2025 . 3 . 10

4年前に切開法と埋没法。掛け足します。それより、剣状強皮症に対するPRPを気に入ったから、2回目。

PRP療法が騒がれています。bFGF, basic Fibroblast Growth Factor(塩基性線維芽細胞成長因子)の製剤を添加したら、硬結(しこり)が出来て吸収が遷延したので、有害事象とされたのです。予め説明していなかったことが医療法上に問題視された結果、そのクリニックは責任を取りました。昨今は説明義務違反で問題が生じるケースが多くなっています。

PRP, Platelet Ridh Plasma療法は、自己採血を、遠心分離機で分けて、血小板だけを濃度を約2〜4倍にして取り出して、局所に注入する治療です。血小板は様々な成長因子を分泌します。成長因子とは、各組織の細胞の分化を促進して、細胞を増やすかまたは組織の構成物質を増やす作用のある蛋白質です。

PRPが含有する成長因子は、EGF, Epidermal Growth factor 表皮成長因子=名前の通り表皮を厚くして張りを造る。TGFβ, Transformig Growth Factor トランスフォーミング成長因子=他のいくつかの成長因子の前段階。VEGF, Vascular Endothelial Growth Factor 血管内皮細胞増殖因子=毛細血管を増やして血行促進する。PDGF, Platelet-Derived Growth Factor 血小板由来成長因子=細胞遊走や形質転換、血管新生に関与して創傷治癒を補助する。これらが主な内容物です。ご覧の通りbFGF, basic Fibroblast Groeth Factor 塩基性繊維芽細胞増殖因子=繊維芽細胞を動員してコラーゲンを造らせる因子は含みません。

私は、PRP療法をAugmentation, 増大術と捉えています。加齢や骨格の影響で凹んだ部分、弛んで下垂して膨らんだ構造の下の段差を埋める目的です。そうであれば、一番増やしたいのはコラーゲンです。それにはbFGFが必要です。皮膚が凹んだ場合、表皮が薄くなったのと、真皮が薄くなったのでは差があります。そもそも表皮は0、2〜0、4㎜の厚さですから、窪みに影響しません。真皮層は2㎜前後の厚さがあり、加齢で薄くなると窪みの原因になります。ですから真皮層のコラーゲンの厚さを復活させることが第一義的に効果的です。そしてその深部の皮下脂肪層の厚さは、個体差(太っている人痩せている人などの要素)や部位により、2㎜から数㎝とばらつきがありますが、凹みの原因の多くは、皮下脂肪層の減量部位と弛みの段差が影響します。学会で提示されましたが、bFGFを微量添加したPRP療法は皮下脂肪層も増量させます。

さてPRP療法は、整形外科、歯科、形成外科、美容外科など様々な診療科目の領域分野で利用されますが、私は美容形成外科医です。そこでは使用量は1〜4ccです。15〜30cc採血して、遠心分離して、特殊な試験管で抽出します。問題のbFGFの添加量ですが、極微量です。記事にあるしこりを起こした量はPRP1ccに対して25μgでした。比して私達は2.5μgと10分の1です。これまで15年以上の経験がありますが、硬結を生じたことはありませんでした。なお日本形成外科学会やPRP研究会などの学会でも推奨されている濃度です。

主な適応部を羅列します。溝段差は下眼瞼の目袋の膨らみの下の半円形の、瞼頬溝と呼ぶPalpebro Jugal grooveです。眼瞼は皮膚が薄いのでヒアルロン酸はブツブツになりますから、軟らかく組織を埋められるPRPが最適な部位です。他には、鼻唇溝(法令線)の上方の鼻翼横の三角形の窪みは量を深いので量を要するのでPRPで下地を作るのに使え、線も浅く打つのに軟らかいPRPが適します。眉間の刻まれた皺にはボトックスの後で埋めるのに使えます。窪みとして、頬がこけているとか、こめかみがこけて来た人にも1〜4ccとたくさん打てるから適します。窪み目にはきらない眼瞼下垂手術が第一適応ですが、重症例にはPRP注入を併用する場合もあります。

今回の前振りは、PRP注入療法の細かい詳しい説明に終始しました。あえて見直してみれば言い訳がましくなっていました。ですがやはり、この治療法は良好な結果を得られます。実は本症例は、剣状強皮症という珍しい病態ですが、根治療法は難しく、体表の病変に対して、目立たなくする為にまさか手術は避けたいし、PRP療法が結果を得られると載っていたので、前回施行しました。もちろん永久的持続効果はないのですが、手軽に受けられるから、2回目を希望されました。それはPRP療法の優位性を認められたということでしょう。今回も結果を出せる様に巧くやります

症例は46歳女性。初診は12年前です。当時は切開法で眼瞼下垂症の手術を致しました。その後経過は良好でした。4年前に再来しました。「よく開いて便利で、くっきりとしてキリッとして綺麗でした。」と仰ってくださいましたが、「最近落ちました。」と仰る。画像を診ると確かに落ちてきて、相対的に重瞼も広がっていました。後葉生後天性眼瞼下垂と診断して、その際は切らない眼瞼下垂手術を希望されました。その後前葉も揃えて修正追加手術も糸でしている内に、下眼瞼バギーアイ(目袋)の下のクマ(瞼頬溝)に対するPPP注入療法の説明に移り、さらに剣状強皮症に対してもPRP注入療法の話題が持ち上がりました。その際のhttps:ブログはこちらです。患者さんもこの病態に対して治療は難しいのですが、形態的にはPRP注入療法は適切に効くとお悦びでした。剣状強皮症の結果と考えられる鼻孔縁の左右差にも手術:耳介(耳輪)からの複合組織移植で対処して巧く揃ってお喜びでした。その際のhttps:ブログもこちらです。

その後3年以上経ました。眼瞼に糸の様な黒点が見えると来院されました。その上右の重瞼が落ちたと気づいたそうです。ついでと言ってはいけませんが、剣状強皮症の経過も診ました。前額部部の陥凹は再発しましたが幅は減っていて、浅く保っていると観てくださいます。私もPRPの効果がある程度持続しているのではないかと嬉しかったのですが、患者さんは「下方の鼻根部の左右差は治したいわね。」と仰います。私「むしろPRPで結果が得られたから、減った分とさらに足したいってことですね?。」と尋ねると、「はい。」とお答え頂き、私「半量つまり前回2CCでスカラ今回1CCで特に鼻根を多めに入れましょう。」となりました。Malarや浅く保っている瞼頬溝、鼻唇溝の上方三角型の陥没にも分けましょうとなりました。

画像は全顔面を載せること可能なので、眼瞼と強皮症を同時進行で観ましょう。

1PRP、剣状強皮症とは呼んで字の如く、自己免疫疾患で、皮膚皮下組織(程度によるが筋や骨も)がやられて、剣の形に凹む疾患です。画像では、額の中央の右に縦に陥凹が見られて、下方は鼻根左まで凹んでいますが、鼻孔の食い込みは移植したから治っています。下眼瞼のクマも見られます。2MT法、左眼瞼の外側に糸が見えると訴えてきましたが・・・。

1、斜位で見ると、額の中央右の縦の陥凹と中央の膨隆の段差が判ります。

注入と手術をしました。今回特に、1、鼻根の右側の凹みを約0.8CCで主に埋めました。他にMalar(頬前)の陥凹と鼻唇溝にも残りを分けました。2、眼瞼は👇

斜位像の注入後です。額の縦の凹凸は埋まり、鼻根も左右に曲がっていなく埋まりました。

2、糸は露出していませんでした。糸の掛かっていた孔に角質(垢)が詰まって黒くなっていました。折角ですから、MT法(当院の埋没法)二本で重瞼幅を挙げました。

下には術後1週間の画像群。

1、PRP注入直後には発赤していましたが、軽快してよく判ります。PRP1CCで陥凹の全長には足りなくても、剣型が途切れて目立たなくなりました。2、重瞼線が丸くなって綺麗です。

斜位像でも平坦化したと診られます。

眼瞼はまだ、若干腫れています。

術後3週間で魅せてくださいました。

1、「PRPは創傷治癒過程を応用しているので水分が吸収される3週間後には一度減ります。」と説明させてもらい。「その意味では6週間程度ではまた増えるといいですね。」と今後の経過に期待してもらいます。

斜位像では鼻根部付近の対称性が造り上げられています。前額部の段差も減っています。

眼瞼はOKです。

当院では、厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。 医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。

施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

料金はPRP1CCが10万円+消費税、2CCでは15万円+消費税ですから、2cc以上がお得です。なお、PRP後のYAG LASERは本来1万円のところ、五千円にしています。またMT法と呼ぶ埋没法の重瞼術は両側2点ずつで10万円です。片側なら6万円です。全顔面のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として40%オフとなります。