2024 . 7 . 25

やはりリフト手術は部位を分けて、剥離腔も変えて、特にこめかみリフトは何度でも可能です。

GW,Golden Weekだっていうのに、いやGWだから、手術がひっきりなしです。美容医療に於いては、休みの日に取り組む患者さんが多いからです。実は本症例の患者さんは、昨年のGWにもこめかみリフトを受けました。例年行事となってます。

一般的に医療機関は、診療時間を申告します。診察時間つまり日常的に対応する日時は、開院時または変更したら適時、保健所に届けなければなりません。なお医師には応召義務というのがあって、必要時には常時対応しなければならないのです。ただし通常病院(入院20床以上)には当直医が義務付けられていますから対応しますが、クリニック(医院または診療所)では診療時間以外には医療従事者が常駐しなくて良いので無理です。ところで、診療時間の届け出の際には地域の医師会が関与します。競争防止の為に、診療時間を横並びにする為で、通常休日には診療時間を届けない様要求されます。その時間は逆に救急病院に対応させます。ちなみに病院も診療時間を決めていますが、診療時間外の診療には、保険点数が加算されます。そこでご存知かと思いますが、保険点数とは何かを説明します。医療機関が医療内容に応じて請求する額の10分の1が点数です。多くは10分の3が患者負担で、10分の7は保険基金から振り込まれます。

話が飛びました。美容医療機関のうち、形成外科を唯一標榜して、保険医療を大部分としている医院(常時の入院施設がないかまたは20床以下⦅正しくは診療所⦆)では、保健所と医師会の指導で、休日を診療時間外にするクリニックがほとんどです。ですが、自由診療を主とする、美容外科等の美容医療のクリニック(これも正しくは診療所)は医師会に加入していないことが多いので、休日の診療を保健所に届けていることが多いのです。ちなみに当院では日曜は診療していませんが、国民の休日は基本的に休みません。だからゴールデンウィークも診療と手術に邁進しています。

毎回書いて来ましたが、美容医療のクリニックは自費診療が主ですから、やればやるだけビジネス的になっていきます。金儲け主義という言葉は古いかも知れませんが、資本主義では資本投下よりも余剰金を得ないと経営できないので、原則的に稼ぐ(儲けるとは違う)ことが必要です。ただ、投下する資本の大半が広告費用であるチェーン店はビジネスに特化していきます。

何しろ売り上げの半分以上投下しています。その分売り上げを増やさなければ採算が合わない訳で、二つの方法を使い分けます。一つは自由価格ですから倍の料金にするか、またはトッピング料金で増やすボッタクリ作戦です。この方法に引っかかった患者さんの話は、よく聞き及びます。もう一つは、手術も施術も価格は相場または安売りして、標準的な手術時間の半分で済まして倍量の手術等をこなすことを強制するのです。実際チェーン店系のS.では、同じ手術を私が通常する手術時間の半分の時間で手術され、悲惨な結果となり私に訴えてきた患者さんが多数来院されました。

美容医療でも、エステでも、美容師等でも、人が施術行為する仕事は多種あります。その場合行為の質が結果を担保するので、術者の技術と知識に寄与します。逆に行為の量は術者の体力を消耗させ、技と脳が落ちるので、じっくりと時間を掛け過ぎてもいけないし、次々と多くのの施術は避けるべきです。特に、美容医療は医療ですから、現在の医学的水準に基づいた診療が為されなければなりません。医学的見地は学会がコンセンサスを確立しますが、現状ではJSAPSしか信頼出来ないのが実情です。診療は診察と治療の組み合わせですから、診察も重要ですが、通常の診療では、診療費は定額で”診ました”程度で済ましてしまいがちです。また手術は準備が必要です。術中に手間取っていては無駄に体力を消耗してしまいます。その上でとにかく、手術は時間を充分に用意して、丁寧に必要な行為を遂行しなければ、特に中長期的結果は得られません。

私が主に取り扱う手術は、切開→剥離→縫合の手順で進みます。リフト手術はほとんどがこの手順です。黒子などの腫瘍切除もです。口唇短縮術等では、筋に処理も加わります。眼瞼下垂症手術はそれに挙筋前転または短縮および重瞼固定が加わります。鼻尖増高術では移植が加わります。隆鼻術や頤前突にはプロテーシス挿入が適切です。他にも色々ありますが、基本的に切って、剥がして、縫う行為は必要です。

その際の切開は、デザインが重要で、層は多様ですが、その通り丁寧に切ります。基本的に美容形成外科医はイギリス製(形成外科の発祥地であるのは前に紹介しました)の#15Knife(メスはオランダ語)という専用の細い物を使います。キレ(切れ)が良いんですよ。

剥離は層が重要で、左手指で皮膚面から触れて感じながら進めます。最近のリフト手術では私は広範囲剥離が定番ですから、長い道具を少しずつ丁寧に進めます。剥離は層が重要で、アシスタントの看護師に引っ張ってもらい緊張を掛けながら、私は左手指で皮膚面から触れて、剥離層を感じながら進めます。その際支持靭帯が引っ掛かったら、切ります。また移植等の手術では、それぞれに剥離層を使い分けて、ポケットを造ります。

さて形態が造れたら縫合ですが、何層も架けます。ここが大事です。毎回書きますが、皮下の真皮縫合は形成外科医の独壇場です。チェーン店の非形成外科医には不可能な手技です。だから彼らは切らないのです。真皮縫合を丁寧に細かく掛けて、その直後に隙間がない様にしなければなりません。創は、皮膚縫合後は抜糸までに皮膚表面は癒合していますが、真皮層が強固に癒合するには数週間を要します。したがって真皮縫合をしないと、抜糸後数週間で傷跡の線の幅が拡がっていきます。逆に真皮縫合を丁寧にすれば拡がりません。ビジネス的チェーン店系での美容外科手術に於いては、金に成らない術後経過観察をおろそかにし勝ちですから、術後数週間で傷跡が拡がっても診ません。勢い怒りながら他院を訪れる患者さんが増えるのです。当院には形成外科医しか在籍しませんから、傷跡の問題に精通していますので、その件の患者さんがちょくちょく来院します。

なんだか話が飛び回りました。本症例の手術に対する説明は画像に加えます。この手術の肝は、剥離腔が多様なのと、真皮縫合で引き上げる点です。切開は前回と同じですから、逆に手間が掛かるののですが、慣れています。経過は術後1週間から3ヶ月まで観ましょう。上に書いた問題点を起こさない様にして、効果を魅せます。

症例は46歳女性。これまで何度も、海を越えて遠方から来院されて来ました。ある患者さんのSNSを覧ての初診でしたが、私を頼り定期的に美容治療を施行して来ました。これまでの手術経過を追っていくと紙面が足りなくなるので、割愛します。

関係部だけ経過を追います。昨年末のカルテから。Jowl Liftから1年経て、Jowl は見えません。半年前に45度方向のこめかみリフトを施行したのですが、頬骨隆起部からMalar部が若干のたるみが残り、Mid face liftも適応かと診た。でもButtress (頬骨弓下の中顔面)の弛みも見える。どちらを優先するかですが、下地作りを先行した方が形態的変化が解り易いと考えて、こめかみから下へ剥離するこめかみリフトの2回目になりました。

本年に入っての診察ではMid face liftを先行する話も上がっています。半月後にはやはりこめかみリフトの2回目を優先したい希望を述べられました。確か他の患者さんのブログに載せたのを観たからです。

さらに1ヶ月後には、予定を立てることになりました。こめかみリフトをButtress方向へ剥離して挙げる手術です。こめかみ生え際の切開から、上方向へ引き上げると皮膚をずらしていくことになるので、Dog Earを生じるのは必発となりますから、卍型切開が必要となることを承諾されました。

その1ヶ月後に手術を予定しました。手術当日の診察ではButtressまで剥離することを確認しました。画像に載っています。

画像は経時的(時間を追って)に診ていきます。右側の近接画像で手術手順を説明します。

正面像の術前とデザイン後。前からではデザインは見えません。

術前の、上二葉が側面像、下二葉が斜位像。私も患者さんも術後を観たので、術前と術後の弛み感の差が解ってしまっています。

なので術中の画像へ参ります。まずは両者斜位像でデザイン画。

ご覧の様に、こめかみ生え際に総長約4㎝の卍型の切開線です。点線で囲んだ剥離範囲は切開から下向きで、いちじく?型です。頬骨弓を越えてJowlに向けて引き上げます。

ここから、仰臥位の右側面像で手術中の画像を観ながら説明します。

上左図はデザイン後。上右図は切開後に入口の前の皮膚だけ剥離後。この後アシスタントにフックで引かせながら、私が剥離用の鈍剪刀(手術様の鋏)で、皮膚(真皮)直下に皮下脂肪を一層(一粒ずつ細かい脂肪層)着けて剥離していきます。左手指で皮膚面に触れて剪刀を感じて、厚さを感じながら層を一定にしています。

上左図は点線の範囲を剥離した後に、筋鉤を入れて撮りました。点線で描いた剥離腔の先端まで届いています。さて皮膚で引き上げます。アシスタントに頭皮を前に押させて切除幅を測ってから、上右図の様に、切開線の中央で16㎜の割を入れて仮縫い(Key Suture)しました。

余った皮膚を創縁に沿う様にトリミングしました。上左図が切除皮膚で、上右図は切除した後。

上左図は右側面図です。上右図は左側面像です。真皮縫合後に皮膚連続縫合しました。真皮縫合を13針(総長4㎝に約3㎜間隔も!)掛けた時点で隙間が無かったのです。この手術では真皮縫合で引き上げて支えています。前の皮膚を上に引き上げたのでずれている為、卍型切開として、Dog Earを取っています。

術直後の正面像ですが、当然に腫脹して、目尻まで横に引っ張られています。頬も腫れて締まっていません。

術直後の、上二葉が側面像と下二葉が斜位像。剥離腔には内出血が露呈していますが血腫(ポケット内に血が貯まること)はありません。

曜日の都合で術後2日に診ました。

術後は二日間近傍に宿泊されました。48時間で診ますと、上図のごとくダウンタイムのピークのはずが、あまり腫れていませんでした。この後海を越えて家に戻るのですが、これなら困らないと言って下さいました。ですから、画像は正面像だけですが、全顔も載せました。「創は髪で隠せます。」普通にヘアーを降してOKです。「これなら飛行機にも乗れます。」と言ってお喜びでした。

術後1週間で抜糸時の正面像。腫脹が軽快して来て、頬がスルンっと締まったのが見えます。中下顔面全体が引き締まりました

術後1週間の、上二葉が側面像と下二葉が斜位像。内出血は術後1週間で黄色くなります。その後1週間で吸収されます。

なんとも締まった中下顔面で、Jowl も消失しています。患者さんは自分の顔を見て大喜びでした。

術後2週間です。Jowl がなくなりました。画像は目隠ししていますから見えないのですが、目尻も挙がってお喜びでした。

術後2週間の両側面像と両側斜位像。下顎縁の綺麗なカーブを造り上げました。

術後1ヶ月でメールを下さったはずですが見つかりません。下には術後3ヶ月の画像群。

よく挙がったままで後戻りは見られません。

側面像でも頬がスッキリ!。

傷跡はまだ赤く、ドッグイヤーもありますが、消えていきます。

頬から下顎縁までスッキリしました。

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

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