2018 . 10 . 31

まずは人中部上白唇短縮術を施行しました。

予めメールでお問い合わせを戴いていた遠方からの患者さんで、画像も送って来られて、一応手術適性が判る様にしておいた患者さんです。

症例は25歳女性。白唇長:鼻柱基部〜赤唇炎中央=18mmと15㎜以上は長い部類。側方から見てC-カールはあり、正面像で人中は浅いが狭く、弓の形は明瞭です。E-ラインは直線上です。鼻翼幅が39㎜ですから鼻翼縮小術皮弁法を2.5㎜×2で34mmを目指したい。内眼角間距離も36㎜ですから、目頭の蒙古襞も、一辺4mm60度のZ-形成術で2.5mm寄せて33.5mmを目指したい。このように顔面の計測でプランを立てないと不自然なバランスになります。口角挙上術もしたいが一歩ずつ進めたい希望で後日としました。その際口唇幅は49㎜ですから、鼻翼や内眼角間との比率次第で引き上げ方向が変わります。

今回は白唇を両側鼻翼基部間を5mm切除。口輪筋を折り畳まないで寄せる。人中部は0.5㎜ずつ寄せて縫い、人中を深くします。弓も若干狭くなります。鼻翼は鼻孔底に幅2.5mmの皮弁を作製し、鼻中隔の下にトンネルを作成して両側の皮弁を通して縫い合わせて鼻翼を引き寄せます。 継時的に画像を見ましょう。先ずは正面像。

IMG_6289IMG_6298IMG_6494 左から術前、術直後、術後1週間の抜糸直後です。いつもの様に術直後は腫脹が強い時点です。でも意図した形態変化は見えますよね。抜糸後はすっきりしています。早いですね!。鼻翼の幅は34㎜に保たれていて顔面のバランスが取れています。人中と弓が可愛いでしょう?。もちろん口角は相対的に下がっています。

IMG_6292IMG_6301下面像でもサイズが判ります。 IMG_6290IMG_6297IMG_6299近接像で説明します。左から術前、デザイン、術直後、術後1週間です。口唇幅だけ変えてないので、倍率の目安にしました。デザインは白唇部切除のデザインしか見えません。鼻翼縮小のデザインまだ書いていないからです。切開直前に書きます。鼻翼の内側がNostril sillに移行する角から矢状方向(上下)に5㎜程浅く切開して、その内側に幅2.5m離して台形の真皮皮弁を挙上します。その前に白唇部は皮下組織まで(口輪筋直上)切除しておきます。そこで両側鼻孔内から鼻孔底の深部に(口蓋骨上)トンネルを作り、皮弁を寄せて縫い合わせます。皮弁のドナーの欠損が寄せる幅になります。こうして白唇部切除した創の線のうち鼻翼側は短くなり、口唇側はデザイン通りの長さですが、そのまま縫合すれば白唇が前突しません。 白唇部短縮術をして上口唇がすっきりしたのに、その後に鼻翼縮小術を行なうと白唇が膨らんでしまい、元も子もなくなってしまう可能性がありますから、同時手術がおすすめです。しかも同時手術では創治癒時の癒着が強固なため、鼻翼縮小術の後戻りが少ないという副次効果も得られます。これもそれも経過画像を追って見ていきましょう。 IMG_6293IMG_6302IMG_6498

右斜位像では人中の深化が見られます。術後画像では、赤唇が裏返って可愛いです。 IMG_6296IMG_6305IMG_6496

左側面像では、下口唇に若干力が入って見られます。これも治ります。上白唇は当然に短縮されていますが、赤唇が外反したのはもちろん、白唇の上方が平板だった部は切除されて鼻唇角の直下からカールしています。つまり冗長感が消失します。 今回は、術後1週間までの経過画像を示しました。通常より回復が早いでしょう。でもまだ腫脹がピーク時の50%は残存していると考えられます。内出血がないのでグロくないです。表情筋と運動神経。鼻の位置は皮弁法をしたので拡がっていませんが、下には引っ張られていて、回復には数週間かかりますが、必ず元に復します。閉口は随意的には既に可能ですが、下口唇にも力が入っています。これがトーヌス(姿勢を保つ微弱な信号)により上唇鼻翼挙筋が働いて、不随意に閉じる様になります。この筋は弱いので回復には平均4週間かかります。 ですからこの手術は術後数週間の、いや数ヶ月の経過観察が必要です。経過は個体差が大きく、そもそも手術の術式も微妙に違いますから。患者さんは、遠方から定期的に診せに来院されることを約束されました。なんていい人なんでしょう。だからこうしてブログ提示モニターとしてサービスさせてもらいます。しかも経過が早いです。

今回術後1か月で来院されました。遠方から有難うございます。画像を並べます。

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術後1か月の経過としては良好です。メイクをしたまま撮りました。左の鼻翼よぉの傷跡の終端がまだ膨らんでいます。外側の皮膚のあまりです。二つあったうちの一つは消えましたから、いずれはもう一つも消えるでしょう。余った皮膚は縮まっていきます。 IMG_7048IMG_7050

実は前回抜糸直後にBTX,BotullinusToXin A;ボトックスを併用しました。口角挙上術の代わりです。口角下制筋という筋に打ちます。この筋の起始は下顎骨で口角の皮下に停止し、両側口角から斜め下に向かって八の字状に走ります。収縮すると口角を引き下げます。マリオネットラインもこの結果出来る溝です。BTXを打つと口角を下げなくなるだけでなく、口角挙上筋群のトーヌスによって、口角が挙がります。 毎回書いて来た様に顔面表情筋群には覚醒時に力が入っていて世紀のある表情を作っています。これをトーヌス,Tonusというのですが、口周りの手術後に侵襲によりトーヌスが一度落ちて、鼻は拡がるわ口は開いているはとなり、トーヌスの回復とともに位置が戻ります。私は口周りの手術の最多施行者の様なので、経験から認識されました。口角BTXもトーヌスが影響することが理解しています。

本症例ではBTXを予定して口角挙上術を併施しませんでした。上に書いたようなメカニズムから、手術直後でなく術後1週間以降にしました。今回術後1か月でご覧いただける様に口角は挙がっています。 ただしボトックス治療は永続性はありません。ただし巷間の不勉強な(反知性な)美容整形屋がほざくように、ボトックスが吸収されるのではありません。いい機会なので説明します。

ボトックスは神経筋接合部を遮断します。顔面の表情筋絵の支配神経である顔面神経が、それぞれの筋体に挿入される部位を神経筋接合部といい、神経伝達物質が流れています。ボトックスはこの隙間に挟まり伝達物質が筋のレセプターに嵌るのを邪魔します。したがって顔面神経からの電気信号が筋に伝わらなくなくなります。ボトックスは永久に挟まっています。ところが末梢神経は線維が枝分かれして、しかも神経筋接合部も新たに作ります。木の枝を折ると別の枝がより伸びが良くなるのと同じと考えて下さい。新たに神経が伸びて神経筋接合部を作るのに数か月を要します。こうしてボトックスは数か月で効果が切れてきます。また注射すればまた効きます。

かといって数か月毎にボトックスを打ち続けるのは面倒です。本症例も含めて上口唇短縮術に口角挙上術を併施行しないで口角下制筋BTXを繰り返している患者さんはいらっしゃいます。本症例の患者さんはどうされるのでしょう。訊き忘れました。でも次回術後3か月で来院されるまでは保つでしょう。その際にまた今後の検討をしましょう。

こうして、術後3か月で来院されました。

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実は鼻翼縮小術の効果が後戻りが起きました。これまで何度も書いて来ましたが、鼻翼縮小術は二種類を使い分けるべきです。鼻翼が丸く横に張り出して、顔との折れ返り線よりも外にある人はその分を外側切除すれば小さくなります。対して付け根が最大幅に等しい人は付け根を寄せなければ小さくなりません。この様な人に外側切除しても小さくならないばかりかペチャッとした鼻翼になり動物的になって奇異です。

本症例の術前の下面からの画像を見れば判る様に鼻の最大幅は折れ返り線に有りますから、内側に寄せる適応です。39㎜を34㎜にしました。毎回説明して来た様に上白唇短縮術と同時にすると、白唇が膨隆しないので、適切です。鼻翼を内側に寄せる術式は主に3種類有ります。

糸を両側の付け根同志を八の字または四角に架けて、引き寄せる方法は過去に多く行ないました。所謂埋没法ですから、後戻りがあります。これまでに本ブログに何例も提示して来ました。計測して、平均的には寄せた分の半分は戻ると記載していました。でもそれは平均値で、全量近く戻る事もあります。繰り返せば戻りが少なくなると言ってもやはり効果不足の症例があります。だから今は補助的手技と考えています。

鼻の中の粘膜を切除して縫い寄せる方法は、糸と併用すれば戻りが少ないのですが、粘膜は次第に伸びますから後戻りがあり得ます。今から15年前には、切除した創の両側の粘膜下を口蓋骨の骨膜上で剥離して癒着を図る事で後戻りが少なく出来ると考えて何例か試行しました。確かに後戻りは少ないのですが、かなり腫れます。

数年前に皮弁法が開発されました。ある有名な形成外科医(仲良しのDr.H)の考案です。皮弁とは読んで字の如く皮膚を弁状に持ち上げることです。一部を繋げたまま血行を保ってベロッと持ち上げるのです。両側鼻孔底の皮膚を切除して縫合する代わりに、外側を繋げたまま皮弁を作り、両側の創内から骨膜上にトンネルを貫通させて、その中で両側の皮弁を引き寄せて縫合するのです。所詮縫い寄せる方法ですが、皮弁が骨膜に癒着して強固になるので後戻りが少ない筈です。実は少し戻ります。皮弁が癒着するまでは数週間掛かるので、その間にズレるからです。考案者の形成外科医に訊いたら、例としては5㎜寄せたら2㎜は戻るがそれで停まっていると言っていました。でも最も確実な方法です。

今回は上口唇短縮術に鼻翼縮小術の皮弁法を併施しています。白唇を切開してから(あくまでも縫合前)鼻翼縮小術をすると白唇が膨らまないで済みます。最近増えた手術組み合わせです。後戻りが少ない筈です。実際これまでの症例で後戻り1㎜以下の症例がありました。ところが本症例では今回術後3ヶ月で計測したら、39㎜を34㎜にしたのに、37㎜まで後戻りしました。上に書いた様に皮弁が癒着して強固になるまで3ヶ月罹るのですが、その間のズレが多かったのでしょうか?。

何れにしてももう一回皮弁法は難しいと考えます。近々糸で埋没法を追加して補助し手見ようと思います。敢えて言うなら、癒着が弱いから戻ったのなら、糸で寄せれば皮弁が内側に寄せられて再癒着が望めます。とにかく糸を架けてみたい症例です。

そこでもう一つの問題は口角ですが、ボトックスは効いているので、口角は下がっていません。現時点では口角挙上術の予定は立てません。もちろんボトックスが切れたら、下がるでしょう。その時から永久にボトックスをしていくのか、手術の予定を立てるのかは不明です。もしするなら、鼻翼と併施しては如何でしょう。その場合はかなりサービスしますと申し出ました。患者さんは遠方から定期的に診せに来てくれて撮影する予定なので、延長して下さるでしょう。私と患者さんの間には信頼関係が成立していると思います。

従いまして、術後3ヶ月でブログ提示は終了にしないでしょう。今後の展開をお楽しみに!

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。