美容外科診療のレパートリーを紹介します。前回頭の上から始めたら面白くなさそうなので、顔を縦に三つに分けて、上顔面、中顔面、下顔面とし、さらに、正面輪郭と側面輪郭に分け、さらに美的治療と加齢に対する再建治療に分けていきたいと思います。
まずは上顔面ですが、頭は顔でなく、額からまぶたまでです。皆さんの中に(このブログをご覧の方は)、ご理解をされている方も多いと思いますが、額とまぶたは機能的に関係性が高いのです。まぶたの開きが弱る眼瞼下垂に伴って、眉毛を挙げる前頭筋の収縮が反射的に起きるからです。したがって、額の横じわは眼瞼の影響で起きるので、まぶたの治療とタイアップしていかなければ治せません。
まぶたの診療は、機能と形態のバランスが重要で、美容外科のみならず、形成外科の分野を学んでいない医師にはかかるべきでありません。したがって、額のしわ、くぼみの治療も同様です。まぶたの診療は、これまで何回もこのブログで説明してきましたのでそちらをご覧いただくとして、額の形態と機能としては、
横じわが前頭筋の収縮による場合、二つの戦略を提示します。1、ボトックスを先行してみて、まぶたが重いなら、眼瞼の機能的手術をお勧めする。2、逆に眼瞼下垂をまず治療してから、前頭筋収縮反射癖が治らないなら、ボトックスを使う。反射神経回路は長年の経過中に神経繊維ができてしまうと必要なくなってもすぐにスイッチが切れないことがあるからです。どちらにしても少量の注射からします。最近では、丁度いい量が判る様になっています。
アジア人の骨格には特徴があり、額も特殊です。上に行くに従って後方に傾斜しているケースと、眉上にくぼみがあるケースがあります。横幅も上下長も短いです。
額は頭の一部で、脳が入っている頭蓋骨の前方の壁です。人類は脳の容積が増えるに従って額が前方に大きくなり、また上方へも伸びたので額の前方へ向いた面が広くなってきました。何故かアジア人では白人に比べて、平均的に額が狭く、前方への丸い突出が少ないのです。アジア人では6等身、白人では8等身といわれる様に身長の割には頭が大きいので、脳の容積が少ない訳ではないと思います。どこに脳が詰まっているのかというと、頭蓋骨が横長なのです。残念ながら、そのために顔の骨も横長です。顔が長くなくて頬骨部の幅が大きいのがアジア人の特徴です。近年のアジア人はエラ(下顎骨角部)の幅は小さくなりました。エラは咬むための骨で頭蓋骨ではなく、言って見れば消化器の一部です。柔らかい食物を取る様になった日本人の特徴です。統計だけでなく、生活習慣から出した科学的(医学的)データで証明されています。逆に、相変わらず硬い肉を食べる白人は、相変わらずエラが張っていますよね。
話しが中顔面、下顔面に行くのは次回以降とします。脳の中でも額の後方、つまり前頭骨の後ろには、前頭葉という部位があります。脳の中でも高次機能額を司る部位で所謂、知性、理性、思考のセンターです。そうか、アジア人が反知性的なのはこのためかと思うと理解できます。日本人は最近貧乏なので、大多数の人が本能で生きています。これは前頭葉の発達が足りない人種だからなのかも知れません。東アジア人野中でも中韓が非文化的なのは人種的に理解できます。
額の上下長は、後方傾斜が強いと短く見え、さらに眉骨の上に陥没線があると後退して見えます。年齢とともに、脳は萎縮しますが、頭蓋骨は小さくなりません。でも額の筋肉と皮膚軟部組織は薄くなります。加齢により額にしわや陥没が出てくるのはこのためです。加齢現象はやはり、衰えた顔貌になるのです。もちろん上顔面はまぶたによる影響も、強く額のダイナミックな(動的な)変形を来します。これまで何度も説明して来たので割愛します。
治療に戻ると、しわに対しては、ボトックスが適応ですが、まぶたが原因の事が多いのでそちらを先行します。でも経年的にしわが刻まれて来たら、形態的に治さなければなりません。骨の形が悪い、または軟部組織が減って形が悪い額には、Augmentation 増大術が求められます。aug. は音楽用語で半音増大という意味で楽譜上で見た事もあるかも知れません。増大術は何か?、組織増量法です。何かを入れてしわを埋める。陥没を平坦にするまたは前に出す。後退している上方を前に出して長く見せる。など増大方向は多種あります。
入れるものは固体と液体に分けられます。固体はシリコンが代表です。吸収されないのと量が作れるのが長所ですが、柔らかいため、身体に負けて曲がったり浮いたりします。大きい物だと入れる創が大きくなります。私も昔は行ったのですが、最近10年くらいはしていません。修正術はたまに行います。20年くらい前から、顆粒状のアパタイトを固めて面を作る方法がトライされています。骨になるのが長所ですが、うまく形を作れないのが短所です。やった事はやった事はないのですが、他院の結果を2例見た事があります。どちらも形がイマイチでした。
液体でも、シリコンゼリーが大昔使われました。もちろん動くし、吸収されないのはいいが、経年的に動いて行く、額に入れたのが眉上に貯まってしまって、Frankenstein 状態になります。歌手のミコさんが有名ですよね。液体でも非吸収性の場合経年変化が起きるし、さて治そうと思っても難しいのです。ちなみにシリコンオイルは新幹線の車軸の潤滑油に使われるのと同じ、世界最高品質の物です。
ここにご紹介したシリコンは石から生成します。アパタイトはカルシウムを固めて作ります。材料がどこにでもある安価な物なので、大きな物が作れます。額では体積として、最低5立方㌢=5cc、最高30ccも欲しいときがあります。
そこで、吸収性の液体ではヒアルロン酸に勝る物はありません。硬さ柔らかさが多種類あり、注射後にヒアルロン酸は何から作るのか?、大きく分けて二種類あります。膝関節に注射するヒアルロン酸は、30年以上前からあります。動物から抽出します。ただし濃度が1%です。濃い物を作ったのは、日本の会社でした。味の素です。美容医療に利用できる3%以上の物が作られました。2000年以前はこれが多く使われていました。ただし動物から抽出する際に異物蛋白が微量でも混じる事があり、アレルギーが稀に起きました。21世紀になってスエーデンの会社が、遺伝子組み換えで製品を作りました。異物の混入はありません。純粋で濃度の高いヒアルロン酸が利用できる様になりました。現在多くの美容医療で使われています。
さてどちらにしても、製造法からして高価です。美容医療に用いる3%異常の濃度だと、1cc当たりの原価が最低2万円はします。額では大変な価格になります。額は面積が広く、ある程度の濃度と量が必要なので、通常2ccで安い物でも4万円分は使われます。これは濃度の低い物ですから、半年は経たないうちに吸収されます。濃度の高い物で、4倍の料金を掛けても、1年がいいところです。定期的に注射してメンテナンスしている患者さんは数名います。
他に前額リフトもたまに行います。どうやっても腫脹が目立つ部位なのと、挙げていいケースが少ない。明瞭な眉毛下垂の人や、顔面神経麻痺後の患者さんにだけの適応です。割と簡単で、層を確実判別すればいい結果が出せます。そうです。これは形成外科医出身の美容外科医でなければ難しい手術です。
上顔面は、ボトックス注射がほとんどで、ヒアルロン酸注射を繰り返している患者さんが少々。リフトは稀な症例です。
今回は美容医学というか美学の勉強会の様になりました。次の中顔面はもっと長くなりそうなので、しばらくお待ちください。