昨今TVCMでも電車内広告でも、インターネット内のSNS等の広告(現在HP.もYouTubeもインスタグラムも医療広告”宣伝”と見做されるがブログは違う)でも、リフト手術が載っています。広告宣伝とは誘引を目論むものですから、テキトーな内容が横行しています。何がテキトーかというと、説明書きが細かくて読めない。または画像だけだったり、関係ない画像だけだったり、画像を加工してあったりしている広告が横行しているのです。例えば糸リフトは必ずすぐ後戻りするのに、その説明がない。それどころか、それを見てクリニックを訪れて、カウンセラー(本来診察とは、カウンセリングではなく、コンサルテーション)と称する非医療者に薦められて手術を受けたら、すぐ効果が無くなったと訴える患者さんが、ちょくちょく私を訪れます。
説明というなら、手術法は多様なのに、定型的な副作用と合併症と、最後に料金だけしか説明しないで、一つの方法だけを一方的に薦める診察(もはや診察とは言えないかも知れない)しか出来ない美容外科医師やスタッフが多いから、患者さんは思った様な結果が得られなくて、不満だらけになることが多いのです。
愚痴になってしまいましたが、私は37年間の美容形成外科医師人生、いや美容整形屋である父の長男としての65年間を、美容医療に懸けてきました。昭和51年に形成外科、私が大学に入った昭和53年に美容外科が標榜科目に認定されるまでは、美容医療は医療として認知されていませんでした。美容整形屋は金儲け主義の不真面目で、医師の風上にも置けない輩と見られていました。私は小学生時(学習院初等科)に友人から「お前のお父さんはやくざいし『薬剤師ではなくヤクザ医師』だ。」と云われたのを、今でも覚えています。昔は確かに、まともでなかったかも知れません。ところで、今世紀に入って美容医療が隆盛したと思っている国民が多いのですが、それはコマーシャリズムに乗ったビジネスが隆盛したからです。結局は、これを持って真面目な医療と言えるでしょうか?。上に書いた様に医療としてなら、きちんと手順を取って診療すべきなのに、またもやいい加減な美容医療医師が増えてきた様に見られます。
もとい、では説明します。リフト手術には多様な方法があると申し上げましたが、三つの要素があります。1:切開線、2:剥離腔、3:剥離範囲です。
1:切開線は耳介の前後からこめかみ、場合によって前額部(どちらの髪内か生え際)から選ばれます。全長切れば顔面全体を挙げられますが、当然に侵襲が増えてダウンタイムが長くなります。かなりの差があります。もちろん手術時間にも大いに影響します。全長だと8時間とか懸かります。局所麻酔の量にも限界(極量を超えると局麻中毒を起こします)があります。ですから私は耳介前後でのJowl Liftか、こめかみ生え際からのMalar Liftを定番としてきました。部位を分けて行う方が、ダウンタイムが概ね1〜2週間と短くて、患者さんも受けやすいのです。もちろん料金も違います。ちなみにJowl LiftはMACS Lift切開を使いますが、Minimal Access Cranial Suspensionの略で、耳介前後の切開のことです。
2:剥離腔は表面から、皮下、SMAS下、骨膜下があります。皮下とは、皮膚のすぐ裏に皮下脂肪層を一層だけ着けて(皮下毛細血管はこの層間)剥離します。要は皮膚の張りが欲しいのでよく挙ります。1974年にSMASの解剖と理論が発表されて、多用されました。私も沢山手術しました。ですが、その後USAの学会で中長期的経過が徐々に発表されて、皮下剥離と効果が変わらないと分かってきました。また、SMASの下には顔面神経が走っていますから、解剖をよく知らない非形成外科の美容整形屋がやっちゃって傷めたら困ります。父はよくやっちゃっていました。チェーン店でもよく起こすトラブルでしたが、さすがに最近は怖がってしなくなりました。骨膜下リフトは、今世紀に入って有名なメキシコの美容外科医であるOskar Ramirezが発表しましたが、安全性に問題があり、ダウンタイムが大きすぎて本邦では行われません。
3:剥離範囲は剥離層とも関係します。どの層にしても、剥離した表層を引き上げて、切り取って縫合して固定して、表層を剥離下組織に引き上げた位置で癒着させると引き上げが保てます。簡単に言えば位置を変えて固定させる訳です。ですから、剥離範囲が引き上げたい組織の量を決めます。なのに、皮下剥離ではさまざまな範囲が使われます。S.等のチェーン店で行われる”なんちゃってリフト”は剥離幅ゼロに等しく、1ヶ月で戻るそうです。患者さんがよく「だまされた。」と感嘆して来院されます。私はJowl Liftではマリオネットラインの外側まで、こめかみリフトではMalar Prominense (ゴルゴ線の外側)まで剥離して、顔を小さくする効果を5〜10年保ってきました。ちなみにSMAS下剥離では、顔面の前方ではSMASが弱く、広い剥離はむしろ効果を減弱させます。私はその意味でも、最近はSMAS法は頻用しません。ただし、皮下剥離したらSMASが下に見えるので、縫(い)縮(め)を加えて、挙上の補助とします。
いろいろの組み合わせを説明しました。これで私が広範囲皮下剥離リフトを頻用してきた理由は、読者の皆さんはもうお分かりでしょう。手間と時間が適度に懸かりますが、局所麻酔でも静脈麻酔でも可能です。それでいて効果は高く、後戻りも極く少なく、持続性が高いからです。最近ではこめかみから下向きに、更に広範囲というか長範囲に剥離して、Jowlにも効果を魅せていますが、やはり耳介前後からのJowl Liftには敵いません。出来ればMACS Liftの切開からのJowl Liftを第一選択と考えます。
症例は45歳女性。これまで何回もブログに登場して頂いた素敵な女性の紹介です。その女性もこの手術をさせて頂きました。
同行された訳ではありませんが、いきなりリフト手術を希望されました。早速診察します。その前に美容医療の既往歴を尋ねます。訊くと、S.で糸リフトを受けたことがあります。2月に脂肪吸引も受けたら、皮膚が弛んだそうです。そこで私は、Jowlを触れてみます。「そうですね!。中身減らしたら表の皮が余った典型的な合併症です。」下の画像でご覧になれる様に、皮膚が余ってしわも出来ています。
直ちにJowl Liftを示唆します。MACS Liftの切開からマリオネットラインの外側まで、広範囲に皮下を剥離して切開部で皮膚を切除して耳介にむけて引き上げます。なお静脈麻酔を希望されました。
画像は各方向を経時的に載せます。
上左図は術前、上右図は術直後です。直後は麻酔の分量と腫脹で膨隆しています。顔面神経に局所麻酔が効いていて、口角が下がっているから余計に弛んで見えます。
上左図は術後1週間です。意外と早く腫脹が軽減してきました。ピークは典型的に48時間だったそうです。聴いたらその際に比べて、半分以下になっている様です。上右図は術後2週間で全抜糸した後です。ご覧の様に、腫脹が軽快して、下顎縁が綺麗に見えてきて、頬の変な窪みも平坦化しています。患者さんは笑顔でお喜びです。
術後1ヶ月です。今回は顔面全像を載せさせてもらいました。なんとも素敵な雰囲気です。もちろんJowlのたるみは診られません。
斜位像も経時的に見ましょう。
上二葉は術前。頬がこけていて、Jowlが弛んでいます。
上二葉は術直後。こけていませんが、腫脹で下顎縁が膨隆しています。口角が下がっています。
術後1週間の斜位像。口元は相変わらずセクシーです。腫脹は軽快してきました。
術後1ヶ月では美しい下顎炎のカーブが診られます。何より頬こけも消えましたし、重心が挙がりました。若々しく、綺麗なお肌となり、”おしゃれ”して来院されました。嬉しい限りです。
側面像も経時的に観ましょう。
術前の側面像。下顎縁のラインは綺麗ですが頬がこけて、Jowlも見えます。
術直後の側面像では腫脹が判りませんが、口角は下がっています。
術後1ヶ月の側面像。下顎縁がまだ膨隆しています。
術後2週間の側面像では、引き上がりが肌のトーンを綺麗に、魅せています。
面長は美人の条件です。結果的に下顎縁のカーブがより引き立ちます。
今回術中の画像はありません。そこで切除量=引き上げ幅を書きます。下の画像は術直後の左側の縫合線ですが、そこにマーキングしている線の方向です。
耳垂先端部は25㎜。耳珠上部で18㎜。耳後部の角で17㎜です。年齢の割にかなり切り取れました。やはり中身を減らしたからでしょう。
下は右耳介部の術直後の縫合線です。
下には術後1週間の耳介部です。
耳珠部と耳後溝以外は抜糸しました。
創の線と糸の跡は今後もっと目立たなくなります。
下には術後2週間の全抜糸後の”傷跡”の画像
先週抜糸した部位はもうこの様に傷跡が目立たなくなってきました。最終的には白い線になって見えなくなります。
2週間で抜糸するのは、耳珠と耳後ろです。ところで耳珠と耳垂は変形していません!。
下には術後1ヶ月の近接画像群です。
上列の右耳介を巻く傷跡も、下列の傷跡もまだ赤いのですが、メイクで隠せるそうです。次回診る際には白くなり見えなくなるでしょう。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。広範囲剥離中顔面リフトは80万円+消費税です。PRPは10万円+消費税です。静脈麻酔は5万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として手術代から20%オフとなります。