2016 . 12 . 28

上口唇短縮術の症例経過です。やりすぎか?。でも悦んでいます!。口周りの説明も。

口唇短縮術の症例の経過の画像を一通提示しますが、症例の評価はまだまだ完成ではありません。

このところ上口唇(白唇部)を短くしたい患者さんの来院が増加しています。このブログを見て来院する人が多く、経過が良好で(傷跡が目立たなくなる。)詳しい内容が説明してある為に安心だという患者さんの声を聴きます。ただしこの手術は経過が長い。しかも傷が見える手術ですから、すごい絵になります。今回は手術当日と1週間後を画像提示しますが、苦手な人もいるかと思い、途中の画像は縮小し、拡大写真は最下段に載せます。怖がりの人は、画像を見ないで読むだけにしてください。なお今回はその後に詳しい解説を載せます。濃い内容です。

症例は30歳、女性。USAの白人と日本人のハーフでタレントさん。白人の要素として、顔面が縦横の比率的に長い。上中下顔面の長さもすべて6㎝以上で、頬骨最大幅は130mm以下と細い。ところが下顔面の縦長の中で、鼻の下が特に長いためバランスが悪い。鼻の下の皮膚の部分も唇です。赤い唇(=赤唇部)と白い唇(=白唇部)と言います。ただしこの手術は経過が長い。今回の画像提示でも術後2週間ではまだ結果が出ていません。

私は計測ポイントとして、鼻柱基部(中央の鼻と白唇部の折れ返り点)と赤唇部の中央(キュ―ピットの弓の最下点)の長さを計ります。15mm以下が標準です。症例患者さんでは20mmありました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA術前の画像を見ると鼻の下が間延びしている。アジア人でもあるため上下顎が突出している。Bimaxillary Protrusion です。所謂エステティックラインAesthetic line(米語でない)がプラス=口が出ているため、間延び感が余計に目立つ典型的な例です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAデザインです。切除幅は6㎜としました。実は仰臥位になると、間延びしていない(重力で伸びていた。)為18㎜でした。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA縫合を行った直後です。かなり切除したためか?、口が閉じません。でも術前のシミュレーションでは閉じたので心配はしません。でも半開きの口元が好きだそうです。確かに鼻の下が長いよりは半開きの口の方がずっといいです。

口元の長さと突出は、印象として品性を左右します。今時の若い人に品性なんて求めても無駄かも知れません。でも考えてみて下さい。「鼻の下を伸ばす。」という言葉は現存します。また、口の出ていない動物は人間だけです。口で食べないで手で食べるからです。これが人間らしさです。

ここからは拡大画像を載せます。私の手術法の特徴とその重要性も解説します。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

上左が術前、上右がデザインの画像です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

上画像は術後1週間の抜糸直後です。左の様に力を入れて口を閉じたら閉じます。右の様に力を抜くと開いています。いずれにしても創の癒合状態がよくありません。鼻翼を回る部分が余剰が生じている為に癒合が悪いのと膨らみが残らないか懸念されるのです。今後の経過観察を要します。とにかく経過の長い手術ではあります。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA術後2週間で経過を見せに来ていただきました。ご覧の通り、創は急激に治りつつあります。患者さんは「難しい手術を要求してすみません!。治りが遅くなって、結果がなかなか出ないのでお困りでしょう。ブログでの症例としても使い難くて済みません。でもブログは面白いですね。」と仰いながら写真を撮らせて下さいました。私としては、「いやいやかえってこちらが心配していました。難しいからこそやりがいがある。当然経過の日時は要します。」と言いたかったのですが、伝えられませんでしたのでここに謝辞を載せます。(何か個人的な手紙のやり取りみたいになってしまいました。)創跡の問題はこれから検討していきましょう。

さて本題です。今回は口周りの手術の説明を加えていきたいと思います。

口周りとは、表面的には白唇部と鼻唇角とが重要です。口の中には歯があり、歯は歯茎から生えていますが、歯茎は歯槽骨を包んでいますから前後関係は骨が決めます。それぞれに対応する治療法をご紹介します。

まず歯槽骨と歯ですが、日本人では前突前傾がむしろ典型です。外国の漫画で出っ歯に書かれているのはその為です。歯の傾斜と乱れは矯正で治せますが、矯正では骨は治せませんから意味が無いため、アジア人ではしないのが普通です。骨を切って下げる手術は後遺症や生体リスクがあり、本邦でも経験豊富な医師は数える程しか居りません。私は他の部位(特にまぶた、鼻、口周り)の手術で手一杯ですから、骨切りまで手が回りません。私は周囲との位置関係の修正で代替する様に進めています。

白唇部は本症例の様に、切除が確実で持続性があります。糸で引き締める方法が喧伝されていますが、持続性はありません。何本も糸を入れて孔だけ開いてすぐ戻るのが関の山です。切除法でも創跡が消えるに等しいのは、形成外科医の得意分野です。顔の前面を切る美容外科手術は数少ないのですが、形成外科医がすれば綺麗に治ります。本症例の様な経過でも目立たなくなります。

ところでデザイン的に鼻翼までの切開にすると、口角部分が引き上げられません。本症例に於いての術前術後を比較をして見て下さい。術後は相対的に口角が下がっていますよね。本症例でも併施を勧めたのですが、白唇部切除術の程度が大きかったので段階的に行なう事となりました。ブログで何症例か提示しましたが、口角部切除による挙上術の結果はとても綺麗です。創跡も見えません。最近術後1ヶ月の患者さんを見た際には術者の私でもよく判らない程目立ちませんでした。欧米では、アンチエイジングの手術としてMouth Cornar Lift という論文があります。これから我国でもも流行りそうです、

口が出ているのというのは相対的位置関係です。口は鼻と頤(下顎の下端)に挟まれています。横から見て三点が直線状にあるのが理想とされます。エステティクラインと言います。鼻が低いか頤が後退しているから相対的に口が出ている場合、鼻か頤のどちらかを前に出せば綺麗な(エステティックな)口元を作れる事があります。また、口が出ていて鼻柱との角度が鋭角だと、それだけで品性に欠けて見られます。そこで私は時に鼻唇角の増大術を施行します。何かを入れて角度を鋭角から直角にするのです。欧米では鼻尖が下がって鼻唇角が喰い込んだ人を`魔法使いのお婆さん`と比喩して大変に嫌われます。だからこの角度は重要です。白人は口が出ていなくても鼻が下がっている者が多く、アジア人では口が出ているからですから、方向性は違いますが、角度を帰るという点では同じで増大術が紹介されています。ここにシリコンプロテーシスを入れても安全ですし、耳介軟骨でも量が足ります。本邦では知っている美容外科医が少なく、施行医は限られますが、数年前に私の友人が書物に記載したので普及するかも知れません。

相対的に鼻と頤を前に出す方法はヒアルロン酸の注射がポピュラーですが、私は硬性物質での手術も得意とします。プロテーシスと軟骨を使い分けます。JSAPS(厚労省が認める本邦唯一の美容外科学会)でも推奨されています。ただし形成外科では異常な形態(外傷や先天性疾患)を何とか正常に戻すだけの治療しか出来ませんから、美容的観点は乏しく、美しい鼻は美容外科形成外科の経験ほうふな医師が適切です。

.後段に紹介した治療法の中には意外と知られていない者もあります。昨今のインターネット広告戦略でも説明が難しいからでしょう。今回のブログを見直してても理解が難しい記載がありますでしょう。申し訳ありませんが、適切な選択の為には一人ひとり違う形態をよく観察(診察)して検討する事が求められます。本症例の患者さんは私の診察結果を理解されて嬉しい結果を得つつあります。その点でいい症例です。今後の経過が楽しみですね。口角挙上術はいつかしましょうね!?。