最近マスコミで”直美”という言葉が流れています。医学部を出て直ぐに、美容外科医となる医師をそう呼んでいます。造語したら判りやすいので、それは良しとしますが、私に言わせればそんな事は、30年以上前からの問題で、今更感に堪えません。そもそも直美が起きるのは、日本に於ける美容外科の特殊性、さらに言えば、国民の無知が呼んだ原因の一端を掘り起こさなければならないのではないでしょうか?。
本邦では昭和36年,1961年に国民皆保険制度が成立しました。たった63年前です。実は戦前に保険制度は一部で発足していましたが、一部に限られていて、敗戦後増加が進みませんでした。ほとんどの医療は自費診療で行われました。高度成長期にやっと成立しました。そう言えば、美容整形屋の父が昔言っていました「ひどい医者は、払えない患者から布団を引っ剥がして、質に入れさせて代金を得たんだ。でもその医者が言うには、寝てばかりいるから病気が治らないんだって、とんでもない言い方だけれど・・。」そう言う父は、医師になった昭和28年から8年間は、北里研究所病院(新1000円札)の胸部外科で、自費診療も経験しているから言えることで、ちょうど昭和36年に銀座で美容整形屋に転向してからも、自費診療に抵抗がなかった訳です。もとい、本邦では国民皆保険制度下でも美容医療は自費診療とされたのが特殊性の一因です。例えばUSAでは逆に、基本的に国民皆無保険制度(多くは非政府の自費医療保険)ですから、美容医療も他の医療も自費です。
自費治療は自由診療とも言い換えられます。つまり料金は自由で、言ってみれば市場原理です。医療は福祉制度の一部ですが、美容医療は資本主義原理に染まっています。そこに医師の飛びつく原因の一つが見えます。そして更に、上にも書いた様に、患者さん側は医療者側に比べ医療に無知なのは当然ですが、「美容医療は特殊だから広告が許されている。」と、思い込んでいる人が居るのも問題を拡大しています。因みに父も広告を打っていましたが、微々たるものでした。むしろ銀座のクラブ周りで営業に勤しんでいました。昭和53年に美容外科が標榜科目(医療広告に載せられる科目名等)となると、広告を打ちまくる美容外科チェーン店が、雨後の筍の如く増えました。また書き加えますが、一般市民は、広告を沢山流している美容外科チェーン店を”大手”と呼びます。医療機関は牛丼屋とかハンバーガーの飲食店じゃあるまいし!。因みに未だに、”大手!?”チェーン店では総売上の約半額を広告に費やしています。化粧品屋よりも多いのです。
問題点を二つ説明(説明になっていないと云われそうです)しました。1、自費診療は自由価格です。市場原理です。2、広告等を沢山流しているチェーン店が優勢となります。資本主義原理です。そして患者さん側は来院される前に、広告等の誘引を目的とした、医学知識に基づかない間違った情報を見て来院されます。そこで、ドクターやナースなどの医療者のみならず、カウンセラーと称した偽医療者は、その内容に基づいた診療法(実は医師も所詮カウンセリング)に沿っていくので、短時間で楽に診療を実行できます。しかも多くは、広告では廉価で釣っておいて、診療(それは医師)時にはマニュアルに沿って、トッピング(価格吊り上げ)も加えさせます。しかも治療は手抜きです。
この様に美容医療は楽に稼げると考える医師が多いので、”直美”が横行しています。いやかなり前からです。そもそも、戦後(戦前から?)J.病院が嚆矢です。当時は形成外科が存在しませんでした。だから体系的な美容医療の卒後教育機関はありませんでしたから、皆さん他科からの転科か”直美”でした。父もそうでした。形成外科は昭和31年に東大がUSAで学んで診療を始めます。でもその後標榜科目になりません。昭和50年代に標榜科目になると、形成外科出身の医師と”直美”医師が対立しました。T.クリニックの医師は形成外科医を利用しながら大学で研鑽しないでいた”直美”の先駆けです。昭和60年代にはJ.病院が6人も”直美”を雇いました。皆数年後に開業して、下手くそを売りとする金儲けの権化のS.を代表とするチェーン店を作りました。さらにそこで”直美”を経験した医師がSMC等を開業します。最近ではそこが”直美”医師の主な供給源です。
”直美”が最近目立つのは数が増えたからです。”アベノミクス“(これも”直美”と同様の間違いと認識され始めました)によって景気が良くなって見えてきてから、自費診療の裾野が広がりました。二つの要素があります。一つは他の企業がまだ広告に費やしていないのに対して、S.等は垂れ流すから国民が認知(医療知識としての認識では無い)したからでしょう。もう一つ、福祉費用の中でも保険医療費が逼迫して、一般医療への、特に医師への給与費用が、物価に比べて上がらないから、自由価格の美容医療に逃げる医師が増えたのでしょう。”直美”は昔から問題なわけですが、昨今増えたから目立ち、厚労省もやっと問題視し始めたのです。
私等に様に、大学病院等の形成外科で研修してから美容外科も診療する医師は今世紀までは数少なかったのですが、学会でも進めて徐々に増えました。ただし、やはり最低6年、出来れば10年は必要と考えられますが、最近では2年以下の研修なのに、HP等の経歴に”形成外科出身”(”直美”で無い)と載せている奴が居ます。嘘ではありませんが、またゾロ書きますが、一般市民はその意味を理解できません。巧妙に誘引しているのです。ああ〜、そう言えば、私は昭和61年に大学を卒業した際にJ,病院に就職しようか迷いました。父と相談して「これからはやはり形成外科で研鑽してから美容外科にも進む方が先が見えるんじゃあないか?。」と父に言われて、卒業した北里大学形成外科に入局しました。今思い返せば、”直美”の一人にならないでよかったと言えます。
なんだか、症例に関係ない前振りに終始してしまいました。でも患者さんはブログを見て来院されたのですが、”直美”ではない私のブログには、医学的に正しい説と症例提示が多々載っているからでしょう。その上患者さんはちゃんと美容医療を理解していて、逆に私に相談を持ちかけてきた訳です。丁々発止の診察で、より良い医療ができたでしょう。観て下さい。
症例は63歳女性。先月来院されました。診察室に入るなり、「ブログ覧ました。こめかみリフトでできますか?。」「目袋目立つでしょう?。」と仰います。8月に頬こけと顎にH-A注入されています。PRPやフィラーや器械系美容医療の経験はあるそうです。希望として、目尻を挙げたい。上下眼瞼も検討しています。視力が0.02でいつも目を細めていた。結果窪み目になったと言う。私遮って「それは後天性後葉性眼瞼下垂の合併症です。」と説明します。そこでいきなりフェニレフリンテストをしたら、開瞼が向上して、くぼみ目が解消しました。続けて下眼瞼については「複合手術が適切です。」「こめかみリフトは最終手段でしょう。」患者さん「目袋はHamra法ですか?。」と訊くので、私返して「全体が出ている訳でないので、筋皮弁法が適応です。」と決め付けないと話が進まない診察でした。
手術法は切らない眼瞼下垂手術(黒目整形)=NILT法の重瞼線は術中決定としましょう。下眼瞼たるみ取り手術は筋皮弁法でしっかり挙げます。切開手術なので術前検査をしました。
ところが血液検査の結果で問題が見つかりました。Plt.、血小板が高いのは従前からであると聴いていました。でも正常値の倍以上です。WBC,白血球も正常血の倍以上で、切開手術の場合創傷治癒遷延の可能性と感染の可能性があり、今回は切開手術を見合わせて、年明けにでも血液内科の専門医に診てもらいお墨付きを得てから検討することになりました。私なら目袋の上下にPRP注入して目立たなく出来ると提案したら、今回はそれも併用することになりました。
画像は先ず術前、術(注入)後の上下眼瞼部の画像から載せて、次に手術時の眼瞼部を説明します。
上左図は手術前の上下眼瞼部画像。上眼瞼が被さっている上に開瞼が低下し、窪み目も生じています。上右図は眼瞼手術後画像。切らない眼瞼下垂手術でパッチリさせて二重もクッキリ、窪み目は、眼瞼を持ち上げて引き上げたら改善しました。
その後PRP注入で下眼瞼を埋めました。上左図は注入前、上右図は注入後。下眼瞼の半円からMalarに懸けて、フックラ、ツルっとなりました。
上列と下列は4方向で下眼瞼を比べてみると、立体的にも下眼瞼が綺麗に変わりました。
それぞれの手術と注入治療を説明します。
術前の眼瞼部画像を開瞼と閉瞼で載せます。
眼瞼部の術前の近接画像。前葉は皮膚、眼輪筋が伸展下垂して重瞼が消失しています。開瞼の程度は不明ですが、フェニレフリンテスト(目薬でシミュレーション)で一瞬向上しましたから、後天性後葉性眼瞼下垂です。同時に上の画像で診られる窪み目も改善しました。切らない眼瞼下垂手術、NILT法、ニックネームは黒目整形術で同じ様になります。
手術開始しました。上左図は既存の重瞼線の左(向かって右)の中央に一点マーキングして置きました。電気メスで孔を開けて目印にします。上右図はその術前に患者さんに見せておいた時の図。
飛ばして、眼瞼挙筋に糸を掛けて結紮した後に、座位とした際の図。開瞼は向上しています。糸は両側眼瞼に2本ずつ掛けていて、下にぶら下がっています。
座位で見てもらいながら、ブジーを当てて重瞼線をシミュレーションしてみます。左右当てます。良さそうな点に印を付けました。
仰臥位の戻ってから、まず閉瞼時の幅を測って合わせます。左右とも瞼縁から7.5㎜でした。1点ずつ描いてあります。
上左図は私が測っている画。マーキングは2点ずつ描き足します。目頭の上から8㎜外と20㎜外に描きました。そこに電気メスで小さな穴を開けます。上右図が出来上がりです。よく開いて、重瞼も綺麗なカーブのはずですが、腫れて乱れています。
上左図は眼瞼部を10分間冷却してから、PRPに備えてもう一度撮影しました。上右図はPRP注入後です。下眼瞼の違いは明瞭です。
下眼瞼部近接画像を診ると、注射針の痕が所々赤い点ですが、内出血は拡がっていません。下眼瞼の窪みもなく、溝もなく、目袋が平坦です。
今回年末年始に係ったため、次回は年明けに魅せてもらいます。
当院では、厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。 医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
NILT法は消費税込みで22万円。PRP注入療法の料金は1CCが10万円+消費税。下眼瞼から瞼頬溝には約1CC要します。なお、PRP後のYAG LASERは本来1万円のところ、五千円にしています。またブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。