2014 . 9 . 19

片側の眼瞼下垂手術は難しいんです。→経過良好

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いきなり写真を羅列します。上左図が術前。上右図が術直後。下左図が1週間後。下右図が2週間後です。

症例は26歳の女性。右上眼瞼のくぼみ目を気にされて来院。いきなり片側の眼瞼下垂が原因ではないかと問われました。「よく知ってますね!。」「「私がそう言おうとしたんです。」と私は診察を進めます。計測すると、第一眼位(=正面視で開瞼を普通にしていただくこと)で左7㎜右6㎜ 挙筋滑動距離は12㎜と正常。ご覧のとおり、右にくぼみ目があり、眉が挙がっています(前頭筋が収縮している)。

今回は三つの点を考察します。

1:眉が挙がっている場合、これは眼瞼下垂であると断言できる。頻度の多い両側例では、閉瞼時と開瞼時を比べて見なければ、どれだけ挙がっているかは患者さん本人は見えない(閉瞼時は鏡を見えないから)。しかし片側の場合。左右の位置から患者さんも判る。第一眼位での差があれば眼瞼下垂である。敢えて言えば、自己診断テスト法としてFMCT Frontal Muscle Contruction Testという方法があります。閉瞼時に眉を指で軽く触れておきながら、ゆっくり開瞼すると眉が動くのが判るというテスト法です。前にも説明しましたが、もう一度言います。目を開く際に眉が動くのは眼瞼下垂です。反射的に動いているので随意運動ではなく、無意識に動かしているのです。「えっ私は眉を動かしていないわよ!」と患者さんが主張することがあるのはこのためです。人間は意識下に生活していますが、筋肉運動のほとんどは反射的にされています。例えば、歩く際に「歩く!。」という意志は意識下ですが、足と手をどう動かしていくかは無意識でしょ。逆に歩く際に同じ側の手と足を 同時に前へ出すことは、意識しなければできませんよね。瞼を開く筋力が弱いために、眉が動かなければ瞼が開きにくいことになった人は(つまり眼瞼下垂の人は)、眉を反射的に意識せずにあげる様になっているのです。

2:眼位と顔位を注意してみましょう。目の開きや二重の幅、形を比較しながら提示していくには、顔の向きや目線、まぶたの力の入れ方を同じくしていかなければ、お見せしてもなんだか解らないですよね。ここが我々プロの技です。顔の向き(顔位)には、医学的に基準があります。目の窓の下の少し下に眼窩骨縁があります。触れれば判りますよね。通常、涙袋の下の線に一致します(これも美容医学的に解剖からしてわかっていることです)。ここを顔の前の高さの基準とします。そして耳の孔の上の縁と結んだ線を画面上で見つけるのです。この線をフランクフルト線といいます。この線が顔の自然な正面像に近いのです。だから顔の水平基準線として使われます。レントゲン写真を撮る際にもよく使われます。正面像で左右の4点が1本に並んでいればフランクフルト線の延長上にカメラがあるということです。上の写真を見ると、どの写真もフランクフルト線の延長線から撮られています(数度のずれはお許しを!)。顔位はこれでいいとして、眼位は、フランクフルト面の延長線上にあるカメラのレンズを見てもらえば、正面視といえます。これを第一眼位といいます。ちなみに最大上方視を第二眼位、最大下方視を第三眼位といいます。さて、開瞼力の調整はどうすればいいのでしょう。「普通にカメラのレンズを見て下さい。」としか言いようがありません。上眼瞼挙筋の収縮力は不随意に入ります。普通に力を入れているときでさえ、気分や、体調で変わります。つまり筋肉をコントロールするのは脳です。脳の末梢へのコントロールはほとんどの場合不随意に働いています。上の1:の記述と同様です。私達が被験者にお願いできることは、「普通に開いてください!。」とだけしかできないのです。この問題は次の問題にも関連します。

3:片側の眼瞼下垂症手術後には、一時的に調節不良となり、あたかも元々の健側が眼瞼下垂になったかの様に見えることが多いのです。だから、片側の手術は難しいのです。今回の症例もそうですが、実は片側の眼瞼下垂症と見えるケースの多くは、反対側も軽度の眼瞼下垂を伴なっているのです。今症例では、数字上は右側が明らかに落ちていますが、それは、左側が代償性に過剰に、挙筋に力が入っていて開瞼をプラスしているのでしょう。または、原因として、眼瞼挙筋腱膜の伸展等であるので、軽度の伸展では、過剰に力を入れれば、正常に近い開瞼が得られるからとも言えます。これもやはり不随意にコントロールされているので、患者さんは意識してしているわけでもないし、医療者にも判らないことです。その結果、片側を手術したら、対側も下垂状態であったことが露呈することをよく経験します。しかも、この切らない眼瞼下垂手術は、術直後は過剰に開瞼してしまいます。原因はいくつかあり、以前にも説明したので、今回は省きます。前回4月11日から2回に亘ってに紹介した症例では、ただちに反対側も手術したのを提示しました。今回の症例では、片側の予定としましたから、術直後や術後1週間の右側=手術側はギョロメ状態になっていますし、左側=非手術側=健側はサボって開瞼が術前よりさらに落ちています。もちろん必ず治ることを説明してありますから、患者さんは納得されていますが、むしろこっちとしてはヒヤヒヤものです。2週間後に再診され、写真を撮らせてもらうと、ご覧のとおりいい感じになりました。眉毛の位置も揃い、くぼみ目も解消し、開瞼は・・、アッよく見るとやっぱり左がわずかに小さい。細かいことを言えばカメラのフラッシュの反射と瞼の位置を比べてみれば差があるのが判りますよね。やはり、ごく軽度なれど左側にも眼瞼下垂が存在していたのです。患者さんは形態的には満足で、症状も取れて喜ばれていましたが、私達としては、完璧な診療ではなかったと、わずかに敗北感が残ったのでした。

片側の眼瞼下垂手術は難しいんです。題名の通り、勉強になりました。皆さんにもたくさんの知識を提示いたしました。ちょっと多すぎたかな?。でもこの程度はまだ触りです。それだけ、眼瞼の美容医療は奥深いのです。

ですから、もうひとつ、この分野は形成外科でしっかり勉強した美容外科医にかかりましょう。私達は両方の専門医ですので、機能と形態のバランスを取った診療方針の下、より良い、満足感の高い結果を提供いたします。