上(白)唇短縮術で富士山型(赤)唇を造られた症例が、たまに来院されます。これまでこのブログで修正法を載せているからでもあり、さらに鼻翼横のドッグイヤーの消去法も載せているから、頼まれるのでしょう。
上口唇短縮術は、この数年多く行われてきました。私は10年以上前に初回例を手術して、その内の多くをブログに載せていましたから、患者さんがひっきりなしでした。数年前に学会で発表してからは、他の美容外科でも手術し始めたので、私の症例は若干減っていました。逆に、S.などの粗製濫造のチェーン店系クリニックでは、手間暇をかけて手術できないから、まずい症例が多発したため手を引きました。
チェーン店系や、若い医師。形成外科の経験がないかまたは短い医師は医学的見地を持ち得ません。これは何度も書いてきたことですが、医師国家試験は広く浅い最低限の知識しか要求しません。専門分野の知識と技術は、大学病院や大病院の形成外科に在籍して研修して勉強して身に着けることになります。美容外科クリニックでは不可能です。ですから、美容外科で見様見真似で手に職を着けても、良好な結果を得られる所以がありません。また、患者さんの個体に合わせた手術法やデザインの使い分けもできる訳がありません。
口唇の手術は、形成外科での口唇裂の診療で培った知識と技術が欠かせません。まず学術用語を説明します。口唇とは、赤い部位だけでなく白い皮膚まで含みます。洋語ではWhite LipとVermillion、訳すと白唇と赤です。アジアの言葉では口唇を赤い部位だけと観てしまいますが白赤は連携しています。手術時も関連を勘案しないと好結果が得られないはずです。ところで人中ってどこですか?。読んで字の如く、人の真ん中。白唇の中央の溝です。白唇全体ではありません。ちなみに口唇裂では人中が割れているので、それを精細に対象的に造ることが主体で、これが難しい技なのです。さて巷間で人中短縮術と称していて、中央付近だけ短縮しているから、富士山型になります。だから私は、上(白)唇短縮術は両側鼻翼間を同幅切除して、赤唇全体を挙げます。
他にも口唇の解剖学的知識で間違って認識されている面は多々あります。何しろ動く機能の部位ですから、深部構造までも理解していないとデザインも手術も出来ません。例えば鼻孔底隆起の温存は必要ですが、無視する医師が横行しています。手術後に鼻の孔が丸く見える患者さんがたまに来院して、治して欲しいと頼まれますが、取っちゃったものは補えないので難しいのです。
ところで顔面ならず形態を司るためには、第一に表面の肉眼解剖学的知識が必要です。見た目にその様な形態が自然で綺麗かを知らない若造が横行しています。そこは静的な形態に関与しますが、さらに第二に、表面の形態は機能的な深部解剖に依存しています。動くところは特にですが、顔面は繋がっているので、表情筋(咀嚼筋や眼瞼挙筋も含む)の作用は顔全体に影響します。筋、神経(動作は顔面神経:知覚は三叉神経と走行が別々)血管の走行の解剖を表面から予想しながら手術しなければ動的に変形してしまいます。
今回中央部付近を最大幅切除したら、鼻翼下の挙がりが足りないから、両側鼻翼基部の下を切除しました。実はその様なブログ記事を観たそうで、診察室でスマホで開いて私に観せてくれて頼まれました。手間暇かけて、真面目にブログを書いてきた甲斐があります。
症例は51歳女性。これまで当院で他医に罹っていて、突然私に診察を希望されました。2年前に上白唇短縮術を受けました。患者さんから「ブログ視ました。」「私富士山型でしょう?。」と訊かれます。聴いて私は、早速白唇の上下長の計測に入ります。鼻柱基部下(人中溝)が15㎜:鼻翼基部下垂線で18㎜です。数字的にも確かに富士山型です。傷跡を診ると、鼻翼基部までしか切っていません。すなわち、鼻翼基部の下を3㎜切り足すことで、改善できると考えます。そして、「鼻翼基部を切り足すと、鼻翼横まで切っても3人に一人くらいはドッグイヤーができることがあります。」と告げるも、患者さん「ええブログ視ましたが、その時は削って無くせるのでしょう?。」と先回りの回答。私「そうです。CO2LASERで焼き潰せます。」「でも、傷跡の中が強固に治る3ヶ月以降ですよ。」「デザイン上円弧の長さに差があるので、当然にプリーツ、いやドッグイヤーが出来ます。3人に二人は萎縮して縮小して目立たなくなりますが、残ったら焼きます。」と説明すると、患者さん「丁寧に改善法まで載せていて、よ〜く視ていますから安心です。」とお褒めに預かりました。診察の最後に「前医には連絡しておきます。」と二人で頷き合い、早速予定を立てることになりました。
画像は各方向を経時的に観ていきましょう。
上の左右の図は正面像で術前と術直後。違いは赤唇縁のCupid’s bow,弓の頂点の両側のカーブの差、直線的から丸みの差です。そうです。毎月観に行っている富士山の山頂から裾野にかけては、直線的です。皆さん、唇を見て下さい。丸みがあるでしょう?!。
術後11日で全抜糸しました。正面画像と煽り画像を並べます。下から見ても傷跡は目立たないでし、鼻翼横のドッグイヤーも低いです。患者さん入室するなり「大満足です。」と言って下さいました。さらに「これまでの傷跡は電信柱型の糸の跡があるのに先生の場合はないよね?!。」と違いを言われたので、私「連続縫合ですから糸の跡は着きにくいのです。」と説明し、さらに「中縫い=真皮縫合を、全長なら18針以上、今回の一部の短縮でも12針は架けましたから、傷跡の幅が後々拡がることはありませんよ。」と自負を伝えました。そしたら患者さん「これまでの他院での手術の傷跡はみんな幅があるのですよ。」って言いながら、他の部位を指し示して下さいますから、私診て「へー、これちゃんと真皮縫合していないんじゃないでしょうか?!。」「S.でしょう?。」と言うと患者さんは有耶無耶にして「これからは切って縫う手術は先生にお願いしよう。」と有難いお言葉を頂きました。でもさらに「先生だから元気でまだまだ手術してくださいね。」と、年齢を気にされていました。私「まだまだ頑張ってやっています。」と閉めました。
下に近接画像で説明します。
もう一度書きます。赤唇縁の弓の両側の頂点から外側へのカーブが直線的または下へ湾曲しているのが富士山です。これに対してその上、鼻翼基部を挙げ足しましょう。そのためのデザインは→鼻翼基部を中心に取りましょう。まず鼻翼基部(何度も言いますが、鼻翼基部とは鼻翼の最下点です。)の下に3㎜の幅をマーキングして、内側は鼻柱基部(これも何度か書きましたが、鼻柱基部とは人中稜の最上点です。)付近まで、外側は鼻翼横までテーパーして三日月型にデザインします。もう一度言いますが、デザインの二本の円弧の長さは1.5倍くらい差があります。
上左図は切開切除した後。皮膚皮下脂肪全層切除しました。深部には口輪筋を残します。上右図は縫合した術直後。縫合線の横は鼻唇溝の最上部の陥凹のはずですが、少なくとも平坦化しています。ドッグイヤーの丸い膨らみ程厚くはありませんでした。うまく辻褄を合わせた訳です。
いつもは両側鼻翼基部間を術後1週間で、鼻翼横を術後2週間で抜糸しますが、今回は鼻翼基部付近だけの短縮術ですから、術後11日で全抜糸しました。
下には4方向でも違いが判ります。
上図の4方向は術前。赤唇縁のカーブがジャンプ台の様に湾曲しています。これが富士山型です。
上図の術直後では赤唇縁が直線化しました。
術後11日で抜糸後の4方向です。私がカルテ上で前の画像を覧ながら「毎月の様に富士山を見に御殿場方面に行くんですが、近くで見ると富士山ってこうやって(手で演じて)反っているんですよね。」と言うと意味を解って下さいました。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の提示です。上口唇短縮術は28万円+消費税ですが、今回は修正術で長さが約2/3の一部切開ですから18万5千円+消費税としました。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなりますからキリ良く15万円+消費税としました。