いまだに目頭切開、いや目頭形成の本来の目的と意味を知らない医者が多くて、患者さんが可哀想です。特に昨今は、患者さんがインターネットでSNSを覧て来院されることが多く、ビジネス的チェーン店系の非形成外科医の美容整形屋は、そこに非医学的情報ばかり載せていますから、間違った見解が横行しています。
まず第一に、蒙古襞は被さりですが拘縮です。巷間の美容整形屋は蒙古襞を切除する手術しかできません。どのSNSにも載っています。ところが蒙古襞は切除しても、被さりは除去できますが、拘縮は解除出来ません。つまり挙がりません。この点が結果として不自然感を醸し出します。非形成外科医の美容整形屋で目頭切開術を受けたら、不自然な結果を呈するのはそのためです。かといって形成外科医はそんなことを怖がって、目頭切開術をあまり手術しようとしません。どちらも残念なことです。
ところで拘縮とは、突っ張りのことです。蒙古襞は目頭部で上眼瞼と下眼瞼が繋がっていますから、上眼瞼が開くために挙げようとしても、邪魔するのです。ですから、拘縮の解除が求められます。そのためには目頭の蒙古襞切除ではなく、蒙古襞の拘縮解除のためのZ-形成術が適します。形成外科医の得意分野です。Z-形成術は読んで字の如く、Z型に切開して、二つの三角皮弁(皮膚皮下脂肪⦅時に+筋⦆を三角形の一辺だけ繋げておきながら剥がしてブラブラにする事)を挙上して入れ替えると、拘縮が解除される仕組みです。画像に机上の図を載せます。三角関数を利用しての、計算上の通りに蒙古襞が伸び、内眼角の位置が動きます。もう一つ蒙古襞は皮膚だけが拘縮の原因ではありません。深部の眼輪筋と内眼角靭帯の繋がりが本態です。下の眼輪筋が靭帯に付着して靭帯の付着部である内眼角の涙湖が持ち上がらない様に邪魔しています。これを外して上に動き易くすることが必要です。ただし靭帯の裏側に涙管が挿入されています。万が一涙管に傷がついたら涙が流れ出せなくなり、目の前から頬に漏れます。立体的に繊細な解剖を知っていることが必要です。ちなみに私は、医学博士の副論文は【An Anatomical Study of the Medical Canthus Using a Three-Dimensional Model】でした。訳すと内眼角部の眼輪筋と涙道との位置関係を3次元的に描出しました。精密な解剖構造をこの目で見ましたから安心して下さい。
ところで、美容形成外科は医療です。商売ではありません。もちろん眼瞼下垂症の診療も、あくまでも医療です。重瞼術も含みます。ですから、診療行為に於いては”診”察と治”療”が必要です。二つが伴ってこそ”診療”行為なのです。眼瞼下垂症の病態はいくつかのカテゴリーに分けられ、それぞれに対して適応する手術法でなければ、効果が得られないのです。診断法や検査法はいくつかありますが、結構時間が係るのです。商売的チェーン店クリニックでは、広告費に費やすために時間単価を2倍要します。当然にして、診察時間も得られません。もちろん”直美”や若造には診察に要する知識も稚拙ですから、できようが無いのが実情です。私は当クリニックに於いて、オールマイティーに手術に対応出来る美容形成外科医ですが、その結果私に対しては、時間を掛けての診療行為を許されます。いい環境です。
SNSでもブログに於いては、この様に詳しい説明が載せられます。間違った見解かどうかは、学術的見地が証明しますが、私は日本形成外科学会と日本美容外科学会の専門医ですし、66歳にして毎年必ず参加して、いまだに勉強しています。さらに経験値(診療の中身の濃さ)が高いので、診療行為に於いても多様な症例に対応してきました。最近SNSで画像だけ覧て、なんか良さそうと飛び付いたらボッタクリだった話は、患者さんからよく聞き及びます。今に始まったことでは無いのですが、美容形成外科医療がチェーン店系のビジネス的美容整形屋に乗っ取られてきました。私の父も”直美”でしたが、父を反面教師と捉えて、私は真摯に診療してきました。皆さんに有用な医療を与えてきた自負があります。そんな態度に共感される患者さんが絶えません。
症例は19歳男性。知り合いに紹介されて来院しました。早速診療します。
一重瞼です。つまり、先天性前葉性眼瞼下垂症です。本人も自覚しています。もちろん年齢的に後天性前葉性は進行していません。LF, Levator Function (挙筋”筋力”)は14㎜あり、先天性後葉性眼瞼下垂症はありません。視力正常でコンタクトレンズも必要なく、後天性後葉性眼瞼下垂症も生じていません。したがってフェニレフリンテストをするまもありません。
一重瞼に伴って、蒙古襞は拘縮しています。計測すると、内眼角間距離(二重瞼の平均値=33.5㎜)37㎜:眼裂横径(二重瞼の平均値=26㎜)24㎜:角膜(黒目)中心間距離(男性の平均値62㎜)62㎜と目は離れていないのに、蒙古襞は被さって目の窓が離れていて、横幅も小さくなっています。
どの点も本人が自覚しています。ですから判り易く私も判り易く、プランも立てられます。ブジー(二重棒)を当ててみます。一重瞼でもしわはあります。中間の線で当てると、第一眼位で瞼縁が露出する、つまり前葉性眼瞼下垂症が改善される幅を見出せました。座位で瞼縁から5㎜でした。18歳でもこれから皮膚は伸びるから、幅2㎜を切除しましょう。蒙古襞はいつもの様に、二重瞼と一重瞼の内眼角間距離の差である3㎜を寄せる為の、一辺4㎜の60度のZ-形成が適応です。
手術日に直前に、もう一度ブジーでシミュレーションすると、平行ラインの最下線が上記のラインでした。しかもZ-形成に繋がります。
画像は日を追って両側眼瞼部像と左右眼瞼部近接画像を載せます。
術前の両眼瞼部。一重瞼では、第一眼位で角膜(黒目)がこんなに隠れています。つまり前葉性眼瞼下垂症です。
近接画像で見ると。角膜の中央部の瞳孔(光が通る真っ黒目)を上眼瞼が塞ぐぎりぎりです。少なくともまつ毛はすだれ状に瞳孔の前に垂れています。眼瞼下垂症では上まつ毛が下向きます。さていよいよ手術です。
さていよいよ手術と言っても、デザインが重要です。美容形成外科の手術では術前のプランからデザインまでが結果の50%を左右します。まず予定の重瞼線を第一切開線とします。その上に2㎜幅で、第二切開線を描きます。目尻を越えたらテーパーさせます。続けて目頭にデザインします。下の近接画像で説明します。眼瞼の切開線は目頭に繋がります。
術前デザインの近接画像です。まず蒙古襞の下眼瞼への付け根から、稜線に4㎜のマーキング。その上端から内へと、下端から外へ60度で4㎜のデザインします。上の辺は眼瞼の二本の切開線の終端を蓋するようになります。
使い回しの机上の図で目頭Z-形成術を説明します。上図は上上図の左(向かって右側)眼瞼のZ-形成のデザインを模した線画。図の左側が術前、右側が術後。説明すると、cabとdbaの二つの三角形を入れ替えてb’d’c’とa’c’d’の三角形になります。蒙古襞の稜線abがa’b’になるのですが、sin60度×2=√3×2≒1.73倍の長さになります。ab辺の4㎜の蒙古襞がa’b’と約7㎜になり、逆に横方向は、cd辺の7㎜がc’d’辺と4㎜となります。蒙古襞が3㎜上に伸びて、蒙古襞は表裏に皮膚がありますから、内眼角の角が1.5㎜内側に動き、内眼角間が3㎜近づく計算です。
眼瞼は皮膚だけ切開してからの、目頭Z-形成術後の近接画像です。上上上図のデザインを切開して、上下に三角皮弁を起こして、眼輪筋を内眼角靭帯から外すと、皮弁は自動的に入れ替わります。その位置で皮弁の先端を縫い付けます。プラス片側4針縫合した後が上図です。机上の図の右側が左眼瞼(向かって右側)です。目頭の位置が1.5㎜内側に移動しています。
上左図は両側眼瞼部はデザインが消えないうちに皮膚だけ切除して、目頭形成を終えた図。上右図はその後眼瞼部の眼輪筋も切除した図。
上左図は眼瞼結膜側から眼瞼挙筋腱膜を縫縮した後です。上右図は更にその糸を表に出して重瞼固定した後。
ただ意外と外出血は少なく、内出血も露呈していません。
術後1週間で全抜糸しました。なんとか開いてくれます。形態と機能は充分に向上しています。患者さんに「格好良くなったね。」と言うと、ニコニコおよろこびでした。
まだ右眼瞼は腫脹が、ピーク時の50%は残っている模様です。左眼瞼はかなり引いてキラリとしています。機能的には見事に強化されています。
当院では、2018年に厚生労働省により施行された「医療機関ホームページガイドライン」を遵守しブログを掲載しています。
医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用は、眼瞼下垂症の診断が得られれば保険診療です。3割負担は約5万円(出来高請求です。)です。目頭形成術は角膜に掛かる程でないと保険は適用出来ません。自費で28万円+消費税です。