それぞれの患者さんは形態と機能にバリエーションがあります。人は皆同じではありません。「そんなことは当然ですよ。」と言われそうですが、誰にでも同じ治療を施す若輩の美容医療医師が横行しています。機能を診られない医師も多くいます。さて、機能的に良好な方が生きていくのに便利です。そして形態は機能に直結します。特に眼瞼は大きく相関します。
機能と形態について他の部位から触れます。首から下、体幹は内臓を内蔵していますから、心肺機能や消化器等の機能を包む部位です。ですから体幹の形態がバランス良く整っている方が、身体機能が高いのは当然です。また四肢は運動能力に直結しますし、生活や作業にも使いますから、場合により長さや太さの形態や、筋力が機能に直結します。
首から上、顔や頭ですが、脳を容れる頭蓋は大きい方が良いとしても、脳の容積はあまり個体差がなく、勉強で鍛えたかどうかで機能は差がつきます。頭蓋が大きいと宇宙人みたいに見られてしまいます。前頭葉が大きいと人格が高いと考えられるので、細かい形態として前頭部が後退していない方が、頭が良さそうで顔立ちが綺麗と観られます。
本題というか、私たちの担当部位は顔面の形態と機能ですが、一部を議論してみましょう。顔面の機能は表情で表わす為と五感を司る器官の機能です。口は消化管の入口で味覚器官も内包しています。その面では形態とは相関しませんが、もう一つ話すための器官ですから、内面的精神性の表現には口元の印象が影響します。だから私の得意とする上口唇短縮術を代表とする手術は、人間性も変えます。例えば”鼻の下が長い”印象は”イヤラしい”のを解消できます。次に例えば鼻ですが、本来呼吸器官の入り口で、実は鼻が高い方が吸気を暖められるので、北欧人が鼻が高いのはダーウインの強者生存法則で説明されます。鼻が高いという形態は、機能的に生存に有効なのです。耳は立っていると良く聞こえるのですが、実際は横向きで両方の時間差で方向を感じるので、斜め横向きなのが機能は良好です。形態的にも立ち耳は好まれません。さて顔面輪郭ですが、いわゆるエラ張りや両側の頬骨間の幅があるのは、咬む筋肉の付着で拡大しているからです。固い食物を食べなければならない時代は、増大している人が摂食機能に有用でした。でも今や調理によりその必要はなく、結果的にむしろ栄養価も高くなりましたから、エラ張りは機能的に優勢ではありません。形態的にも、食いしん坊で強そうで怖そうに見えて、好まれません。
やっと今回の本題です。眼瞼は視界を得るという機能と形態的にパッチリしているのが明らかに相関します。例えばまぶたを開く際に上眼瞼は最低12㎜動かないと上方視できません。また、アジア人には一重瞼という変異が蔓延していて、日本人では瞼縁の位置よりも皮膚が下にある場合が、約半数は存在します。これでは視界狭小になります。
大きく分けて、まぶたの後ろの方の機能=瞼を上げる眼瞼挙筋の力と、眼窩脂肪の量と逸出を後葉性眼瞼機能と呼び、まぶたの前の成分=皮膚と眼輪筋の被さりを前葉性機能と分けて考えます。目の窓の大きさという意味で形態に直結します。それぞれに先天性と後天性の原因がありますから、四つのカテゴリーに分けて検討します。
1、先天性前葉性眼瞼下垂症とは、一重瞼の事です。約2万年前に東アジアで発生した突然変異遺伝子がアジア人に蔓延しました。瞼縁が挙がるかどうかは別にして、正面視で皮膚が瞼縁より下にある状態です。眼瞼挙筋が働いても目の窓が小さいから機能的に無駄な訳ですが、形態的には小さい目の窓になります。2、後天性前葉性眼瞼下垂症は、加齢によって前葉が進展して瞼縁を隠す様になる状況です。誰でも進行しますが、一重瞼者(先天性前葉性眼瞼下垂患者)は元々被さっているから、早期に視界不良の症状を呈します。3、先天性後葉性眼瞼下垂症とは、産まれつき眼瞼挙筋の筋力が弱い病態です。挙筋の筋力は閉瞼から上方視までの瞼縁の移動距離を測りますが、12㎜以下は異常として、程度により幾つかの手術法が使い分けられます。4、後天性後葉性眼瞼下垂症は、筋力があるのに挙筋腱膜が伸びてしまって、筋による挙上の力が伝わらなくなった状態です。加齢で起き得ますが、コンタクトレンズ、特にハードでは数年装用で原因になります。ちなみに簡便な修復法で可能で、ダウンタイムが少なく受けられます。
もとい、眼瞼下垂症はどの様なメカニズムであれ、機能的に視界不良という損失を伴いますが、形態的には目が小さいとか被さっているとか、腫れぼったいとか、細めている嫌な表情に見えるとか様々な状況を観せます。ですから眼瞼では、機能的な改善は形態的な改善と同義です。
ところで目の窓ですが、蒙古襞を説明し忘れました。目の窓の横幅が大きくないと、横方向が見えにくいです。蒙古襞は上に書いた一重瞼の突然変異遺伝子に伴って発生しました。蒙古襞とは蒙古人種、つまり東アジア人に特有の、目頭部の被さりをこの様に呼びます。実態は皮膚の短縮ですが、目頭部は下眼瞼に繋がっているので、開く際に突っ張る=拘縮を起こしていて、開瞼を阻害しています。目尻側には蒙古襞は無いので、結果的に吊り目になります。欧米人からスラントアイ,Slant eyeと揶揄され、アジア人は欧米の漫画でよく細い吊り目で描かれます。現在Slant eyeは人種差別用語とされています。
これもいつも書きますが、蒙古襞はあくまでも拘縮が本態なので、チェーン店系の非形成外科医が施行する、蒙古襞の皮膚を切り取る手術デザインは間違いです。切除法の結果はどれも、形態は不自然で、しかも機能的には拘縮は解除されません。ですから拘縮に対しては、形成外科的手技であるZ-形成術で、幾何学的に解除することが正しい方法です。本来傷跡の拘縮解除などで使う、形成外科的手技の独壇場です。いつも私がブログに載せている、机上の図が結果を証明しています。これこそ機能と形態が相関して治す部位です。
症例は53歳男性。遠方から来院と言っても、個人情報なのでどちらからかは書きません。いきなり私、「遠くからですね!、ブログを見たんですね?。」と内容も聴かずに尋ねるも、顔を見て直ちに「私のいつもの好きな手術の適応ですよね?。」と言い当てます。患者さんは奥さんも同行してきていて、「ブログ視て、これならうまく出来そうだと思いました。」と意を得た申し出を頂きます。私「手術法は・・。」と言う前に診察しなければと正気に戻って・・。
実は術前診察の為に、2回来院してくれました。1回目は全体像から・・、カルテにはいくつもの問題点が記載されていますが、割愛します。眼瞼については、前に他院で眉下切除されていますが、不足と指摘してました。ただし挙筋はまあまあ効いている。前葉は眼瞼で切除可能で、一応シミュレーションして幅4㎜と記載しています。眼裂横径27㎜:内眼角間36㎜:角膜(黒目)中心間距離63㎜で、目は離れて小さく、原因は蒙古襞が拘縮して吊り目だからです。内側の重瞼がない。4㎜のZに繋げるといつもの様に書いてあります。手術プランを提示しました。
もう一度来院され、眼瞼部の手術の予定を立てる際にも診察しました。横径小でLF12㎜と弱い。視力低下でもC.L.は止めたので後天性には進行していない。生来の状態です。フェニレフリンでよく開いた。前葉はくぼみ目というか奥目で眉骨が出ているので、眼瞼で切開が第一選択としました。眼瞼切開+LT法でラインは生来のを使い、シミュレーションで切除は3㎜としています。Zー形成術は一辺4㎜で60度と定型的です。
手術直前の診察で確認します。ラインは前に設定されている線=5㎜を使いシミュレーションの結果として、切除はやはり4㎜とします。Lateral hoodingが多い為、目頭部はZ-形成に繋げて4㎜切除出来るが、目尻の上を越えて5㎜外側まで同幅切除が必要とのデザインを確認しました。目頭形成は内眼角間を3㎜近づける、一辺4㎜60度のZ-形成術が適応と確認しました。
画像は眼瞼部だけですが、近接画像で内眼角部も説明します。
下に観る遠近二葉の術前の眼瞼部は、ご覧の通り吊り目で内側が斜めに隠れています。
近接画像で観ても、瞼縁よりも皮膚が下の前葉性眼瞼下垂症です。黒目の上にかかる皮膚が内側から外側へ向けて斜めです。蒙古襞の拘縮の結果です。
開瞼は、第一眼位で隠れる黒目の上が縦に2㎜以下が正常範囲ですから、眼瞼下垂症です。
術中のデザインも載せます。
眼瞼全体はは重瞼線を㎜に設定して、目頭の上から目尻の上まで幅㎜切除するデザインです。蒙古襞に対するZ-形成のデザインの上の辺に止まっています。近接画像で目頭部を説明します。
上が術前の開瞼時。下が術前の閉瞼時。
蒙古襞の下眼瞼に付着する部位から4㎜の縦辺、上辺と下辺はZ型に60度で4㎜です。
机上の空論では無い図。実物の右眼瞼(向かって左)で、図の左が術前のZ-形成のデザイン。右が術後です。計算上abがa’b’へ1.75倍となり、cdがc’d’へと1.75分の1となります。一辺4㎜ですと目頭の位置は1.5㎜内側に動き、蒙古襞の拘縮は和らぎ、目頭の角である三角形abdはa’c’d’へと下向きから横向きへ入れ替わります。
下に術後の近接画像を載せました。血液が付着して創の線が判りにくかったかも知れませんが、突っ張り=拘縮が解除されていて、上眼瞼の内側が挙がっているのは判ります。
ただし下向きだった目頭の角が横向きに変わったは見えます。ちなみに私も術中に、形態的にその点で判断して機能的効果を診ています。
順が入れ替わりましたが術直後の眼瞼部は開閉像を載せます。
翌日も診ました。縦横のバランスが取れて奥様もお悦びです。瞼縁は強く挙げたので波打っていますが、治りますと説明しました。本人も目頭が横を向いてお悦びでした。
術後1週間で遠方から来院されました。
近接画像では強開瞼して写って下さいました。若しかして、私が「よく開いたでしょう!?。」と何度も訊いたので気にしてポーズして下さったのですかね?。
とにかくよく開いて、前葉の被さりも丁度よく取れて、しかも内側は蒙古襞の拘縮が重度だったのが解除され、ちゃんと挙がりました。私「やはり目頭形成との組み合わせは最善の結果をもたらしますね!。」と強調しました。重瞼幅もちょうど良いと言ってくださいました。目頭が横向いて吊り目が解消して、この眼瞼の機能ならむしろ自然な形態です。
下には術後3週間で画像を送って下さいましたが、転送が遅れました。
眼瞼部画像二葉。上右図は強開瞼して下さいました。かなり開いています。
遠方なので画像を送って下さいましたが、特に目頭部を近接して下さいました。というのも左側に肥厚性瘢痕を生じたからです。上の術後画像を追ってみますと創癒合状態の良好な側ですが・・。
下には術後6週間でも画像を送って下さいましたが、転送が遅れました。
肥厚性瘢痕は軽快傾向です。6週間まで悪化しなければ早晩治ります。
下は術後2ヶ月で来院された際の画像群です。
開瞼は良好ですが、目尻側の前葉は落ちています。眼窩骨がかなり前突しているから、前葉も被っています。どうにかならないかとお願いされ、検討しました。ご覧の様に眉下切開(切除)しています。内側が取り足りないのは目頭部のかぶさりの原因となっていますが、外側は取っても二重が浅くなるだけです。こめかみリフトで引き上げたら良いのではないかと告げ、シミュレーションしたら良さそうでした。
近接画像では重瞼線は整ってきました。男性なので開瞼が欲しいところですが充分に出来ました。
引き続き目頭部を近接撮影しましたが、画像を比べると肥厚は消失して来ています。発赤はいつか必ず皮膚色に戻ります。
下には術後3ヶ月でも画像を送って下さいました。
傷跡も目立たなくなりました。
当院では、厚生労働省により施行された「医療機関ホームページガイドライン」を遵守しブログを掲載しています。
医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用は眼瞼下垂症の診断が得られれば保険診療で3割負担は約5万円(出来高請求です。)目頭形成術は角膜に掛かる程でないと保険は適用出来ません。自費で28万円+消費税。ブログ掲載を許諾されたら、20%オフとなります。