2021 . 12 . 20

実は眉下切開術に目頭形成術の併施は適切なのです。

美容医療の治療法としては、3つのカテゴリーがあります。

まず皮膚表面の治療は、美容皮膚科の分野ですが、皮膚は角質に覆われているために、薬剤の滲透は難しい訳です。

次は注入術ですが、体表面から数ミリの深さまでは入りますが、原則的に持続性のものは使用すべきでないです。昔シリコンなどの生体親和性のない物質は吸収されないからして、注入されて残存するはいいが、異物反応でカプセライズされてゴツゴツになったり、移動したりのケースが多発して根治不可能になり、美容整形やが問題視された原因の一つになりました。

美容医療において手術は昔から為されてきました。戦前は一部の耳鼻科医や眼科医が手を付けていました。戦後十仁病院を嚆矢として美容整形と標榜する医師が増え、欧米を真似て手術法が進歩しました。また、太平洋戦争後進駐軍が医師団を同道して戦災の傷病者を診療するのですが、その中に当時先端の形成外科医が沢山来て、日本の医師達にも教えました。こうして日本では美容整形と形成外科が同時に発展しました。実はそこが問題点です。

ところで本邦では現在、形成外科と美容外科の二つの標榜科目が有ります。前者は保険治療で、機能回復を図る際に形態的な配慮を加味する科目です。通常形成外科医は、大学病院や大中病院で専門的知識の勉強と技術の修練を通常は上級医に教えてもらいながら研修します。いわゆる徒弟制度です。後者は自費治療で、形態的な改良、改善を唯一の目的とする”医療”は保険を使用できないと法律にあります。ですから逆に、自費治療では言い値になり、高額になり得るために参入する医師が後を絶たないのです。ほとんどの、特にチェーン店系の美容外科医は、形成外科の研修を経ないで、卒直後か他科から移籍して美容外科クリニックで真似て、身に着けます。

形成外科のトレーニングを受けないで、美容外科医となると出来ないことがたくさんあります。私いつも言っていますが、”糸切り3年、真皮縫合6年、皮弁形成10年”を要します。他科から参入した医師は今更学ぶ機会がないのです。ですから、縫合法として真皮縫合を出来ません。医師によっては真皮縫合という言葉さえも知りません。次に皮弁形成の理論は中学の幾何学に基づきますが、実際に手術の修練を重ねないと結果が得られません。他科出身の医師は、皮弁形成術という用語さえ知らない医師が多く、”回転植皮?”とかいう訳の分からない用語を使う医師も居ます。

今回眉下切開(切除縫合)術と目頭(Z-)形成術を併施しましたが、上記の知識と技術を持たない医師はしてはいけないと考えます。眉下切開は顔の前面を切る手術ですから、傷痕を目立たなく(形成外科医が真面目に手術すれば見えなります。)するための真皮縫合が欠かせませんし、内側を上げた際に蒙古襞の拘縮を増強させないためには、目頭切開(切除)は禁忌と言え、目頭Z−形成法が唯一の適切な手術です。Z−形成法は皮弁形成術の基本的手技です。

ですから、私に罹ったのは「正解!」と豪語しておきます。形成外科と美容外科を同時に研修してきた医師は数少ないのです。日本中に約100人しか居りません。今回の治療をできる医師もそのくらいでしょうし、そもそもこの様な診察さえも出来ない医師が大多数です。ここで思い出しましたが、今回の手術の組み合わせの理論的目的と結果としての有用性を詳しく説明するつもりでしたが、紙面の関係で割愛します。ただし下段に記していく経過画像と脚注を見ていけば解るでしょう

症例は45歳女性。20年前他院で眼瞼形成術(重瞼術切開法)を受けています。当院には当初は注入術で来院。当院で唯一の非形成外科医に額ボトックス注射をしてもらった際に、眉下切開を示唆されました。その後ボトックスが切れた後に、私の症例を視て、再来されました。そうなると念入りに診察します。

聴くと、20年前に眼瞼切開術を受けています。鼻も綺麗です。1月に他院でボトックス注射を受けて、眉が逆八の字になったので、半年後は当院で注射した。そろそろ切れてきたので手術に移る案を持って来院、私に罹りました。眼瞼前葉は伸展弛緩し、後天性前葉性眼瞼下垂症です。LF15㎜で後葉性は先天性でなく、sC.L.20年でも挙筋はIntact。眉を上げる5㎜。アートメイクは眉尻まで入っています。

Z−形成に依る目頭の蒙古襞の狗縮解除をご理解されていまして、訊かれました。早速計測します。眼裂横径(二重瞼の平均値27㎜)23㎜:内眼角間(二重瞼の平均値33㎜)38㎜:角膜中心間(平均値60㎜)62㎜で目(眼球)が離れていないのに、間が遠いのは目頭の蒙古襞が被さって狗縮しているからと判明しました。眉下切開で目頭の上を引き上げると突っ張り襞が出来えますから、Z−形成に因る蒙古襞の狗縮解除の施行が適切です。計算上一辺4㎜60度のZー形成法が適切です。

画像はまず両側眼瞼部。

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手術直前に診察した際に目頭と目尻の垂直上の眉下にマーキングして、「ここからここまで5㎜取ります。」とお伝えしたので、書いたままの画像です。実際に手術室で切開線をデザインします。ここで、目頭の真上まで同じ幅の5㎜を切除すると、眉頭に沿って上に曲げなければなりませんが、目立たなくなります。そして目頭は一辺4㎜60度のZ−形成のデザインを描きました。

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切除した皮膚と皮下脂肪(ブローファット)全層の画像。切除した深部には眼輪筋が露出しています。これから3層(眼輪筋、真皮、皮膚表層)を縫合していきました。真皮縫合を密にしたのちには隙間がありません。上と下の皮膚は厚さが違うので密に合わせていきます。IMG_3736IMG_3735

すると術直後の様になります。すでに軟膏を塗布しています。開閉で目頭の創の見方が違います。

 

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近接画像で目頭を見ましょう。術前は蒙古襞が斜めたて方向に突っ張っています。

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デザインは、まず蒙古襞が下眼瞼に付着している点から蒙古襞の稜線に4㎜の線を描き、上点から60度内側に4㎜、下点から60度外側に4㎜。

DSC_0077いつもの紙上のシミュレーション図。上の右眼瞼に描いたデザインが紙上の左側の図で、下の術直後の右眼瞼の創の線が紙上の右側の図です。

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術直後のこの時点では、縫合糸が引っ張っていて、襞がみられます。でも、目頭形成術を併用しないともっと襞が目立つ症例です。

術後1週間で抜糸しました。

IMG_3969優しい目元。内出血は少々ありましたが、吸収中です。黄色くなればその後1週間で消えます。腫脹は通常度です。

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なんか露光が低くてよく判りませんが、目頭の差す方向が斜め下向きから横向きになって、目の窓がアーモンド型になり、綺麗です。重瞼が丁度よく予定通りに拡がって窪み目も改善しています。

IMG_3968画像で額まで診ましょう。開瞼良好ですから眉を挙げません。蒙古襞の上の襞は解消中です。ただし目頭部は肥厚性瘢痕の可能性が1/3程度あります。念の為リザベン内服を開始しました。

次週もう一度画像を頂きます。さらに良い画像をお届けできるでしょう。

術後3週間で診ます。目頭形成術後の肥厚性瘢痕の有無を診ていきたいからです。

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遠近画像を診ても、前頭筋の収縮はなく、明るい目元です。

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近接画像で診ると目頭の創跡に肥厚性瘢痕は極軽度です。この程度の経過だとこれ以上悪化しないで、約3か月で解消するでしょう。目頭の下の図で言えばd’部の膨らみはdog earです。日数で縮小します。発赤は軽く肥厚も軽度です。突っ張り感は自覚症状としては軽度で、目頭の向きは横向きでいい形です。患者さんは満足されています。パッチリ開いています。キラキラしています。

ところで肥厚性瘢痕とは、ケロイドもどきです。

ケロイドとは、原因が無いか軽微な創跡が、肥厚し発赤し硬く狗縮する状態です。コラーゲンの過剰生成と、毛細血管拡張が主体です。部位は前胸部か肩か肩甲部、および稀に鼠蹊部に限定されます。ケロイド体質とは原因不明のケロイドが起きる体質で、ほとんどの患者さんは一生続きます。なお一般人がケロイドと称する、白くツルッとした面や、帯状の傷跡はケロイドではありません。ケロイドや肥厚性瘢痕や、縫合が稚拙な結果に幅の出来た創跡が成熟した瘢痕です。

肥厚性瘢痕は、ケロイドに似た病態なので私は”ケロイドもどき”と称しています。外傷や手術創等の原因部に創傷治癒過程で起きる症例があります。やはりケロイド体質の人が起き易いのですが、っけロイド好発部位以外ではいつかは成熟して、平坦化し、発赤は軽度となり、狗縮は軽度となります。術後3週間が起き得る時期で、術後6週間までが増量し得る時期です。だから目頭形成術後は3週間と6週間で診ていき、場合によっては治癒促進の為の治療を加えます。

ケロイド肥厚性瘢痕の相違は、1、ケロイドは一生もので、対して肥厚性瘢痕はいつか治ります。でもその鑑別は原因と体質に影響されますし、結果論の場合もあります。2、ケロイドは一生ものなだけでなく、放置すると拡大します。対して肥厚性瘢痕は必ず軟らいで成熟していきます。3、ケロイドは緊満していくと症状が強くなり、居ても立ってもいられなくなります。狗縮も強くなります。何れにしてもステロイド注射が第一選択で、繰り返す症例が多いです。肥厚性瘢痕では上記の悪化する時期にステロイド注射すれば増量が止まり成熟していきます。予防的にリザベンを内服する事で防げる事も多いのです。

この様な診断はやはり、形成外科医の専門分野です。他科の医師は、鑑別診断法も知らないどころか、二つの用語さえ知らない者も多いのです。美容形成外科医は、体表を手術する機会が多いので、知らなければ対応出来ないでしょ?!。目頭形成だけでなく、眉下切開だって縫合の質次第で肥厚性瘢痕に成り得ます。流石に形成外科出身の医師が手術した眉下切開や上白唇短縮術では、肥厚性瘢痕は稀ですが、非形成外科医の美容整形屋の手術後患者では結構診ます。皆さんもちゃんと出自を知って手術を受けましょう。本症例の患者さんはよく理解されていました。ですから結果は良好で満足されています。ただしまだまだ完成ではありません。今後のブログ提示をお楽しみに!

術後6週間で診ました。

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目頭の肥厚性瘢痕の経過は6週間までに悪化しなければ改善します。

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近接画像で診ると、横V字の下の辺が発赤し、わずかに肥厚しています。自覚的に拘縮感は無いそうですが、硬い傷跡の線です。内服で改善します。それにしても形態は良好です。」

早いもので術後3ヶ月です。

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正面像で遠近二葉。近景で目を見開いて下さいました。でも眉をほとんど挙げません。優しい表情です。また蒙古襞の拘縮が無いので、眉を挙げても(眉下で引き上げても)目頭は下眼瞼に繋がっていてもひも状の襞ができません。やはり患者さんの選択で作戦成功でした。

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肥厚性瘢痕は診られません。眉毛は薄く少ないので、描いていますが、アートメイクを予定したいそうです。その後も見せていただけたら嬉しいです。

 

当院では、一昨年に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」を遵守しブログを掲載しています。

医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。

施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用は、眼瞼下垂症の診断が得られれば保険診療で、3割負担は約5万円(出来高請求)です。目頭形成術は角膜が隠れる程の重症でないと、保険は適用出来ません。自費で28万円+消費税。こちらはブログ掲載の承諾で20%offとなります。