2014 . 11 . 28

小顔とは?から派生してⅦ-ボトックスについてⅥー美容医療その2

ボトックスのことを話し出すと、長くなりますね。それはそうです。本一冊かけるくらいの知識が必要な治療ですから。むしろここまでまとめるのに苦労しています。(全然まとまりがないと言われれば、返す言葉もありませんが)

ボトックス治療は簡便な美容医療ですが、豊富な知識と長い経験がベースになければできません。このシリーズのⅡやⅢで歴史を書きましたが、美容医療に使われたのは今世紀に入ってからです。私は、2000年には、十仁病院から譲ってもらい、使い始めました。もう15年近く前になります。今でこそ、使い手は増えましたが、最初は量と部位の使い分けが難しく、少量からの追加追加で施行錯誤の連続でした。今は至適量を見いだせます。その内容をご紹介して行きます。

額、眉間と上顔面から記載してきました。次は中顔面に進みます。中顔面とは眉から下、鼻の横までです。

まず目の周りですが、目尻、下眼瞼、目頭、に使います。この部位の筋は眼輪筋です。眼輪筋は、まぶたを閉じる筋で、まぶたの皮下直下に眼を輪状に取り巻いています。

そして目尻と目頭部では靭帯ではなく腱となって骨に付着しています。敢えて余計なことを述べますが、この点は私の医学博士審査の研究の一つで解剖しましたが、腱です。日本の医学書には同部を内眼角靭帯と外眼角靭帯と書いてありますが、洋書では腱;tendonと表現してあります。私は、この部位の立体構造を3Dソフトで再現したところ、この部位で骨に向かって眼輪筋を引き寄せる構造となっていることから、腱だと確信したのでした。

この構造のために、目頭と目尻の部位では、眼輪筋の収縮時に、はっきりしたしわが出ることも当然といえます。眼輪筋は眼を閉じることを第一目的としていますが、下眼瞼は平均的には2㎜しか動きません。むしろ表情筋としての作用の方が強いといえます。簡単いえば、笑うときです。眼を細める表情は、警戒の表情と柔和な表情の混在ですが、意識下で鏡で見れば再現できるはずです。

目尻:からすの足跡とよくいいますが、英語でもcrow’s feet といいます。残念ながらまぶたの皮膚はもともと薄く、加齢で皮下脂肪の減量する部位なので、刻まれ易いしわです。表情としてのからすの足跡はなくても、表情の異常感は呈しません。ですから、刻まれる前に早い年代からボトックスをしておきましょう。皮膚の弾力が落ちると一度動かしたら戻りが遅くなります。鏡を見てしわを寄せた後力を抜いて30秒経っても戻らなくなったら、ボトックスを始める潮時だといえます。量は、しわの本数に依ります。1本あたり1IU以下でも効きます。ただし少ないと効果は持続しません。3〜6ヶ月程度です。

下眼瞼:眼輪筋の収縮でまぶたが持ち上げられようとすると、下眼瞼に横じわが出来ます。ただし、まぶたを持ち上げる筋肉は頬にもあります。(後で述べます。)眼輪筋は下眼瞼に小じわを寄せる作用の主体ですが、頬の筋との協調関係ですから、下眼瞼の小じわに対して、眼輪筋にボトックスが効くかどうかは、シミュレーションしてみて決めています。量は1点0.5IUからで広範囲なら、両側で5IUまでしたことがありますが、やはり多すぎると、なんか表情がとぼしくなってしまうことがあります。正書に記載がある過量投与での下眼瞼の外反や下垂は起きたことがありません。正書は洋書の翻訳しかないので、眼輪筋が強い日本人には起きないものと考えられます。

目頭:眼輪筋の内側の付着部ですから、収縮によって縦に小じわが入ります。結構目立ちます。なんか年寄りくさいしわなんです。ボトックスが効きます。実はこれまで正書にも文献にも記載がありませんでした。このしわは定着しないからでしょう。でも表情時には目立つので、見つけたら指摘しています。最近では患者さんが見つけることもよくあります。正書には下眼瞼内側は外反の危険があると書いてありますが、やはり眼輪筋の強い日本人では外反は起きません。もちろんごく少量片側0.5〜1IUとし、持続も3〜5ヶ月でよしとしてもらっています。

鼻根:鼻の目頭の間には縦方向に鼻根筋というのがあります。収縮すると横じわが1〜3本くらいできます。日本人では鼻のここが高くない人が多いです。私はジャンプ台型と表現します。本当に低い人は馬の鞍みたいだと鞍鼻といいます;英語でsaddle noseの訳です。このため、鼻根の横じわは出来易いのです。収縮するのは表情として嫌な感情時、悔しい感情時など何れにしてもいい表情とはいえません。眉間と同じく、消しておきたい表情皺です。量は0.5〜2IU通常しわの本数によります。

鼻背:目頭から内側へ斜めのしわが目立つ人がいます。上の目頭のしわにつながっている人もいます。鼻の筋の走行は複雑で細かく変異も多く、強弱の個体差もあり、どの症例でもしわを気にする訳ではありませんが、ボトックスの適応の帆とも少なからずいらっしゃいます。表情は上の鼻根筋と同時に動くことが多いようです。量は片側0.75〜1.5です。

今回中顔面を書いていたら、またまた長くなりました。下顔面他の美容的ボトックスの使用法は次回にさせていただきましょう。