2015 . 5 . 1

形成外科、美容外科、美容皮膚科、美容整形 などの科目名称って何を意味するのでしょう。Ⅶ=美容医療の各科目3=

今回こそ、美容医療の各科目を説明致します。

まずは形成外科;ここで、形成外科の診療分野を説明する際に必ず使われる、学会のカテゴリー分けをを転記致します。専門医の症例経験に必須な項目でもあります。

疾患紹介~こんな病気を治します!学会のHPに載っているのは、カテゴリー分けだけなので、簡単に説明を書き加えます。

新鮮熱傷;Ⅲ度や、Ⅱ度深層の体表面積の30%を越える様な熱症(やけど)では、皮膚が無くなる為、体液が漏れだし、循環不全(重症脱水症と同様)で亡くなります。先ず48Hr.の救命治療が優先します。その後は、皮膚を補わないと菌が侵入して亡くなってしまうのを防ぐため、植皮を要します。これらの一連の治療は救命救急科と形成外科医が協力して行います。

新鮮外傷;体表面や形態を損ねる可能性のある、特に顔面等露出部の外傷を、機能的に、またはとにかく治すという目的だけでなく、形態的な修復をもできるだけ配慮するするための知識と技術、経験を形成外科医は醸成していきます。全身的なまたは臓器の外傷を伴っている場合でも、他科と同時進行、または他科の治療の後、形成外科治療にバトンタッチしていくことが多いです。

顔面骨骨折および顔面軟部組織損傷;顔面は複雑な動きをするし、臓器を含み形態も複雑です。表面から見て、皮膚(表皮、真皮)、皮下脂肪、筋膜、筋、骨があり、さらに栄養する血管走行が複雑で、動かす神経=顔面神経等、知覚神経=三叉神経も各層に亘り、機能とともに、形態に大きく影響します。私がいつも書いている「良好な機能は良好な形態に宿り、良好な形態は良好な機能を呈する。」を、顔面はもっとも反映している部位だといえます。顔面の他科=眼窩、耳鼻科、脳外科、歯科口腔外科はそれぞれの臓器を扱いますが、形態を改善する視点では診ません。形成外科は機能と形態の改善を重視する科目ですから、骨から皮膚までの各層をよく頭に入れて、様々に壊れた構造合を目で見ながら、治していくのです。何度も言いますが、この知識は大学医学部では教えません。形成外科診療中に学び、目で見て、頭に入れるのです。ひいてはその知識が美容外科診療にも必須と考えます。

唇裂・口蓋裂;機能的には治さなくてはならない疾患ですが、形態を戻さないと表情という機能も不整のままとまりますから、形成外科診療の範疇です。従来、形成外科が普及する以前の大体40歳以上の人で、他科で治療していた患者さんでは、なんか変なんです。バレバレな人が多いです。特に地方で医療過疎(特に形成外科医が存在しない)ところでは、今でも他科手術例が存在しているので、残念です。ちなみに形成外科が手術したと考えられる症例は私達でもよくわからないです。有名な人の中にもいらっしゃいます。

手、足の先天異常、外傷;手足は運動機能が優先的ですが、露出部ですから、形態も重視されます。例えば切断指の再接着後は、元通りの機能になることは難しくても、見た目に、あるかどうかは重要です。機能と形態のバランスを取った治療は形成外科の得意分野です。また指の血管縫合は顕微鏡手術のトレーニングとしても役立ちます。顕微鏡による血管縫合術は形成外科の独壇場といっても過言ではありません。

その他の先天異常;耳や鼻、顔面の先天異常は、機能的+形態的改善が求められるため、形成外科のコンセプトの範疇です。例えば耳介がなくても、聴覚器の異常と違い、マスクができない機能異常だけです。でも美容的にはないのとあるのは大違いです。審美眼を磨くべき分野だと思います。もう一つ、先天性眼瞼下垂症もここに入れてもいいのですが、後天性眼瞼下垂症との鑑別も考慮しなければならないため、従来はその他のカテゴリーに入れていました。

母斑、血管腫、良性腫瘍;ほくろ、イボ、痣、血管腫なんでも、検査のために切除することが多いです。レーザーで治療することもあります。いずれにしても、傷跡を目立たなくする、少なくてもできものよりはキレイな後にすることが必要です。形成外科の縫合法はこの際のトレーニングが、医師に進歩をもたらすといっても過言ではありません。また手技的というかデザインとして大きなできものの再建を必要とするケースもありますから、皮弁や植皮の使い方の修練にもなります。もう一つ、耳下腺腫瘍は良性が9割を占めるのですが、その耳下腺腫瘍の摘出手術は耳鼻科でなく形成外科医もします。顔面(とは言っても耳の前から顎)を切開する訳だし、顔面神経は動的(Dinamic)な形態に直結するからです。顔面神経は耳の下から出てきて、耳下腺の中を前方に走行してから、SMASの下を走行し、表情筋の裏面に入ります。この構造は米国の美容形成外科医が、今から40年程前にフェイスリフトのために解明したのですが、耳下腺腫瘍の手術時にはこの構造を目で見て、目に焼き付けられます。逆に言うと、耳下腺腫瘍の手術をしたこともない医師がフェイスリフトをするなんて恐ろしいことだと思います。

悪性腫瘍およびそれに関連する再建;皮膚や軟部組織の悪性腫瘍は、拡大切除を要しますから、皮膚軟部組織の再建術も要することが多く、いろいろな方法の使い方の選択と、手術法の修練になります。

瘢痕、瘢痕拘縮、肥厚性瘢痕、ケロイド;日常的に形成外科医というと、傷跡をきれいに治すエキスパートと捉えられています。それも間違いではないと思います。それと言うのも形成外科医は日夜、顔面の皮膚軟部組織の縫合をしているので、傷跡が目立たないような縫合法を日夜練習しているからです。じゃあ、他科は何故そこに力を入れないかというと、皮膚軟部組織より内部の臓器の治療が主体と考えているからです。他科では、皮膚軟部組織の縫合には手をかけないのです。それはそれとして、傷跡をより目立たなくするのは難しいことです。私達としては、精魂込めて丁寧に縫合すれば、現状よりは良くなると予想されたら、正直にそう言います。また、傷跡が拘縮(引きつれ、短縮)していて機能障害があるなら、治す方法を探します。皮弁形成術や植皮術、Z−形成術やW−形成術等硃鈴に応じて様々な方法を駆使します。ケロイド、肥厚性瘢痕(ケロイドもどき)は手術治療の成功率が低いと予想される際にも、正直に推測される%を提示します。

褥瘡、難治性潰瘍;皮膚軟部組織の欠損は、修復しないと感染が悪化します。いろいろな方法で治す様に試みます。これも、外科的には皮膚科ではなく、形成外科の範疇です。

美容外科;本邦では、美容外科と形成外科は別の標榜科目です。日本形成外科学会のカテゴリーに美容外科が入っているのはちがうんじゃないと思います。たぶんですが、標榜科目として認可された年が、形成外科は昭和51年で美容外科は昭和53年ですから、先にできた形成外科が美容外科を取り込んでしまったのでしょう。美容外科については別の項目で説明します。

その他;眼瞼下垂は、先天性と後天性の鑑別が必要で、治療法が違うため、後天性はその他のカテゴリーとしています。これまで再三ご説明してきましたから、ここでは割愛します。他のその他の項目は、その他ですからいろいろあり、どこまでを入れるかは学会が認定することなので、ここでは割愛します。

手技に関して;上記のどの範疇でも、皮弁や植皮や、縫合法。その他形成外科に特有の手技があります。そこには従って、形成外科分野特有の解剖、生理の知識が伴っていますし、経験していかなければ判らない知識が多々あります。これもこれまで、再三説明してきましたが、上記にカテゴリー毎にもグダグダ書きましたから、ここでは割愛します。

今回もまた、ゴチャゴチャ説明してもなんだか判りにくいですよね。これだから、国民に形成外科と美容外科が理解されないのです。だいたいにして、別の標榜科目である美容外科が入っていることもおかしいと思いませんか?。

もっと判り易くざっくりと説明すれば、形成外科とは、美容的な(形態的な)疾患、体表から見た目が問題となる疾患。でもあくまでも、機能的異常を伴う疾患や外傷。ついでに皮膚軟部組織の取り扱いを極めた結果、創傷治癒を研究し、キレイに治す技も研鑽する診療科目です。

やはりこれでもなんだか?。美容医療の中で疾患と認められるためには、何らかの原因があればいいと言うことです。先天性でも、後天性でも、加齢性でも、外傷性でも。美容医療の中で原因があれば形成外科での保険診療に該当することがあります。

ここまで書いてきて、形成外科を少しはご理解頂けましたでしょうか?。相変わらず長くなったのでこんなところで、次回他の科目を説明します。なんか思い出したら、形成外科についても追加します。