口唇とは赤い唇だけでなく、医学的には鼻の下の皮膚も口唇とです。赤い唇を赤唇、肌色の唇を白唇と言い分けます。ですから、上口唇短縮術はどこかを切除縫合することになります。昔20年ほど前までは、父は赤唇縁とその上の皮膚を切除する手術をしていました。私が引き継いだ患者さんのうち何人かも受けています。口紅をしていればよく判らないのですが、よく見ると赤唇縁の微妙なカーブが消失しているため何か不自然です。
そこで、最近学会でも報告されているのですが、鼻翼基部から鼻柱基部の外鼻孔底の堤状の高まりの下に傷を持って来れば、折れかえり線なので傷跡が見えにくくなると考えられ、そこで切除するようになりました。但し、形成外科認定医が、形成外科的縫合で丁寧に縫い合わせないと、何しろ動くところですから傷跡の幅が出てきてしまい、見え見えの傷跡になってしまいます。そういう意味では、非形成外科医の多いチェーン店では手術を受けない方がいいと思います。
上口唇短縮術については、今回もう一例提示できるので、その術後経過と並列でお見せしようと思います。
12月26日手術、下左図が術前、下中図がデザイン、下右図が術直後です。
上の図も左が術前、右が術直後ですが、顔全体を見ると上口唇(鼻の下)の長さが変わったのが、よく解ると思います。術直後は麻酔の影響と腫脹のために、ボテッとしているのは否めませんが。
抜糸後と約2か月後です。抜糸時には、まだ傷跡が見えますが、メイクで隠せます。まだ腫脹があり、ボテッと感が残っています。2か月目には、傷跡は見えなく、ボテッと感も取れてすっきりしました。口唇の運動能力にも異常はありません。
この手術には、3タイプの適応者がいます。
1:元来鼻の下(白赤唇とも)が長い人。赤唇が薄く、裏返りがない人。鼻尖(鼻の頭)が上を向いていて相対的に口唇が長く見える人。また、骨格的に歯槽骨(鼻の下から歯茎の間)が前に傾斜している人も長く見えます。日本人の中には、以上のどれかや組み合わせのある人は少なからずいます。この症例では、長い方ですし、赤唇の厚さはなくはないのですが、いい女の女性的魅力としてはもう少しあってもいいとは言えます。傾斜も若干あります。
2:加齢とともに、白唇は長くなり、赤唇はうすくなります。これは間違いないです。みなさんのうち、昔の写真をお持ちの方は、見比べてみれば判るはずです。余談ですが、逆に下顎は、加齢とともに短くなります。下赤唇から頤(顎先)の長さです。歯槽骨は上下とも加齢に伴い短くなります。咬合し運動する部位だから、すり減るのです。骨粗鬆症の一種です。歯周病で歯の長さが減るとさらに進みます。実は上も下も骨は短くなるのですが、下は皮膚や軟部組織も短くなるのに、上は皮膚軟や軟部組織が薄くはなりこそすれ、短くなりません。したがって、おばあちゃんは内側に捲れ込んだ唇になっていますよね。 つまり、もともと長い白唇の人はもちろん、長くはない人も、加齢現象で上白唇が長くなると、年寄りくさくなるなるので、アンチエイジングのためにこの手術は適応があります。白唇、赤唇とも若返ります。
3:1と2の組み合わせです。元来適応のある白唇、赤唇の人は、そうでない人に比べ、口もとの加齢が早く見えるのです。加齢が進んでいないのに、加齢現象による加齢顔貌に見えるときはお早めに。
この手術は、顔をの見えるところを切開する数少ない美容医療手術です。その点も含めてもう一例を次回にご紹介します。