長らく、ブログは夏休みとなってしまいました。実はたまたま症例が揃わなかっただけです。来院される読者の方はよく症例をご覧いただいているようで、この2週間「まだなの?」と催促されることもありました。症例は来週からとして、前知識から提示していきます。
またまた、人種論から入ります。日本人をはじめとしたアジア人の遺伝子には、身長が低い要素が生じています。というか、白人には身長と体格を大きくする遺伝子が存在していて、平均的な身長の差は歴然です。いくつかの資料を見ると、国別の平均身長で、トップからヨーロッパの国々(コーカソイド)が上位を占めています。USAは多民族国家なので上位ではありません。下位に行くと約10㎝の差をもってアジアの国々(モンゴロイド)が並んでいます。ベルクマンの法則によるといわれています。北の寒冷地での適応者は体格が大きくなるという説で、ヨーロッパの寒冷地で低身長者は淘汰されたということです。体格が大きいほど熱量を作れるから寒さに強いという原理です。北極熊は大きいですよね。そしてアジア人は東南アジアから来たし、大部分は温帯で生育してきたからだというのです。でもこれおかしいと思いませんか?。日本人をはじめとした東アジア人は中国東北からモンゴル出身の遺伝子を持つために寒冷地適応として、一重瞼を生じたし、非わきが遺伝子を生じたということを、これまでに紹介してきました。乾燥寒冷地適応で一重まぶたという損な遺伝子だけ受け継いでしまい。高身長にはならなかったのは残念です。敢えて言えば、非ワキガ遺伝子が生じて、日本人の8割が非ワキガであるのは、得な遺伝子を継いだからですが、残り2割のワキガ遺伝者が、マイノリティーとなってしまっているので可哀そうな話でもあります。白人や黒人には非ワキガ遺伝子はないので、腋臭症は治療対象にならないのです。脱線してしまいましたが、アジア人は白人と比較すると短身長なのは確かです。
体格の大小に比して、顔の縦サイズは変わらなかったのです。顔は頭の下にあり、頭は大きくならなかったのです。幸いにして脳ミソの平均容積は全人種に差が生じなかったのです。つまり、ヨーロッパ人の方が頭がいい、とはならなかったのです。その点は、世界的な知能テストの資料が示しています。日本人はゆとり教育前まではトップクラスでした。これは教育と経済の関連でもあります。また脱線していまいました。
頭と顔が変わらないのに身長に差があれば、比が変わりますよね。白人が八頭身で、日本人は六頭身とされてきました。この100年間で日本人の平均身長は10㎝伸びました。経済成長の結果としての食糧や栄養の充実からだと考えられています。でも、八頭身にはなっていません。環境やホルモンも影響するといわれています。自分のことを言うと、成長期に父が脱走したころに成長が止まったのですが、ホルモンの影響だと考えています。
ここまで縦の顔の大きさを話してきましたが、頭のサイズに差がなければそれはそれで良しとして、だから縦の顔のサイズがないよりは、普通にあればいいのです。赤ちゃんと比べてみれば判りますが、顔面のうち、上顔面に比して、下顔面特に口から下の成長率の方が高く、だから、顎が小さく短いと幼く見えます。これをいいかどうか別にして、顎だけ短い成長不良者が増えているのは確かです。逆に、時折いらっしゃる巨人症的な変異として、高身長の人で顔の特に顎が長い人が多いのは、成長ホルモンの影響によるものです。少なからずの例の見当が付きますよね。
そして、顔の大きさは身長との比で考えるのではなく、横広かどうかが、見た目を左右するのではないでしょうか?。少なくとも、顔の横幅が大きいと美しくないといえます。
そしてここには、骨と、皮下脂肪、筋肉の三要素が関与します。骨はレントゲンを見れば一目瞭然ですが、触れてみても判ります。皮下脂肪はそのまま、サイズに反映しますが、通常顔の皮下脂肪が多い人は全身に多いようです。筋肉の要素は咬筋という顔のいちばん外側の筋肉が影響します。咬筋は四つの咀嚼筋(かみ砕く力を加える筋達)のうちの一つです。下顎骨の表面と頬骨の表面を繋ぎ、咬むとき収縮し、膨隆します。歯ぎしりや、噛みしめで咬筋を使う機会が増えると筋肉が肥厚します。内側は骨ですから、外に張り出します。三要素のうちのどれが原因かが治療目的の診断基準として重要です。
そして、顔の幅には、二つの基準点があるといえます。頬骨部の最大幅と下顎角部(いわゆるエラ)の幅が顔の正面から見ての幅を決めます。耳は除外してください。正面から見ていちばん幅がある部位がどこかには個体差があるのですが、通常は耳の前が最大幅で、下の方が細い逆卵形か逆さ三角型の人が多いです。稀にエラの張ったホームベース型の人もいます。
先程骨と、皮下脂肪、筋肉の三要素が関与すると述べましたが、見た目には輪郭の幅が左右するので、皮膚の上からの幅が大事です。そこで私はよく計測します。簡便には、物差しを当てれば測れますが、立体の投影像を計測しても正確ではありません。私はよく、計測器を用います。実は妊娠時に子宮口を推測する骨盤計測器というのがあるのですが、顔面でもこれを利用できます。来週使用像を提示します。
さて次回の症例提示の前に、基準となる数字を提示しておきます。頬骨部の最大幅が皮膚上で130mm、エラ骨の幅が100mmを覚えておいてください。女性でそれ以上だと、どう見てもデカい顔といえます。測るとばれるので怖いかもしれませんが、みなさん試しに来て下さい。
アッ忘れていた。ついつい呼んでしまいますが、エラは人間にはないんです。半魚人じゃあるまいし!失礼しました。下顎骨角部をエラと呼ぶことが多いのは、見た目が張っているとエラっぽいからですが、実は胎児には「えら」に似た器官があるのをご存じだと思います。正確には鰓に成り損なう部位があります。鰓弓部といいます。胎児は臓器や器官を作っていく過程で、進化の過程をたどります。魚類も脊椎動物ですから、胎児はエラになる部分を一度は作りますが、すぐに進化していき、その部分から顔面の下2/3の多くの部品が出来ます。だから、下顎角部はエラだったので、エラと呼んでもいいことにしましょう。これからは診察中に私が「エラ」といったら、「失礼な!」と言ってください。釈明とご説明をいたします。
ボトックス治療、脂肪溶解駐車の症例と計測器の提示は、次回をお楽しみに。