2023 . 5 . 31

前額部リフトは目的が多岐に亘り、挙げる層も様々です。眼瞼にも影響を求めたいので、切らない眼瞼下垂手術の併用でさらに効果的です。

フェイスリフトは読んで字の如く、顔を挙げる事ですが、頭蓋骨ごと挙げるわけではありません。顔に限らず体表面は、表面から皮膚、皮下脂肪、筋層、骨格の順に層を追って考えましょう。頭蓋骨は、歯の植わる歯槽骨以外は萎縮しませんし減りませんから、それより外側の層が弛みます。加齢で筋は弛緩して伸びます。弛みます。さらに加齢で外の皮膚も弛緩し伸展します。皮下脂肪層は皮膚の弛緩に伴って伸展し疎になる場合と、たるんだ部位に溜まって凸凹になる場合があります。いずれにしても皮膚皮下脂肪層か筋の弛緩と伸展に対応したら、若さを取り戻せます。

今度は顔面を上中下に分けて考えます。下顔面はJowl を引き上げたいのですが、これまでのブログにある様に耳前後からの切開からの広範囲剥離で効果を得られ、持続性も5年以上10年未満といえます。ブログに沢山載っています。中顔面はこめかみ生え際の切開からゴルゴ線までの剥離で頬前から上顎に架けて張りを持たせます。中顔面には他にMid Face Liftという、下眼瞼から真上に引き上げる手術法があり、欧米ではよく提案されますが、渉猟した論文を読んでも、効果も持続性も不足で、しかも合併症が多発し定番になり得ません。私も手術したら、下眼瞼外反の恐れを生じて肝を冷やしたことがあります。それ以来していません。こめかみリフトを調整した方がずっと効果的で安全です。これもブログに載っています。ところで顔面を上中下にどう分けるかと言えば、学術的には、上は生え際から眉下、中は眉下から鼻下、下は鼻下から頤尖(下顎先)です。古来上中下が等長が理想とされています。間違って考えている人が多いのは、不勉強な美容屋が横行していて不適切な発信を繰り返しているからです。

さて本題です。上顔面リフトは額を上に引っ張る手術です。ところが、目的は多岐に亘ります。したがって細かい手術法も使い分けます。1、眉まで挙げるか?。2、上眼瞼まで引き上げて開きやすくしたいのか?。3、皺を伸ばしたいか?。4、額の面積を変えたいのか?。さらに1’、顔面神経麻痺に対して引き上げたい症例は形成外科的手術です。切開はa,生え際W型と、b,有髪部の生え際から1〜2㎝後方があります。上記の1、2、はa,b,どちらも使えますが、3、はa,が適切です。4、もa,で生え際の上の皮膚を切除するか下の皮膚を切除するかで面積を変えます。1’、の手術は片側ですからa,は使えません。b,が使われます。

その上に剥離層が使い分けられます。基本的に眉上まで剥離します。剥離層は表から、皮膚皮下脂肪下、前頭筋下の二腫がありますが、上記1、2、はどちらでも使え、3、は皮下に限ります。4は出来れば筋も引き上げたいのですが、狭くする際は皮下でも可能です。今書いていて気が付きました。上顔面と言いながら、本当は中顔面の一部の眼瞼にも影響を与えることが出来得ます。話が違うじゃあないですかね。

今回の症例に対しては下段の説明と画像を見ましょう。

症例は55歳女性。13年前から来院されて、おでこの皺を気にされ、他医にて眉下切開と、10年前に黒目整形=切らない眼瞼下垂手術(NILT法)を受けていた。額の皺は消えないのでボトックスも打ったことがあるが、眉が挙がらなくなって目が余計に開きにくかった。

その後8年前からは私だけに罹っている。眼瞼下垂は再発傾向で、切らないで再施も奨めているが、額の少量のボトックスでも重いので一回だけで、他にヒアルロン酸注入やPRPで毎年メンテナンスしてきた。毎回の様に切らない眼瞼下垂を奨めてもきた。

前額リフトはたまにしかしていません。昔は年に一例くらいで、16年前に当院に来てからは3例だけですから、ブログにも載せていませんが、患者さんはブログで広範囲剥離リフトを視て、これなら前額リフトも効果的だと考えたそうです。所謂ブローリフトも兼ねて要望されました。

ご覧の様に、後天性前後葉性の眼瞼下垂状態で、眉を挙げて目を開くか、眉を挙げない際は結構落ちていて、つまり眉毛下垂も伴っています。斜位や側面で診ても、骨格的に眼窩骨が凸で所謂奥目なのも影響していて下垂を増長しています。確かに前額リフトで眉を挙げるのは好策でしょう。

昨年末のカルテを視ますと、「やはりLT法から10年経て落ちている。その間に前頭筋を使って眉を挙げて瞼を開いてきたから、額に皺が刻まれた。NILTも再施しましょう。前頭筋収縮を止めるためには筋に切開を入れましょうか?。ボトックスは術後に併用して一度止めれば皺がない状態で癒着するから意味が大きいし、もちろん挙げているから瞼は開きにくくならない。切開はW型で皮下剥離を眼窩上縁骨部まで。」とあります。したがって上記1、の目的が主で、2、まで効果を得たいがそこは眼瞼と併用で、3、は眼瞼下垂が原因で皺を寄せるが、刻まれているから剥がして平坦化して癒着させることで達し得ると考えました。実は目的が多岐に亘るのです。そのためには層は皮膚皮下脂肪下で、眉上まで剥離し、Orbital Retaining ligamentを剥離する手術プランです。

術直前に確認診察します。カルテには「前頭筋は切断してもすぐ瘢痕で治り、収縮できる様になる。結局皺が寄った状態で皮膚が筋に癒着します。意味がない。剥離して1週間程度は動かないから、1週間後にボトックスで止めて、動かない間(皺を寄せない間)に平らに皮膚と筋を癒着させる策。W-形成5回曲げる。NILTはライン変えないで外側は前葉が落ちているからMT(埋没法)を追加しましょう。」とあります。前額リフトと切らない眼瞼下垂手術の組み合わせです。手術法はこれで行きましょう。上記の手術プランを確認しました。

画像は術前から。

いきなり、術前画像はデザイン後となりました。ただし二葉。上左図は左図は前頭筋(眉を挙げる)を収縮していない像。目が開いていません。上右図は眉を挙げてもらった像。目は開いてもおでこの横じわが沢山です。

近接画像も同様に撮りました。シワは刻まれています。デザインですが、生え際の中心と額面の両端を決めます。両側に緩やかなM字を描く様にW (いやMだ)形成術のデザインを描きます。髪の毛の中(有髪部)に入ったり、額の皮膚(無髪部)に出たりして生え際をジグザグにしたいのですが、本症例の患者さんん生え際は後れ毛(前頭部をそういうのかは不明)の細い毛が多く、有髪部と無髪部がはっきりしたら目立ちます。

斜位像や側面像では両側の二つのM字が判ります。

下列には手術中の画像です。まずデザイン通りに切開します。続いて剥離します。層は皮膚皮下脂肪の下の前頭筋の表層との間で、範囲は画像にある点線の眉上までです。そこに骨と筋と皮膚を繋ぐ靭帯があります。

さて剥離した皮膚に5箇所、縦に割を入れて、切除量を決めます。皺が伸びて、縫合が可能な幅です。割の部を仮縫合(皮膚全層)します。

斜位像では切除幅が判ります。なお皮膚のしわは刻まれていますが、動かさなくなれば消えていきます。

局麻ですから、目を開いてもらって撮りました。眼瞼部と眉の位置も見てください。だいぶ挙がっています。この後各々割の間の皮膚を切除します。切除皮膚は両サイドが10㎜幅、Wの外から2箇所目は12㎜幅、中央で15㎜幅となりました。上右図に切除した皮膚を綺麗に並べました。

下列には術直後の画像です。尚縫合は、仮縫いを抜糸して、W(Mだってば)の角を真皮縫合し直して、各辺3針ずつ真皮縫合して、皮膚も角に皮膚結紮縫合後、各辺は皮膚連続縫合しました。

実はその後切らない眼瞼下垂手術も施行しました。いずれにしても眉の位置が挙がって、眼瞼もよく開いて、額には皺がなくなりました。創は上記の様に縫合しました。ジグザグで生え際がぼやかしています。

側面像でも斜位像でも目がぱっちりして、額に皺がなく、患者さんはお喜びです。

同時に施行した切らない眼瞼下垂手術の画像も載せます。

10年前に切らない眼瞼下垂手術=NILT法(=その後黒目整形とニックネームを付けた。)を施行しましたが、徐々に開瞼が低下してきました。先天性後葉性眼瞼下垂症に対しては、後戻りでなくインスタント手術なのです。

前額リフト後NILT法を施行しました。

術直後の近接画像で目力は入っています。

下列には、術後1週間の画像群。

各辺の連続縫合だけ抜糸しました。上右図で傷跡のW線が生え際をぼやかしています。

側面像でも斜位像でも、ツルッとした額が綺麗で、眉の位置も挙がりましたから、目を開く際におでこの前頭筋に力を入れなくても自然に開きます。眼瞼はキリッと開いています。

切らない眼瞼下垂手術の効果はパッチリです。

近接画像でもよく開いています。組み合わせ手術です。眼瞼が開きにくい際は、患者さんが不随意的に前頭筋を収縮して眉を挙げます。当然額に皺に横じわが寄り、徐々に刻まれていきます。前額リフトで額を引き上げて、眉の位置を挙げましたから、開瞼時に前頭筋収縮によって眉を引き上げる代償性(開瞼を助ける)必要がなくなりました。この状態で剥離した皮膚が、収縮しない前頭筋に癒着していけば、横ジワが造られないはずです。

ところが、生体の行動は絶対にそうなるとは限りません。前頭筋は開瞼時に代償性には、まさか収縮しないはずですが、表情を作る為には収縮し得るので、念の為ボトックスを打っておきました。

次回術後2週間での経過をお楽しみに!。まさか動かないでしょう。

見事に額はツルツルです。眼瞼もパッチリです。

側面像でも斜位像でも額にシワは見当たらないです。

眼瞼のNILT後の経過も開瞼を助けます。

遠方にも関わらず、術後1ヶ月で来院して下さいました。

前頭筋はボトックスで動かないから皺がないのですが、要はBrow Ptosis,眉毛下垂と眼瞼下垂で瞼が重いから前頭筋が収縮していたので前頭リフトで眉毛まで引き上げたら自動運動の必要がなくなったのです。このままボトックスが効いている間に収縮しない前頭筋と皮膚が癒着すれば、シワのないままくっ着くでしょう。

傷跡は、まだ赤いですが、幅はなく、白くなれば目立たなくなります。W型の切開で生え際が自然です。産毛が多く生え際が嫌いだったそうですが、スパッとして自然なW型の生え際が気に入ったそうです。

上下列の側面像でも斜位像でも、額はツルッツルです。お喜びです。

眼瞼はパッチリ開いています。

眼瞼部だけ診ても結果は見事です。

術後3ヶ月です。

僅かに眉上が動き始めました。申し訳ありませんが、今回の手術でその部分は剥離していません。難しいし危ないのです。

よく挙がっているのは確かです。

周囲にもこのシワを止めてもらう様に指示されました。よく挙がっているから眉上にボトックス多めに打っても眼瞼下垂になりません。

などと話していて、もう1箇所こめかみも挙げたい話が持ち上がりました。その際もお楽しみに!

そこで術後5ヶ月以上経ましたが、画像をいただきました。ボトックスも注射しましたから、シワはないです。でも逆に前葉性&後葉性眼瞼下垂の症例にボトックスを使うと目が重くなるのですが、前額リフトと切らない眼瞼下垂手術を併施しているから、全く困らずよく開いています。傷跡は生え際を跨いでジグザグですから目立ちません。また毛は傷跡の上下に伸びてきたので余計に目立たなくなってきたそうです。

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の説明も加えなければなりません。前額(おでこ)リフトは80万円+消費税です。こめかみリフト手術後は、上中顔面全体を載せますから、ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。