美容医療の科目名の説明をしてきましたが、今回やっと美容外科の説明を始めたいと思います。
まず、もう一度医療の目的を説明します。第一には、生命の維持。第二に、機能の維持再建。第三に、形態の改善と進歩してきたのです。美容医療とは、形態の改善ですから、第三の目的ですが、同時に機能改善をも図ることがあり、また時には生命維持も同時進行しなければならないこともあるのが、形成外科分野。形態の改善を主目的とするのが美容外科医療と分けられると考えられます。もちろん医療ですから、生命の危機や機能の損傷を来さないような医学的知識は備えなければなりません。
美容外科は、あくまでも医療の中の一分野で標榜科目です。形態の改善を主目的とするのですが、医師にしかできません。何故なら、侵襲を伴うからです。医師免許は、医学的な最低限の知識を持っていると国家から認められて、患者の診療において、患者のために行う行為は、患者の福祉のために行う限り侵襲を伴っても許されます。例えば、もし医師でない者が手術したら障害罪です。医師の管理下でなく薬を注射したら、同様です。医薬品の飲み薬(内服薬)は医師が処方しなければなりません。同様に美容外科でも、手術も注入療法も、医療行為です。ですから、非医師が侵襲を伴う可能性のある美容行為をしてはいけません。逆に言うと、美容外科は侵襲を伴わなければ、効果的ではないことが多いので、医療なのです。
ゴチャゴチャ言ってしまいましたが、美容外科は医療です。ですから、医学的知識の下に施行されなければなりません。何度も言いますが、大学医学部では最低限の医学知識を学び、その結果医師免許を得るだけです。専門的医学知識は、卒業後に学ばなくてはなりません。ところが、美容外科の患者さんは、広告宣伝により誘引され易く、大学での研鑽機会が少ないため、卒後に学ぶ機会が少ないのです。そこで、形成外科での研修が代替として必要です。形成外科と美容外科は、形態の改善を目的とするのですから、美容医療の両輪のようなもので、必要とされる医学知識と技術はオーバーラップしています。ですから、美容外科医は形成外科を大学病院等で研鑽するべきだと思います。
敢えて言いますが、美容外科チェーンクリニックに卒後すぐ入職したり、形成外科を研修しないで他科研修の後に,美容外科に就職したりした医師があとを断ちませんが、危ない話ですね。日本の医療制度はヤバいのです。欧米では、形成外科を研修してから美容外科も研修して、各科の専門医を取得いなければ,科目を標榜しての開業はできない様な法律になっています。
美容外科という科目の説明をしようと思っていたのに、違う話になってしまいました。何故このシリーズを始めたか思い出しました。ある皮膚科医が、「皮膚科を研修してないのに,美容皮膚科を開業する医者なんているんですか?」とほざいた時に思いついたことでした。「診療科目は自由に標榜できるのですよ!」って教えてあげようと思ったからです。でも逆に、それではいけないことを説いてきました。実は数年後にはUSAに学び、専門医がなくては標榜できなくなる方向となっています。TPPの影響でしょうか?。いずれにしても、今ある美容外科クリニックのうち多くの医師は美容外科の標榜を禁止される可能性があります。私達は,100人もいないJSAPSの専門医ですから継続できますが、そうなることやら分りません。もしかしたらJSASの医師達は先祖返りして、美容整形を標榜するとか言い出すかも知れません。それもありかも知れませんね。
美容外科と形成外科、美容整形の名称を説明したことになっていませんでした。美容皮膚科を含めて,次回から説明していきます。