2017 . 6 . 29

上口唇短縮術の症例中の最も経過の早い一例

今流行りの上口唇短縮術の画像です。ブログで経過を追って提示しているので、信用が於けるとの事です。今回また、3ヶ月での「完成!」宣言に到りました。

実は最近来院した初診患者さんから、「経過が長い手術ですね。追って行くのが面倒なので、一人ずつ並べてみせて欲しいわ。」と頼まれ、「解りました何例もあるから、並べてみましょう。」と安請け合いしてしまいました。ところが、1年以上前の画像は取り出せなかったのです。仕方なく5例並べました。その前にも3例モニター症例があったので、8例の提示可能症例がありました。流行り出したのは3年前くらいからで、実際には20例近くの症例があります。

印象として本症例は最も経過が早い症例でしょう。こんなに治りが良くて、綺麗で、品が良くて、しかも患者さんもはにかみながら薄笑い、お悦び。術後診察の際に、診る度にこちらが魅入られる症例です。やはり口唇短縮術は最終`兵器`です。

ブログに症例を提示する目的は、患者さんに結果の良しあしを認識していていただきたいからです。経過も予め理解していていただき診療に臨むためのスケデュール調整にも役立てていただきたいからです。でも本症例の患者さんは上手くダウンタイムをやり過ごしました。いや、予想外に軽微なダウンタイムでほとんど困らなかったそうです。そうです。上口唇短縮術は抜糸後メイクで隠せます。腫脹があろうが、動かさないときは異常感が見えない。内出血は白唇ならコンシーラーでプラス1週間隠せば治るし、赤唇部なら口紅で隠せます。

形態的な変形がダウンタイムにも隠せるか、マスクでやり過ごせる。スケデュールを上手く立てれば、意外と困らない手術なのでしょう。

症例提示をします。50歳代の女性。加齢に伴い弛緩し、口唇長18㎜となる。口角が余り下がっていない 。デザインは鼻翼基部〜鼻翼基部で可能。裏返りを僅かに求めて皮下脂肪層半層まで切除のプランとしました。

術前の正面層と右側面像。デザイン図=切除は4㎜です。

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下に術直後の画像。創は目立ちます。腫脹も起きます。

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下に術翌日の画像。腫脹が亢進します。併して運動障害も生じます。創は赤く炎症を呈しています。でも静的形態は良好化しています。

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1週間で抜糸しました。まだ創跡は赤い線です。腫脹の改善は早い方です。運動障害は解消しつつあります。

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術後2週間ではメイクして来院されました。創跡は隠せて生活に支障はないそうです。まだ創跡周囲の組織が硬く自覚症状は感じるそうですが、運動痛や運動障害はないそうです。

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そして術後4週間で撮影させていただきました。今回はノーメイクです。さすがに傷跡はまだ赤い線が診られますが、まったく幅は出ていません。

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そして、術後3ヶ月が経ちました。

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形態的に良好で、傷跡も目立たないので、お悦びです。口唇の白唇から赤唇の外反度も短くなった分傾斜が変わり、赤唇はわずかに厚みが出ました。品の良い程度に裏返っています。とても50歳代に見えなく、なかなかセクシーです。いや失礼しました、色っぽいと表現しましょう。術前からの計画通り、相対的な口角の下垂は見られません。3ヶ月の経過を提示して来たのですが、確かに最も早いです。素敵な患者さんでした。

形成外科医歴30年、美容外科医歴30年である私の行うこの手術のポイントを2点説明します。

一つ目のポイント:上口唇の短縮術を求められる患者さんは、大部分が長いから治したいのですが、短くすれば二次的効果として、外反の程度が変化します。角度がかわるからです。ですが、切除の深さの違いで外反の角度を調節出来ます。3通り使い分けます。皮下脂肪層の半層まで切除すると、それなりに裏返ります。短くして更に外反を求めるとやり過ぎ感も感じられるでしょう。これまでの20例のうち2例だけ行ないました。これまでの20例ののうちのほとんどの症例は、皮下脂肪まで全層切除して、軽度の外反を狙います。白唇部が長い多くの患者さんは、赤唇が厚くないため、少々の外反を求めます。ブログ提示の症例で多くは丁度良く外反しています。筋層(口輪筋まで切除すると外反が最小限に出来ますが、筋を切除すると腫脹や後出血が必発となり、ダウンタイムがすごい事になるので、奨めません。一例施行しましたが、口腔内まで腫れて大変でした。

最近では前二者法を使い分けていますが、外反を狙うと変わり過ぎますが、それこそI.S.っぽく出来ます。ほとんどが皮下脂肪層下までの切除にしています。いずれにしてもこの層の同定には解剖学的知識と経験を要します。形成外科医は口唇裂の診療に於いて詳しく学びます。外傷や腫瘍の診療に於いても口唇の解剖を熟知して行きます。だから術前の診察時に決めたら、もうイメージが浮かびます。こんなところも形成外科医の優位性です。

二つ目のポイント:口唇(白唇部)短縮術=切除術は、顔の前を切開する数少ない美容医療の手術です。ですから手術の有用性は、何と言ってもいかに傷痕が目立たなくなるかに尽きます。有用性とは有効性と有害事象のバランスです。有効性はあるに決まっている手術です。加齢に伴って伸びるから短縮させたいし、若いのに鼻の下が伸びている症例は言葉の通り間抜けで品に欠けます。治したい人はたくさん居るのに、傷が見える部分だからにわかには受けられません。

そこで何と言っても真皮縫合の優劣が左右します。この手術でも縫合は3層します。筋縫合、真皮縫合、皮膚縫合の順ですが、真皮縫合の終了した時点で傷が隙間なく合わさっていれば、傷跡の幅が中期的に拡がりません。この技術は、形成外科医の修練でしか身に着けられません。

日本では、形成外科医療を修練していなくても美容外科を開業できる世界でもまれな医療制度です。非形成外科医が美容外科を開業して、技術が伴わないのに切開手術をします。当院形成外科には、他の美容整形屋で受けて傷跡の幅が広がった人が、ひっきりなしに来院しますから私達が治しています。先日S美容外科ででほくろを切除して縫合したら、元のほくろよりも創跡の方が大きくなったなんて患者さんが来院されました。信じられないのですが彼等ならしそうなことです。もちろん私が治してあげました。

とにかく、上口唇切除術が流行っているのは、真面目に、丁寧に手術して来た私の努力を皆さんが買ってくれるからでしょう。これからも頑張ります。根を詰めて頑張らないと良好な結果を得られませんから!。