口元の手術は私にとって定番でドル箱でした。約10年前から多くの症例を手術して、大部分をブログ提示してきたからです。画像を追うと結果がよく見えるからでしょう。皆さんが「ブログ観ました。」と言って来院されました。かと言って、私は口の専門家ではありません。美容形成外科医はオールマイティーをモットーとします。
美容外科・形成外科は、体表とその深部の形態的な改善を目的とする点で、同じ手技を共用します。なお形成外科は、原因のあるマイナスの形態を元に戻す医療です。もう一つの目的として、機能的な損失も取り戻すことも加わります。対して美容外科は、正常範囲の形態をより向上させる医療です。機能的損失を来さない様に努力するのは当然です。ですからどちらにしても、形態的な改善を目的とする”全ての部位”に対して、【”診断治療”行為】に精通していなければならないと言えます。30年近く前に、先輩である美容形成外科医が「私はリフトを専門にしていきたい。」と宣言したら、そこに一緒に居た教授が「美容外科医は得意分野を作ってもよいが、専門家になってはいけない。オールマイティーであるべきです!。」と制止しました。後で私の父にその言を伝えたら、両手を打って同意していました。その後私は、金科玉条としてきました。
最近は国民の意識が変化してきましたが、美容外科患者さんは、通常は医療機関を口コミで選びませんから、どうしても”広告宣伝”が来院の基準になってしまいます。現在はインターネットとSNSの画像が多く利用され、TVCMも盛んです。ですが、どちらにしてもシャクの制約があり、オールマイティーには載せられません。結果的に得意分野を載せます。もちろん数を打てるチェーン店は、手を変え品を変えていますが、それでも限界があります。でも私は、趨勢に反して、ブログだけを”広告”(費用を掛けていないから宣伝ではありません)の手段としています。毎回書いてきましたが、ブログでは画像を追って観られるのと、説明が詳しく書けるから、患者さんにとっても、私にも、有用性が高いからです。でも書くのは大変なんですよ!。来院した患者さんに「面白いわねエ〜!。前振りは難しいけれど、時々ふざけていたりで、いつも楽しく読ましてもらっています。」と云われると、私”褒められたのかな?。面倒でも詳しく書いた甲斐があった。”と思いながら、「ちゃんと読んでくださって、来院されるなんて嬉しい限りです。」と頭を下げます。
ですがやはり、載せていない手術は、あまり問い合わせがありません。まあそれで良いのかもしれません。手広くなんでも出来るふりをするよりは、ある程度経験値が高い、得意分野を主に診療していた方が、日々の積み重ねでスキルアップして、結果がより良好になるからです。
その意味で、上に書いた美容形成外科医療の分野とは、全身を対象にします。主に、乳房、脂肪吸引、性器と言ったところが体幹です。でも私は、やはり顔面の治療が多くなっています。と言っても分けて考えます。一つは加齢顔貌に対する手術、アンチエイジング,Antiaging、主にリフト系です。今回詳細は割愛します。もう一つは美容的改良です。いわゆる美容形成外科的手術です。この面に対しては、生来(術後の場合も含めて)既に備える顔貌の評価が求められます。診察と視診と計測が為されます。ただしこの面は、経験による知識の積み重ねが求められます。また、適時シミュレーション手技も利用します。
では顔面の美容形成外科手術を上から順に紹介します。通常輪郭と部品に分けて検討しますが、今回の症例は小顔なので、部品との対比で検討します。頭部と前額部は割愛します。眼瞼付近ですが、これまでブログでたくさん紹介してきましたが、要するに目が小さいアジア人の中でも、大きめな方に造り上げたいのです。鼻はサイズと高さの比率です。形態も考慮されます。周囲の形態とサイズも考慮します。鼻の下からは口周りです。白唇と赤唇の形態です。これまで多くの症例を提示してきました。頤は(側面)輪郭的改善部位ですが、私はプロテーシスの手技が醸成してきました。これらの詳しい紹介は、ブログに全て載っています。こうして視ると、やはり私は顔面形成術を得意分野としています。あえて言えば、顔の専門家です。
今回の症例患者さんは男性です。これもオールマイティーの要素の一つです。他の美容医療機関では平均的に女性:男性=9:1と言われていますが、私は何十年来8:2程度と男性も多く診てきました。私は美容形成外科の患者さんに対して、社会性も考慮して診療します。その方が結果がより高まるからです。ですから男性で美容形成外科に来院する患者さんに対しても、バックボーンの一部でも考慮する方が結果が良好となります。こんな姿勢も皆さんに買われているのでしょう。本症例の患者さんを診察、Consultation していたら、今後顔の専門家として診療行為を駆使させてもらうことになりそうです。
症例は32歳男性。来院するなり、「ブログ覧ました。まず口からですよね。」と仰る。私「いやいや、小顔で可愛い男性ですから、やりがいがある。色々な点を評価しましょう。」ということで診察します。まず(美容医療の)病歴を聴取します。他院で眼瞼はパッチリさせています。ただし、やはりもちろん、蒙古襞の拘縮は治っていません。ブログで視たそうですが、Z-形成術は最終手段です。ご覧の様に小顔ですから、鼻は相対的に大きい。でもまず口元の計測を始めます。
上唇長21㎜/口唇横径44㎜。歯槽骨全体が前にありCupidの弓の頂点間が13㎜(理想は10㎜以下)ですから、人中が八の字型で、広く浅いのです。抑揚がないのです。ご覧の様に口唇結節は明瞭でも、強調したい希望です。白唇は5㎜切除が適応です。両側鼻柱基部で白唇を1.5㎜寄せると白赤唇が立体的になります。口唇横径が小さいので、口角は45度方向に6㎜は挙げたい形態です。鼻は鼻翼幅37㎜/付け根の溝が35㎜/鼻尖幅21㎜でした。頬骨幅132㎜/下顎角間<100㎜と計測上も小さいので、やはり鼻翼と鼻尖の縮小は必要となるでしょう。
ここまで診察と計測して、やはり口元から手術を予定しました。
画像は各方向を経時的に載せていきます。
術前の正面像ですが、口を開いて写ってくれました。赤唇の形態が判ります。
上左図は予定に沿ったデザイン。上右図は術直後、腫脹がピークです。
上左図では術後1週間です。鼻翼部以外は抜糸しました。腫脹の軽快が早い人です。男性は腫れるけれど治るの早いのです。若いし!。上右図は術後2週間です。全抜糸しました。急に治りが早く、特に傷跡が目立たなくなってきました。
上左図は術後1ヶ月です。腫脹はまだ僅かに(ピーク時の20%程度)残っていますが、形態は良好と言ってくれました。上右図は術後3ヶ月で完成を見ようと思いましたが・・。下の近接画像を観ましょう。口角に肥厚性瘢痕が発生しました。
上列は術前の側面像。とにかく長い上白唇が解るでしょう。
デザインは斜位で撮りました。口角のデザインは上下の赤唇縁に沿っています。
術直後は腫脹で膨らんでいますが、短くなったのは判りますよね!。
術後1週間で形態的に満足いただけました。
上の四葉は術後2週間ですが、腫脹が軽快してバランスの取れた顔貌です。
上の様に術後1ヶ月では腫脹も軽快して形態に満足して頂けました。
術後3ヶ月の4方向では形態的には満足です。
下からは近接画像で手術手順を説明します。
術前の画像と、デザイン後の画像。上白唇短縮術は、両側鼻翼基部間を鼻孔底隆起の下から5㎜切除のデザインです。鼻翼の横でドッグイヤー修正します。口角挙上術は、まず口角の位置をマーキングし、上下の赤唇縁を鼻翼基部直下まで切開し、両側口角から45度外向きに6㎜の点まで三角形に、白唇部の皮膚皮下脂肪を切除するデザインです。
手術を開始しました。上左図は、まず口角部の切開を、消えないうちに浅くトレースしておきます。次に白唇部の切開です。皮下脂肪まで全層切除します。止血後、上右図は深部にある口輪筋を、水平マットレスで6箇所Plication (プリーツの派生語)縫合します。5㎜のうち半分寄せます。
続けて上左図では両側鼻翼基部を真皮縫合しました。この後鼻翼横の創内を剥離とトリミングして、ドッグイヤーの無い様に辻褄を合わせて、真皮縫合3針ずつしました。上右図でドッグイヤーが見られません。
上左図は人中を寄せた後。両側鼻柱基部を人中稜よりも1.5㎜外側に真皮縫合して結紮しました。ご覧の様に人中が狭く深くなり、キューピットの弓の頂点間は13㎜から10㎜に寄り、口唇結節は下向きから前向きに変わりました。更に上右図で鼻の下を3+2+3針真皮縫合しました。真皮縫合は上から順に数えると、合計18針です。この時点で全ての創は隙間なく寄っています。切開縫合の手術は、こうでなくてはいけません。
でもここは、鼻側の皮膚と口唇側の皮膚の厚さが違うから、微妙な段差が出来易い部位ですから、上左図のごとく、皮膚表面縫合で合わせます。ただし連続縫合です。
さて口角挙上術の術中画像は撮り損ねました。上右図は出来上がりですが、デザインやトレース切開線の頂点に口角が移動しています。
上左図は、術後しばらく冷却してからもう一度撮影しましたが、腫脹は変わっていません。上右図は術後1週間ですが、腫脹が引いてきて形態が解ります。人中が狭く深く、弓が綺麗、口唇結節が前向きです。口角の(後戻り?)下がりも診られません。
近接画像では傷跡がまだ判りますが、とうに社会復帰しています。次回はさらに目立たなくなりますでしょう。上右図は術後1ヶ月で、傷跡はまだ一部だけ赤いのですが、これからもっと目立たなくなります。
術後3ヶ月まで診てきて、口角の上下の肥厚性瘢痕が悪化してきました。とにかくステロイド局注をさせてもらいます。通常術後の肥厚性瘢痕は3週間〜6週間で発生します。でも画像で観られる様に、術後1ヶ月よりも悪化しています。原因は口を開ける動作が頻繁なためでしょうか?。肥厚性瘢痕はケロイドもどきで、術後等に発生することがあります。赤い、硬い、膨隆する。拘縮する。突っ張るなどの症状ですが、症状はいつか治ります。ステロイドで促進させます。まず2週間後に観たいと思います。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の提示です。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円+税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。