スレッドリフトの経過を追っていますが、画像採取が難しいことに気付きました。顔の輪郭は顔の上下の向きで、それだけで変わって写るため、術前術後の比較が難しいのです。そこで、まず何を狙って手術したのかの説明を致します。
今回は下顎の辺縁のカーブをスムースにするべく、下顎の部分の中でも、口角の斜め下外側の膨らみを引き上げようとしたのです。この部分が外側に膨らんでいるとブルドッグ顔貌になります。本来その上外側、つまり耳の前下というか頬骨弓の下にあった皮下脂肪が、皮膚と軟部組織の弛緩によって、重力に抗せなくなって落ちてきたのです。この膨らみを洋語でJowlといいます。辞書を引くと、Jowl:動物の顎の下に垂れた皮膚とありますが、動物に例えてスミマセン!。でも欧米の美容外科の文献のリフトの項目には必ずこのように書かれています。確かに、ブルドッグはそういう形だし、豚もそう、鶏なんかもそういう形です。いずれにしてもJowlがあるために、下顎縁に凹凸ができます。口角の下の線をマリオネットラインと言いますが、これはあやつり人形の口の下の割れ目線を模して呼んでます。顔の層は表面から順に、皮膚、皮下脂肪、筋膜、筋、骨となっていますが、皮膚と筋膜は何カ所かで緩く繋がっています。マリオネットラインもその一つです。(他は後述します。)あたかもハンモックの様に、皮膚に乗っかった皮下脂肪は両側ののロープで筋膜に繋がっている感じです。ハンモックが緩んでロープも緩んだために、皮下脂肪ごと垂れ下がっていくのです。Jowlの膨らみはそのためです。
ではその目で、術前術後を見てみましょう。
なんか良く判らないと言われても、仕方がありません。
しかし、患者さんには見えています。「顎のラインが綺麗になった。」とおっしゃって頂けました。私どもにも見えます。3Dリフトで皮下脂肪を引き上げ、とコグリフトで皮膚を裏側から支えるという2種類の糸を組み合わせて、Jowlを平らにしました。顎のラインが、緩やかなカーブを描き、逆さ卵型になっています。これぞリフトの効果です。今後はどれだけの持続効果かを、ちゃんと、中期的、長期的に提示していきたいと思います。年単位の症例提示を予定しています。
もう一度リフトの説明をします。リフトとは持ち上げることですよね。何故落ちるのかは、重力としか言いようがありませんが、加齢によって伸びて重力に抗せなくなるからです。皮膚は細胞層が粗になり、さらにコラーゲン層の弾力が落ちます。すると皮膚は、面積が増えて、薄くなります。その結果重力によって垂れるのです。先ほども述べましたが、皮膚の中には皮下脂肪が包まれて、筋膜や筋とは所々繋がっています。リテイニングリガメント;retaining ligament と言って筋膜と皮膚を繋ぐコラーゲン繊維の柱があります。だから全部が一遍に落ちないで、凹凸を呈してきます。
マリオネットラインは皮膚が口角下制筋に付着しているから、その上までが膨らみます。Jowlの上外には、咬筋からのリテイニングリガメントがありますから、上下に凹みがあります。鼻の外側にはメーラーファットという膨らみがありますが、上外はメーラーリテイニングリガメントで境されています。その下内側は鼻唇溝(法令線ですが、人相学用語です)と皮膚は繋がっています。だから加齢とともにメーラーファットは鼻唇溝にのしかかってきます。他にもリテイニングリガメントは多々ありますが、いずれにしても、皮下脂肪体を皮膚に支えられて挙げればいいと言うことです。
リフト法としては、皮膚を切り詰めて引き上げるのがコンベンショナルですが、糸で引っ掛けて皮膚を皮下脂肪ごと引き上げて引き締める方法でも、リフト効果を得られます。従来から、糸で引き上げる方法が試みられてきましたが、糸を皮膚や皮下組織に掛けても、月日とともに組織から抜けていくので効果は減弱します。最近ではトゲトゲや、支えの付いた糸が多く開発されて戻りが遅くなってきました。今回はその組み合わせですが、年単位の持続性を得られると考えられています。
今回は簡単に、スレッドリフトの説明をあれこれ加えましたが、皆さんは実際の症例の経過が知りたいのだと思います。お楽しみに!。