私を指名して罹る患者さんは、約半数は紹介患者さんです。また少なからず、他医からも紹介されます。今や東京皮膚科・形成外科グループは、合わせて5院あり、医師は常勤が7名、非常勤を含めると20人を超えます。その中の一部の医師はレパートリーが狭く、時折私に紹介してきます。
最近ではもちろん、HPやSNSを検索して覧て来院される患者さんが多いのですが、ご存知の様に私はブログだけを利用しています。何故かは、ブログには経時的な経過が載せられるのと、詳しい説明が載せられるからです。この段の様な斯界の話題も書いています。全て私自身が書いています。なおHPは各クリニックごとに提示してますから、各院の手術法はある程度判りますが、残念ながら当然に、書いているのが医者以外なので、美容”医学的知識”は不足です。また書いてあってもできる医師とやらない医師が混在しています。私などは結果が見える手術しか施行しませんから、レパートリーは広くても、簡単な手術や「切らない。痛くない。」などという嘘の手術はしません。私は主に、形成外科の知識と技術に基づいた美容形成”外科”の切開手術を得意分野としてきました。
とは言っても、私は美容整形外科医の継ぎ手として産まれ、昭和62年に形成外科医となってからも、美容外科の”医療”を研鑽してきました。でも実は、シリコンプロテーシスの申し子でもあるのです。美容整形と称した医療が80年前の戦後から隆盛して数年後から、シリコンは使用されましたが、当初はジェリー状のゲルが注入材として利用されました。皆さん知っての通り、散ってしまって形態的に好ましくない、中長期経過を発生させました。1960年代にゴム状のシリコンプロテーシスが開発されました。ちなみにそれまでは、例えば隆鼻術には象牙が使われていました。私も抜いて見た事があります。今はもちろん採取不可です。実はシリコンは石の元素です。また色々な分野で使われます。私が毎週乗っている新幹線には、今でも高純度のシリコンが使われています。シリコンバレーが半導体の世界中心地であるのは有名です。
そして、医療用にもシリコンは欠かせない材料です。何故なら組織親和性が少ないからです。つまり生体に同化しないから、身体に対して毒性がありません。ただし同化しないから、皮下ポケット内に留置しても、生体は異物として認識して、シリコンプロテーシスの周囲にコラーゲンの膜を造り、あたかも体外と認識しようとします。結果的に、あくまでもポケットの中にあるだけとなります。因って皮下ポケットの表層が充分に抑えないと、ポケットを破って出てくる可能性があるのが、最大の問題点です。皮膚は引き伸ばすので、破けない緊張の限度とプロテーシスの体積のバランスが重要です。また皮膚だけでなく、皮下脂肪層やその深部の組織の深さに入れるかも技術と知識を要します。その点で経験が要されます。私は形成外科で37年間体系的医学的知識を身に着け、美容外科としてシリコンプロテーシス手術の経験は豊富です。ですから安心し下さい。今回も経験と知識を下に、難しい手術プランに挑みます。
症例は56歳女性。昨年来院され他の部位から手術してきました。本年5月に入って連絡がありました。鼻の相談です。私も当初から気になっていました。来院され病歴を聴きます。約20年前に他院でI型プロテーシスを挿入しました。私はそれまでは触れていないとしても、なんとなく不自然な鼻筋と感じていました。(※ここで画像を視ましょう。)鼻柱が上に喰い込んでいるのがですね。触れると、プロテーシスが鼻尖の上半分まで入っている。確かにこれは変な形で不味い。次に私おもむろに(不意にではなく徐に)左右斜めや側面から見始めます。どこから診ても(※今度は4方向画像を視ましょう。)、鼻陵から鼻尖へは直線的なのに、鼻尖の下半分から急激に落ちていて、結果的に鼻尖が上方に存在します。患者さんに聞いても認識してはいました。そして「鼻尖から鼻柱基部までを、先生のブログに載っている鼻唇角プロテーシスで何とかできませんか?。」と尋ねられます。私視線を宙に浮かせて思い起こしながら「ウーンとお・・。そうですね・・。随分前にやったことありますね。」材料が有るかが気になりながら「長い鼻唇角プロテーシス、ショートL型に近いものを造りましょうか?・・。」と意を決しました。測ると鼻中隔の先端から鼻柱皮膚表面まで5㎜です。画像でも視られる様に、鼻翼と水平まで下げる為には5㎜は必要です。幅5+5=10㎜のものを用意することになります。とは言っても出来合いの物はないので、造らないとなりません。元となる大きなL型を探すことから始めます。
ところで今回長い鼻唇角プロテーシスを入れて鼻尖の下まで高く、しかも下げたら、段差ができない様に注意して造っても、鼻尖が足りないかも知れない懸念があります。同時に鼻尖への耳介軟骨移植の提案もしましたが、経過中に判断することになりました。それはこのブログで診ていっても判ることです。今回笑気麻酔を希望されました。ところでやや遠方からの来院ですが、画像は適時送って下さると承諾されました。
画像でまず各方向から術前と術後を見比べましょう。
術前の正面像では鼻尖から鼻柱の喰い込みを覧て下さい。下からの近接像では鼻尖の上半分がせり出していて、鼻柱が上に喰い込んでいます。
側面像と斜位像が如実です。20年前に入れたI型プロテーシスがある鼻尖が上半分まで真っ直ぐで、下半分からズドンと落ちています。不自然であり得ない形態です。側面像で鼻柱は鼻翼に隠れ、斜位像で鼻尖に隠れています。
これが術後には!。あまりにもちゃんとで出来たので、患者さんに感涙されました。
正面像で鼻柱が視えます。鼻尖も下がりました。下からの近接画像では、鼻柱が鼻尖の延長として下にせり出しています。
左側面像では鼻柱が覗けます。鼻尖が丸くカーブを魅せます。斜位像では鼻尖から鼻柱へのカーブが自然です。この形態なら自然界にあり得る綺麗な鼻です。なお20年前のプロテーシスと今回のプロテーシスは繋げていませんが、現時点で継ぎ目(隙間)は診られません。
翌日は腫脹が亢進します。内出血も少々透見されます。でも形態は自然です。
私が立体的に診て、「うまく出来ました。」と言うと、患者さんはまた、喜びに溢れて涙を魅せました。本当は泣くと自律神経系に影響して経過に触るんですが、喜びの涙なら大丈夫でしょう。
術後1週間で診て、抜糸しました。私一言「自然界に有り得る形態ですね。」と告げました。さらに「上手くサイズを合わせたので鼻尖への軟骨移植は不要かも知れませんね。」と伝えました。
4方向で術後1週間を診ても、鼻尖から鼻柱へのカーブが自然です。I型プロテーシスと鼻唇角プロテーシスは繋がっていて、隙間は触れません。サイズが適切だったのです。
ここからは近接画像で手術の説明も書きます。右鼻孔縁からのアプローチですから右斜位の近接画像で術野も観ましょう。
まずは手術開始。すでに笑気麻酔を吸うチューブは咥えてもらっています。ちなみに笑気麻酔は眠りません。鎮静効果はないのですが、痛みを感じなくなります。鎮痛効果だけです。デザインは2点:触診してI型プロテーシスの下端を知り、その下まで持ち上げる予定です。両側鼻柱基部点を人中稜を目安に描いて中央を間違えない様にします。上右図は右下から写しました。右利きの術者は、右鼻孔縁を切開します。この後手術中も視られます。
上左図はいきなり切開して剥離してポケットを造った後です。筋鉤で引いて中を写しましたが苦あくて判りません。ただし、筋鉤の長さは1.5㎝ですから、その深さまで(ANS上)ポケットが造られていることを示しています。上右図はプロテーシス作成後です。今回のプロテーシスは長い物です。これまでのブログと比べたら倍以上です。下はANS,Anterior Nasal Spine、前鼻棘=梨状孔(上顎骨で囲まれる鼻の孔)の下に載せます。上はI型プロテーシスの下端の下まで達する長さで、入れてみて長さを合わせました。
早速入れてみます。筋鉤でポケットを広げてもらいながら、私が鉗子で優しくつまみながら入れていきました。ポケットのサイズとプロテーシスのサイズはマッチしていました。上右図は鉗子を離してみたらまだ入っていません。
もう一度わずかに縮小して、奥まで入れて、そのまま鉗子を抜いたら今度は入っています。左からも確認します。
側面で形態を確認します。綺麗なカーブを描いた鼻尖と鼻柱を下げるのが目標です。上右図で見ても、マーキングされたI型プロテーシスの直下に長い鼻唇角プロテーシスが入っているのが判ります。形態的に良好なので縫合しました。チラッと青い糸が視られます。
上左図は縫合後に右鼻孔縁を覗いたら、青い糸が7本覧られます。青いのは、抜糸時に毛と区別出来る様にする為です。上右図は翌日ですが下から見ても糸は見えません。
当院では、厚生労働省より施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
料金も提示します。鼻唇角プロテーシスは20万円+消費税。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。