何故か眼瞼痙攣状態の患者さんが来院します。誰かがどこかに広告宣伝したのでしょうか?。私達でなく他の美容形成外科医?。眼科医?。眼瞼痙攣は眼瞼下垂の随伴症状だという知見が認知されて来たのでしょうか?。ちなみに眼瞼下垂症の診療は真面目な形成外科医、または美容形成外科医が担当するべき分野です。
本症例の患者さんは、眼瞼痙攣とは診断出来ません。ですが、眼瞼を開く力はあるも、開く意志が常時は伝わらない症例です。神経性は器質性と精神性がありますが、精神疾患は認められないのでよく判りません。医療上は、眼瞼下垂症を前葉性と後葉性、更に先天性と後天性に分けます。更に神経性や外傷性、及んで医原性まで原因は多岐に渉ります。この辺りは形成外科以外の専門の他科の診療も求められます。本患者さんにはこれらの原因は診られません。
従来眼瞼痙攣症の患者さんは眼科に罹る事が多く、定期的にボトックスを打たれていました。でも切りがないのです。約20年前に大学病院形成外科の教授が、”眼瞼痙攣の原因は眼瞼下垂である”との発表を形成外科学会で行ない物議を醸し、更にマスコミを利用して啓蒙しました。また加齢性の後天性後葉性眼瞼下垂症は万人に起きて来る事を発表して、美容形成外科領域に広めました。私も学会発表して、チェーン店系のビジネス的美容整形屋にまで広めてしまいました。
通常は、眼瞼痙攣の患者さんは眼瞼下垂症を治療すれば治りました。私は多数の患者さんに感動されてきました。二例だけうまく治らない患者さんがいらっしゃって、仕方なく個人的に教授とコンタクトを取り、眼瞼痙攣の患者さんの相談に乗ってもらい、患者さんを紹介した事もありました。
本症例の患者さんはどうでしょう?。開瞼の意志が足りないとしても、やはりそれは後天性後葉性眼瞼下垂症の病態です。覚醒時は目を開いていないと頭脳行動と身体運動に支障を来しますよね。後葉性でも前葉性でも眼瞼下垂症が進行すると、眼瞼挙筋が収縮しても開瞼が不足するので、より力を入れるように脳が指令します。すると自律神経系の交感神経が賦活して、いろいろな症状を合併します。でも逆に、もし交感神経が賦活されなかったら、開瞼を諦めて開こうとする意志が伝わらなくなります。一見するとあたかも眼瞼痙攣に見えるでしょう。本症例はその様なメカニズムでしょう。
いろいろ考えても、眼瞼下垂を改善すれば治る筈です。画像と経過の説明でお見せします。
症例は21歳女性。眼瞼下垂症を訴えて来院。一重瞼で3年前に埋没法。先天性前葉性眼瞼下垂症は認められる。LF(Levator function)挙筋滑動距離は15㎜で先天性後葉性眼瞼下垂症では有りません。前頭筋収縮の癖は有りますが、抑えています。C.L.使用歴はありませんが、開瞼の意思が弱い。つまり後天性後葉性眼瞼下垂の症状です。フェニレフリンテストで開瞼が向上しません。その診断の下で、切開下垂手術をLT法が適応します。重瞼固定はしっかり掛けます。切除は2〜3㎜で、眼窩脂肪はヘルニアなので退ける、焼く、取るの順で処理します。
内眼角間距離38㎜:眼裂横径27㎜:角膜中心間距離62㎜と目は離れていなくそれでも間が離れていますが、蒙古襞が被さり拘縮しているからです。目頭は蒙古襞の切除では無く、一辺4㎜60度のZ-形成術の適応です。
画像は先ず両側眼瞼部部像から視ていきましょう。
術前はこれしか開きません。後葉は挙筋の収縮の意志が弱く、前葉は二重が浅く狭いです。
デザインは眼瞼の重瞼線は埋没で設定した既存の線で、仰臥位で閉瞼時に5㎜でした。切除幅は3㎜としました。目尻から外側はテーパーしますが、目頭まで同じ幅切除します。目頭で蒙古襞の稜線に中の辺を設定して、60度の4㎜のZ−形成術をデザインします。眼瞼の切開は上の辺に繫がります。開閉像を視れば判ります。
術直後は腫脹が強く開瞼の向上が診られません。実際には術中に挙筋を縫合した時点でよく開いていました。重瞼はしっかり入って、目頭まで繫がっています。これが自然な二重瞼です。
もう一度術前と術直後の閉瞼時像。術前の浅いライン(よく見えないか?)と術後の線は同じです。蒙古襞の被さりも閉瞼時は同じ様に診えます。
術前と術直後の上方視時の画像。腫脹で力が入らないので、開瞼の向上ははっきりは判りません。右は挙がりました。重瞼は切除分広くなりました。3㎜ですと、(3−1)÷2=1㎜広がる筈ですが、腫脹で倍加しています。
下の近接画像群を観ましょう。
目頭の蒙古襞は下眼瞼に繫がっているのでBow String,弓の弦の様にピーンと突っ張ります。だから皮膚が挙がり難いのです。
いつもの使い回しの図。図の様に左の蒙古襞に一辺4㎜でデザインしました。実際にはab辺は蒙古襞の稜線に沿う曲線です。
Z−形成の結果蒙古襞は伸びて被さりが減り、狗縮(突っ張り)が軽減します。腫脹で被さって診えますが、目頭の角の位置は内側へ1.5㎜移動しています。
ここからは経時的に載せます。
翌日診ると、血痂がかなり付着。除去しました。ただし目頭には少なく総称治癒過程は順調。腫脹は強い。開瞼は不明。上は術後1週間で抜糸後。
48時間から腫脹は引き始めました。伴って開瞼は向上中。カーブも曲線化。でも術後1週間の経過としてはかなり腫脹が残っています。しかも早くも目頭の肥厚性瘢痕が診られる。今回は早めにリザベン内服を開始しました。
術後3週間でも腫脹が多く残っています。
まだ開瞼していただけません。腫れているから力が入れにくいのか、力を入れないのかは判りませんが、いずれにしても腫脹は遷延しています。
実は眼瞼は開閉が運動なので、開瞼するために力を入れたり閉瞼するために眼輪筋に力を入れると、腫脹の吸収を促す作用があるのです。例えれば、下腿が浮腫むのは立ちっぱなしか、座りっぱなしで動かさないと起きますよね。ひどいとエコノミークラス症候群です。予防は運動と圧迫です。同じく眼瞼の術後腫脹も、運動が腫脹の予防と吸収に繋がります。ただし眼瞼は圧迫できないので、開閉運動が必要です。術後48時間は、腫脹の亢進を防ぐために運動制限(頻回な瞬き等禁)が功を奏しますが、その後は凝視するのでなく日常的に自然に開閉することが功を奏します。
下列には術後6週間。
「開ましたね!。」私いきなり叫びました。開瞼の意思が伝わります。良かった!。したがって重瞼もくっきりしています。縦横のバランスも整ってきました。
そして術後6週間で目頭の肥厚性瘢痕の悪化はみられない。リザベンが効果的でした。開瞼度はまだ向上中。未だ朝の浮腫みが長引くそうです。浮腫みを予防する漢方も処方しました。
下に術後3ヶ月の画像を載せます。「完成!」としたいのですが・・。
患者さんいきなり「視界が広くなりました。」とお喜びです。私「そうしました。」と偉そうに言いながら、「でもまだ腫れてますかね?!。」と言うと患者さん「むくみやすいのです。」私「朝は浮腫んで、起きて活動したらすぐ引くのが普通です。むくむ要素があれば別で、私だって飲み過ぎた翌日は昼間まで浮腫んでいます。頭の中身もですよ。」と訳の分からない説明します。
近接画像を診れば、重瞼線の下の皮膚が膨れていて、重瞼線の上の皮膚を持ち上げています。これをハム状態と称するのかも知れません。私は決して広くデザインしていません。しかも開瞼を強化しているので、重瞼線下の膨らみは見えなくなるはずです。やはりむくみが遷延しているからでしょう。患者さんのためにむくみを改善する漢方薬を処方継続しました。患者さんは理解されて、また見せて下さることになりました。
当院では、一昨年に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」を遵守しブログを掲載しています。
医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用は眼瞼下垂症の診断が得られれば保険診療で3割負担は約5万円(出来高請求です。)目頭形成術は角膜に掛かる程でないと保険は適用出来ません。自費で28万円+消費税。