またまた話が飛んでしまいますが、なぜか私の発明した?手術を行う患者さんが続いたので、提示してみたいと思います。2000年(平成12年)に日本美容外科学会(JSAPS)で発表し、論文にも書いた方法です。
「後天性耳垂裂に対する手術法」副題:懸垂型ピアスにより慢性的に生じた耳垂裂をピアス孔を同時に作成しながら修復する方法。よくある誰それ式何々法とは違い、本当にオリジナルな手術法です。
欧米では懸垂型ピアス,dangling pierceを着けることが多いのです。耳飾りは有史以来の欧米での文化です。ですから、欧米では、耳垂(耳たぶ)が重さに耐えきれずに、ピアス孔が徐々に伸びてしまい、しまいには割れてしまう=後天性耳垂裂が多いのです。したがって、修復手術法も多く報告されています。当時私が調べたら、14法もありました。日本では洋式文化が導入されるまでは耳飾りの風習が蔓延していなかったのですが、近年では、懸垂型ピアスをする女性も散見されます。しかも、孔が伸びている人もいます。そういう人を見ると、「いつか落ちますよ!」って教えてあげたくなります。
さて割れてしまったら=裂となったら、手術でないと復元できません。しかし、裂の前後の壁は皮膚が再生してしまっているので、これを除去しないとくっつかないのです。そこで私は考えたのです。捨てる皮膚を使ってピアスを入れるトンネルを作ってしまおう。皮膚トンネルを作れば強いものができるはずだ。調べた結果、フランスで(さすがおしゃれの国)そういう方法が報告されていました。しかし、その方法の写真を見ると耳垂のカーブが若干変形している。日本人は傷跡が目立つことのある人種なのでこれはまずい。そこで皮弁を使って変形を防ぐデザインを組み合わせました。
こうしてオリジナルな方法を考案し、学会に報告したのです。なにせ、日本人では症例が少ない。それに手術までして修復するニーズが掘り起こせないでいました。修復術ですから、形成外科の担当で、啓蒙不足でした。
ところが、何故か、一昨日と昨日、立て続けに症例に巡り合いました。まさか、ブログを再開したためではないでしょう。但し、ネット時代ですから、この論文は検索すると誰でも見ることができます。でも、いくら患者さんでも、わざわざ見に行かないよね。なんて困惑しながら、しかし患者さんに頼られた幸せを感じながら、真剣に手術をした2日間でした。
結果は直後にピアスを入れて帰ります。1週間後の抜糸まで保てれば、懸垂型も可能です。まずは耳だけの術前、術後の写真をご覧ください。来週には懸垂型ピアスを着けた写真もお見せできると思います。