2015 . 9 . 10

ほくろ=母斑を取るのでも、形成外科・美容外科の技術は特殊です。―真皮縫合と皮弁形成術Ⅱ―

前回は、真皮縫合についてゴチャゴチャ説明しました。判りにくかったかも知れませんが、大事なことです。私達形成外科医が切除縫合手術をすれば、創跡が見えなくなる手術法のキーポイントです。

この分野に於いては、他の科目の医師とは格段に差があります。 逆に言えばほくろを取るのでも、私達形成外科医が手術するなら、恐くもないし、目立つ跡にはなりませんから、ちゃんと選んで頂きたいものです。

基準はプロフィールで形成外科の経験が6年以上=前回書いたのですが、私は(平均的に)6年目にやっと真皮縫合が出来る様になると思っているからですし、形成外科の卒後研修カリキュラムでは、6年目までに一通りの手術法を学ぶ様になっていて、7年目に専門医を申請する様になっているからでもあります。

ところで、「ほくろを取りたい!」と尋ねてくる患者さんは多くいらっしゃるのですが、レーザー治療と手術適応の鑑別が、難しいのです。

ほくろのレーザー治療とは、一言でいえばほくろを削って孔を開けるだけです。皮膚は深さ1㎜くらいまでは再生して平坦になりますが、2㎜を越えると凹みが残ってしまいます。ほくろの深さは平均1,5㎜ですからギリです。それに凹みは小さければ目立たないです。直径3㎜までは見えません。

5㎜を越えると目立ちます。そこで、孔を縫い縮めて無くすのが、手術です。線の創跡は形成外科医の手術では消えます。前回説明した形成外科医による真皮縫合のおかげです。取るのは簡単ですが、創跡が目立たない様に取る為には、医療者側も患者さんも、治療法の選択に悩むのです。

さらに大きく、また顔の部品に変形を来しかねない部位の場合、変位がなく治さなければなりません。そこで皮弁形成術が登場します。これは形成外科独自の技術です。私達は手術跡を無くそうとの努力しています。

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今回は皮弁形成術について簡単に説明します。これは形成外科の中でも基本手技ですが、経験を技術を要し、高度で奥の深い手術法です。 皮膚は表皮と真皮と皮下組織(皮下脂肪層)より成ります。部位によりますがある程度は伸びます。でも、顔の部品=まぶたや、鼻、口、耳等が引っ張られて移動したら、それは目立ちます。そこで、引っ張られても変位が見られない場所から皮膚を移動して埋めればいいと考えたのです。これを形成再建外科手術と言います。被覆法の一つです。

被覆法の第一選択は、縫縮法です。縫い縮めても変形が起きないで、緊張がなく創跡が綺麗になるという条件で行われます。第二には、局所皮弁です。近傍からの移動なら、創は増えません。第三以降は遠隔部の材料での被覆で、遠隔皮弁や植皮、遊離皮弁等高度な手術です。

今回は径11㎜と大きくて、口角の横にある先天性の母斑を取りたいと受診された患者さんです。診察時に、まず横につまんで寄せてみると、口が曲がります。創の方向として縦線に縫うしか無い場所なのです。

そこで口から遠い頬からの局所皮弁を計画します。上左画像の術前のデザインを見てください。画像の右側の菱形が切除部位です。1辺11㎜の菱形にデザインしました。

画像中の左側の三角形の皮弁を、表皮と真皮、そして皮下脂肪を薄く付けて挙上します。皮膚は真皮の下に皮下血管網があり、これが横方向にネットワークしていて、図でいうと皮弁の左下は繫がっているから、皮下で血管が横に繫がっているので皮弁に血液が巡るという仕組みです。顔は血行が良好なので、付け根(茎部と言います)の幅に対して、2倍の長さまでなら血流が足りると考えられています。実際には、挙上した時点で皮弁から出血していれば安心ですし、血でピンク色ならよし、さらに指で抑えてみてピンク色が消えて白くなり、離したらすぐにピンク色に戻れば、ちゃんと血液が循環しているから生き永らえる可能性100%です。

菱形に取る深さも皮下脂肪を最低一層まで取っていれば欠損に皮弁がピッタリはまります。写真が傾いてしまいましたが、計算上皮弁は時計回りに30度回転しています。皮弁がいなくなって空いたところは縫い縮めます。ここを縫い寄せても顔は変形しないからこの手術をしたのでしたね。

以上の様に手術して2週間後が上右図です。拡大像なので、糸の跡がまだ見えますが、よく見なければ判りません。縫合線はまだ赤く谷線になっていますが、これは縫縮術でもそうです。いずれ消えます。実際6ヶ月前に皮弁形成術をした患者さんが、過日別の件で来院したのですが、創跡を探さなければならない程目立たなかったのです。

次回4週間後の経過を提示したいと思います。その際には、種々の皮弁形成術の説明をしたいと思います。