今回の症例は、片側の眼瞼下垂症例です。実は数年前に重瞼術を両側受けていますが、開瞼を合わせていません。眼瞼下垂症に対する治療を受けていないために、左右差が目立って来たということです。開瞼に左右差があれば、見た目の重瞼の形も左右差を呈することになる解り易い症例です。
実際には、片側の手術は合わせるのが難しいのです。術中が出来上がりではないのは当然です。時間経過と共に変化していきます。実は、本症例は1週間前の手術です。経過を見てから提示したかったので、待機しました。
症例は38歳女性。挙筋機能(挙筋収縮距離+最大瞼縁活動距離)は両側12㎜と左右差が無いのに、同じ力で開く=挙筋を収縮すると、力が伝わらない為に瞼縁の挙がり具合に左右差を呈する状態です。腱膜性眼瞼下垂です。後天性で、原因は物理的損傷と考えられます。いくつか考えられますが、近年ではハードコンタクトレンズ長期装用によるものが多発しています。
まず上眼瞼挙筋腱膜を眼瞼結膜側より縫い縮めました。直後に開瞼が向上しています。術中に座位にして確かめた時点の画像です。よく見ると糸がぶら下がっています。前に作った二重は開瞼を強化しないで作ったので、開瞼を強化したらむしろ狭くなっています。そこで、この時点から二重を合わせてみます。術中なのにカメラ目線のご協力をいただき有り難うございました。
上左図では私が、術中にブジーを使ってデザインしようとしています。ペンもブジーも清潔なものを用意しています。上右図はブジーを当てて目を開いてみた画像です。もう既に僅かに腫脹が起きて来ているため、全く同じには見えません。それにこの画像では強く抑えすぎています。
前のラインより1㎜上で2点マーキングしました。まだ、挙筋を縫い縮めただけなので、その糸は下にぶら下がっていますが、細いので見えないかも?
点に向けて糸を刺し出し、結んだ時点です。結び具合が大事なのですが、外側は眼瞼の長さに合わせて、内側はやや短目に引き込みを強くしました。この時点では強すぎる様に見えます。開瞼はほぼ揃っています。
1週間目に来院して経過を診せてもらいました。随分揃って来ています。でも、遠目に見ると何となく差が見えます。そして、2点の間が直線的です。2点がまだ強いからでもありますが、真ん中に追加したくなりました。つまり3点にしておけば良かったとも言えます。
最近の症例のうち、約1/4は直ちに3点法に変更しています。そう言えば、私は昔から3点法をメインでしていました。料金の問題から、2点縫を選択する症例が多くなっていましたが、もう一度考え直してみます。
埋没法は、締め具合と、糸を通す位置のバランスが命です。術中の強さは、日時単位で必ず緩んできますし、麻酔の影響もあります。特に片側の場合、ピッタリ合わせるのが難しく、経過中に変遷していき最終的に揃ってくれば良し、そしてそういう経過なら、長持ちする筈です。
これまで繰り返して述べてきましたが、まぶたは動くところなので、形態と機能は相関しています。開瞼の機能は、解剖的な形態が左右しますし、筋力という生理的な機能の左右差が存在している場合もあります。前者は後天性、後者は先天性の要素であることがほとんどです。鑑別診断には、フェニレフリンテストと挙筋機能が有用です。その上で二重まぶたと一重まぶたという形態に留意します。
患者さんがよく「広い二重にしたくはない。」と言いますが、その通りで、二重を広くすれば目が大きくなり綺麗、という訳ではないのです。逆に言えば、開瞼機能が強化されれば形態的にもそれだけで良好=キレイで明るい目もとになります。もちろん皮膚が瞼縁に被さる様な一重瞼は、機能損失ですから治さなくてはなりません。開瞼機能が良好化しても皮膚が被さっていたら、もったいない話です。形態不良は機能損失です。要するに機能と形態は相関しているのです。
一般的に、二重まぶたが広くても開瞼が弱くて眠そうなまぶたより、奥二重でもしっかり開くまぶたの方が魅力的でしょう。もちろんパッチリ開いてクッキリ二重なら、機能と形態の両輪を満たしますが、程度の問題です。日本人は形態的に異常な、一重まぶた遺伝子を持つものが多く、そのうちの多くは眼瞼下垂という機能的機能的異常を呈する遺伝子も持っていますから、併発することも多いのです。徐々に、また少しでも改善していくのが正しい道ではないでしょうか?。
機能はあくまでも医学的な要素ですから、患者さんには認識が難しい場合が多いのですが、だから逆に私達ベテランの、`美容形成外科医`を選んで欲しいものです。形成外科医は機能的治療に長けていますし、美容外科も診療しているから、形態に対する留意は、しつこい程念入りです。私達は、機能と形態の両輪を取り扱える数少ない`美容形成外科医`です。
早速、来週には、追加手術を予定します。1点追加だけなら、ダウンタイムはやり過ごせます。形態が優先事項です。ところで、開瞼が全く揃ってはいません。気合いが足りなかったのでしょうか?。追加手術ではもっと締めたいと思います。次週をお楽しみに。
注1;二重まぶた=正面視で瞼縁に皮膚が乗らない。奥二重=瞼縁と皮膚が同高。一重まぶた=瞼縁に皮膚が被さる。
注2;機能=筋力や筋力伝達、神経の回路等の動きのコントロール。形態=見た目の形。美容的とも表現される。