えなければなりません。コグ糸は一本3万5千円+消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。