この数ヶ月、昨年末から、広範囲剥離リフトが続きます。更に遠方からの患者さんが増えています。そりゃあそうです。どの患者さんに聴いても、広範囲剥離リフトを定番としている美容形成外科医は知らないそうです。いや私も実際は、この方法を定番にしたのは数年前です。実は十数年前に宇津木先生に大阪での学会の帰りの新幹線で同道した際に「靭帯法はたーいへんだぜ。」「でも最高に持続性が高い。」「次に長持ちするのは広範囲剥離リフトだ。」「皮下でしかまともにできないが保つぜ!。」と教えてもらったのですが、当院に来てからは症例が少なく、約5年前からこのブログで当たってから、どんどん増えた次第です。この患者さんはその症例の紹介です。
手術は侵襲が強ければ効果と持続性が高く、侵襲が少なければ当然に効果は得られても、持続性は無いのです。侵襲とは、範囲と程度つまり量と質ですが、深さにも影響されます。結果としてダウンタイムは侵襲に影響されます。ダウンタイムとは読んで字の如く、参った時間ですが、主に腫脹(腫れ)と内出血、それに運動障害も程度によりますが少なからず起きます。どれもが、手術侵襲後48時間をピークとして、その後はゆっくり軽快していきます。軽快のスピードは個体差が少ないので、ピークの程度がダウンタイム終了時期に繋がります。
通常、フェイスリフト手術は侵襲が大きいでしょう。糸リフトやなんちゃってリフトでは侵襲が軽くても持続性はごく短く、なんちゃってリフトでは1ヶ月で元通りになったと患者さんからよく訴えられます。「私がしたことじゃ無いんで、そちらに言って下さい。」と言いながら「要するに剥離が必要です。」「私の広範囲皮下剥離リフトは10年単位保ちます。」と説明して何人か手術しました。
その意味で、広範囲皮下剥離リフトはお得です。効果と持続性が高い割に、ダウンタイムが短いと言えます。Jowlを目標とするなら、侵襲範囲は下顔面に限りますし、でも前まで剥離すればそこまで引き上がります。SMASは顔の前方にないので使えませんが、皮下でも前まで剥離すれば十分な効果が得られます。逆に言えばSMAS下剥離リフトでは前方まで剥離できないのでJowlは引き上げられないのです。しかも皮下剥離では侵襲が加わる組織が厚くないので腫れる組織が少ないし、皮下をSMASの層から剥離したら、その層には出血する大血管が少ないので内出血も多くないのです。ただし、耳前部からJowlまで剥離したポケットはバイポーラー電気メスでの止血が難しいのです。でも、皮膚を思いっきり引くと押さえつけますから、その圧で止血されます。
効果は直後に見えます。持続性は年単位の経過観察が済んでいる症例で判ります。3年間で後戻りがゼロに等しいです。ダウンタイムはブログに沢山提示してきましたから、患者さんは理解して手術を受けられ、中でも軽い人は2週間以内に社会復帰されます。
症例は45歳女性。1年半前の初診時からJowlの膨らみが気になっていました。遠方ですが、紹介者から教えてもらい、広範囲剥離Jowl liftの効果と持続性をご存知でした。他に口周りと眼瞼も相談されました。その後地元の他院で前頭筋にボトックスを打ったら、眉が落ちて、眼瞼前葉が被さり眼瞼が開き難くなったので、眉下切開と埋没法の手術から進めました。その際、リフト手術の部位の下顎下に皮下脂肪が多量な為、あらかじめLS,Lipo Suction=脂肪吸引が好ましいと言いました。夏にリフト手術を予定しますとのことでした。ところが、次に来院された際は口周りの手術を希望されました。その際地元で1ヶ月前に脂肪吸引を受けてきたと申告されました。私はその際半年以上後にリフトをしましょうと指示しました。
本年に入って来院され、ボトックスも予め打ってきたとの事でしたが、私は効果が足りないと判断し、追加して、いよいよ広範囲剥離Jowl Lift を予定しましょうとなりました。なお頤下二重顎は脂肪が残り、切開削徐は後日となることと頬骨隆起部の弛みはこめかみリフトを要することを説明すると、ブログを視てご存知でご理解頂いていました。一つ一つ手術していきましょう。
手術直前に確認します。頤下は後日となりますが、下顎下は耳後部から生え際方向まで切開して剥離すれば効果が得られると説明します。私が1ヶ月前に咬筋にちゃんと入れたボトックスはびっくりするほど効いて下顎角部付近はスッキリしていました。邪魔なエラ部分がない方が引き上げ効果が高いと、私と患者さんの二人で期待します。なお静脈麻酔ですが、現代の最新の薬剤は醒めが早い(15分から1時間以内)なので遠方からでも帰れます。
遠方からの患者さんですから、ダウンタイム中を診られませんが、画像を送ってもらいます。
術前の正面像。咬筋は痩せました。Jowl はマリオネットラインの横の下顎縁が膨らんでいる部分です。
術前の両側面像と斜位像。下顎縁のカーブより下に膨らんでいるのがJowlです。
手術は定番のマリオネットラインのすぐ後ろまで広範囲剥離するJowl Lift 切開はMACS,Minimum Access Cranial Suspension(最小切開で頭蓋骨(頬骨弓)に吊り上げる) Liftを使います。
今回耳垂部で25㎜、耳珠上部で18㎜、耳後部は20㎜切除して引き上げました。トリミングした皮膚が上図です。
手術直後の正面像です。腫脹は必ず生じて、顔幅は確実に大きくなってしまいます。でも、下顎縁を見るとJowl は挙がって外側に出ていません。その後の腫れが外側に突です。
両側面像と斜位像を視ても下顎縁の曲線が綺麗に弧を描き美しい。薄紫色に内出血した皮膚の範囲が剥離腔だと分かります。これが広範囲です。
翌日は診て、血腫にないこと、顔面神経はIntactであることだけ確認します。遠方なので抜糸を依頼することになっているので、紹介状を書きました。学会で知り合いの美容形成外科に向けてお願いしました。ところが何故か?、断られたそうです。私憤慨して連絡しようかとも思ったのですが、患者さんは事を荒立てないで欲しいから、近々来院されることとなりました。
術後16日と遅れましたが、抜糸しました。明日がに腫脹がかなり引いてきました。聴くと、ピーク時の35%程度になりましたとの事です。従いまして、下顎縁の曲線はより美しく卵型です。
両側面像と斜位像でも、Jowlのたるみ&下垂は観られなくなっています。内出血はありません。
切開線の傷跡(抜糸したらキズではなく傷跡の線)は下の通りです。
切開線は前から、もみあげ内に約1㎝〜耳輪の前の折れ返り線〜耳珠の後〜耳垂の前の折れ返り線〜耳垂を回って耳後ろの折れ返り線〜生え際に向けて約1.5㎝です。抜糸したばかりで、糸の跡が観られますが、すぐに白い細い線になります。折れ返り線に傷跡があるので一般人には判らなくなります。
下には術後1ヶ月の画像。来院されました。
斜位像でも側面像でも下顎のラインが綺麗です。
術後3ヶ月です。
斜位像でもJowlは消失しています。
傷跡はまだ赤いのですが、耳珠部は後に隠れていて、耳輪部は上で隠せます。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。広範囲剥離中顔面リフトは80万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。静脈麻酔代は5万円+消費税と組織糊として利用するPRPは5万円+消費税が別途要します。