2024 . 7 . 26

こめかみリフトの複数回でJowl方向を挙げるのが流行っています。組み合わせをブログに載せたからですかね?。

昨今TVCMやSNSで、リフト手術と称した広告が横行しています。あくまでもビジネスで、要するにコマーシャリズムです。非形成外科医の経営するチェーン店は、資金力があるから、政治献金に勤しみ、この10年間で医療広告内容の規制が緩和されました。結果的にやはり、あるべきでない間違った方向へ向かって来てしまいました。

特にTVCMが目に着きます。S.やT.が沢山流していますね。私も昔CMを打っていたことがあります。銀座美容外科では、全くもって医療法で規制される名刺広告とイメージ画だけでした。それが今や、間違った売り文句で、嘘の医療内容が流れています。T.の気持ち悪いイメージ広告も横行しています。ちなみに、ゴールデンタイムの15秒スポットCMは、未だに一本100万円が相場です。彼らは1日30本としても月に1000本近くですから、10億円単位は費やしている計算です。売上の半分近いと斯界では言われています。

逆にリフト手術は、ある程度年配の患者さんが受ける訳ですから、SNSを念入りに視ている人はそんなにいらっしゃいません。大体において、インスタグラムやフェイスブックは画像だけで、手術内容の説明は端折っているから不安だし、YouTubeは動画で長いし、手術内容が載っていると視るのが疲れるし怖いし、だからって為になる訳ではない。

私はブログしか使いません。何故ならこの様に、画像を経時的に追って載せられるし、手術内容の詳しい説明や、よもやま話、斯界の裏話や美容医療に対する概念まで、様々な話題を書けるからです。皆さん読むのが面倒と言いながら、読み飛ばしてくれるから、部分的にでも良いから私の考えや手術の経過が伝わるのです。ブログのこの版でもご覧になれる様に、画像だけ視ても理解出来るのですが、内容の説明は細かく、また時間があれば、医学用語を読者に理解できる様に、噛み砕いて書き足しています。

その様な訳で、コメコミリフトの複数回手術のご紹介を致します。その前にフェイスリフト,Face Liftとは読んで字の如く顔を持ち上げる手術です。顔と言っても全部ではなく、軟部組織です。表層の皮膚、皮下脂肪、表情筋が軟部組織です。深部組織の骨格は加齢変化が少なく、あえて言えば歯牙が弱るから、上下顎が痩せる程度です。顔の部品の位置はほとんど変わりません。ですが軟部組織は、表情筋は弱り、その表層の皮下組織(脂肪層)は減ったり痩せたり疎になったりして、張りがなくなります。表を包む皮膚は伸展し、面積が増えて引き延ばされるから、密度が減り薄くなります。そして日常生活で顔を見せるのは座位や立位ですから、重力で下がります。上に書いた様に顔の部品は骨に埋まっていて、また周囲に骨と皮下組織を繋いでぶら下げている支持靭帯があります。でも支持靭帯も伸びます。つまり、顔は全部落ちるのでなく部分的に弛みます。

ですから私は、フェイスリフト手術は部位ごとに分けて、しかも皮下剥離して伸びた支持靭帯を骨や筋から外し、挙げた位置で剥離した皮膚を癒着固定させることで効果を得て来ました。そして皮下組織は皮膚で包み挙げて持ち上げられます。筋もです。

主に三つの部位に分けて挙げて来ました。上は前額部で眼窩の上の支持靭帯を外して、頭皮に向かって引き上げられます。これまで何回か魅せました。今回は割愛します。下はJowl Lift です。Jowlは一般用語で、単純訳は垂れ顎です。口の横のマリオネットラインの外側の下顎縁には支持靭帯があり、その後ろの軟部組織が垂れて、のし掛かって来ます。耳介の前後からマリオネットラインの後ろまで皮下剥離して、引き上げるのは効果的です。

今日のお題の中顔面は、こめかみ生え際から、斜め下方向に剥離して、皮膚を引き上げます。ゴルゴ線(Nasojugal Line、鼻頬溝)の外側まで剥離すると、やはりそこには緩んだ支持靭帯があり頬の軟部組織が斜め下へのし掛かっています。その内側にゴルゴ線ができます。この靭帯を外して引き上げ、皮膚を引き上げるとゴルゴ線が消えます。

そしてある時ある患者さんから、「こめかみから下方向に剥離することも出来ないですか?。」と訊かれました。Jowl Liftを施行していない患者さんでした。私「ウーん!。」と唸り考えて、「Lateral Buttressだ!。」と思い浮かびました。Malar boneとは、正面視での頬骨と上顎骨のコンプレックス(一体化した骨の塊)で逆三角形の部分です。下眼窩縁を底辺として、鼻背が内側、外側は顔が後に曲がるキワで囲まれる三角です。その外側には側方から見て、頬骨弓から下には、触れると骨が奥深くにありますよね。この骨は上顔面と口を繋ぐ壁でButtressと呼びます。辞書を引くと、建築用語で[控え壁]とあります。その通り骨は控えていて、その外側に表情筋群と皮下脂肪がたっぷりあります。”これは・・” だから”軟部組織が弛み易い訳だ!”と両手を打ちました。そして、”だから皮下広範囲剥離して皮膚で引き上げたら、軟部組織が全部持ち上げられるのではないだろうか?。” ”もしかしたらJowlまで力が働くんじゃないか?” と思い描きました。やってみたら確かに効果的でした。

毎回書きますが、患者さんに依っては「ならば、いっぺんにやってもらえないの?。」と言われそうです。でも私「上から下まで剥離したら、ダウンタイムがすごいです。全部皮剥がしすることになるから!。」「だからと言って、剥離ゼロまたはちょっとでは意味がないし、後戻り必発です。」「いつも言う様に糸リフトはもちろん戻ります。S.で【なんちゃってリフト】を受けて、1ヶ月で元通りになった患者さんが、当院に頻繁に来院されます。」言い訳になるかも知れませんが、あくまでも広範囲剥離するリフト手術は部位を分けて、場合によっては複数回でさせてもらう方が結果が良好です。今回は2回目のこめかみリフトですが、3回に分けた患者さんも居ます。

症例は64歳に見えない女性。元々明るいキャラクターの南国顔で、いくつかの手術でさらに若々しく、明るさを造り上げて来ました。ただしJowl lift後軽度の血腫が起きて、Jowlに弛み感が残ったので残念感を訴えました。ブログに載っていた、こめかみリフトから下へ剥離して上向きに挙げれば、Jowlにも効果が働くか訊かれました。用手的にシミュレーションして、鏡で見てもらうと「じゃあお願いしようかな。」と一つ返事で頼まれました。

手術当日に診察します。Buttressまで剥離して、上方向に挙げると皮膚をずらしていくのでDog Earを生じます。生え際から前に曲げた切開が加わります。とお願いすると「だってこれまでの先生の傷跡はどれも見えなくなるから、かまわないわ。形が大事だしね。」と快諾されました。

画像は各方向を経時的に載せます。

正面像の上左図が術前、上右図が術直後。

翌日診ると腫脹は直後よりも軽減していて、内出血も露見していません。触診上血腫も生じていません。血腫は96時間まであり得ることを念を押して、帰りました。

術後1週間で抜糸の為に来院されました。血腫は認めません。Jowlも診られなくなりました。上右図は術後1ヶ月半。視られるように、両側の剥離腔に瘢痕があります。

術後3ヶ月で完成を見ましょう。満足されています。

上には術前の両側面像。横から観るとJowlが見えます。

上にはデザイン後。切開はこめかみの生え際に、眉尻の後から約3㎝で、上端は前に曲げて上方に挙げた分切除します。点線で囲んだ剥離範囲はほぼ真下方向でJowlに向かっています。

上には両側斜位像です。Jowlは膨らんでいます。

下からは初めての画角。顔面を下に向けて、たるみを見せて下さいました。

上左図は術前、上右図は術後1週間。Jowlの膨隆の量に差が観られます。Buttressの横への張り出しまで減っています。さらにMalarも!、挙がっています。

両側斜位でも下向いて撮りました。ちなみにこの撮影法は、患者さんが提案して下さいました。さすが!、可愛い美容女子は知っています。上二葉が術前、下二葉が術後1週間。下向くと、違いがよく判りますね。ただしまだ術後1週間では腫れています。今後も載せたいと思います。

下二列は術後1ヶ月半の斜位像と側面像。

剥離腔の先端部に硬結が診られます。現時点ではコラーゲンタイプⅢであると説明して、ケナコルトで軟化を図ります。

白い部分がケナコルトを注射した部分です。

そして、その後の経過を見せてくださる為に、画像を送って下さいました。なんとも優しい患者さんですね。

しかも日時まで添えて下さいました。徐々に減っています。

注射後2週間で硬結は見えなくなり。3週間後には露光が多いためか光っています。

ケナコルトが効いて瘢痕性の硬結は消失しました。

今回も顔面を下向けて見せてくださいました。

下向いても垂れ下がらないのを証明してくださいました。ありがとうございます。

下からは左側面の術中画像。仰臥位です。

上左図は、まずはデザイン後。上右図は切開後。短いL字型です。

上左図は剥離後に筋鉤を当てています。長さは約6㎝あり、上右図の様に奥まで入ります。

上左図は筋鉤で持ち上げて剥離腔を覗いた図。持ち上げているのは皮膚と皮下脂肪一層。上右図はいよいよ皮膚切除のデザイン。メジャーを当てて皮膚を引きながら決めます。1.5㎝でした。

メジャーを皮膚面に当てて1.5㎝の点に印。上右図はそこまでカットを入れた後

上左図の様にその点を仮縫いし、上右図の様に切除デザインを描きます。

デザインの通りに皮膚を切除しました。上右図の様に切除したらまだ隙間があります。

その後上左図の如く隙間なく二層縫合しました。上右図は同様に左も切除縫合後。

術後1週間の抜糸後の傷跡。一部の創縁治癒が遷延していますが皮膚は癒合しています。

術後1ヶ月半では傷跡はまだ赤いですが目立たなくなってきました。お出掛けに困らないそうです。実は遠方から来院されると帰りに”銀ブラ”するそうです。

術後3ヶ月で傷跡も気にならない色になりました。

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の提示です。こめかみリフトは40万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。