もう何ヶ月も前からの症例ですが、切らない鼻翼縮小術の症例がやっと定着したので報告致します。同時に鼻翼の手術法と鼻尖とのバランスの件についての説明を加えます。
症例は術前で36㎜の鼻翼最大幅が34.5㎜になりました。かれこれ2回の手術で初回手術から半年経っていて、少なくとも2ヶ月前と変わらないので、定着したものと見做します。
下に画像を並べます。下左の写真が術前の正面像、下右の写真が現在の画像。更に2段下の画像は下方からの画像です。
画像の撮り方やサイズが統一していないため比較がし難い点をお詫びします。でも、サイズは本当です。数字が示すだけでなく、患者さんは満足しています。
本症例は他院で切除術を受けた後に来院されました。しつこく説明しますが、鼻翼のサイズを減少させる手術には2種類あり、適応をよく吟味しなければ、満足な形態的または数字的な結果を得られません。鼻翼の幅がどこにあるかです。鼻翼と頬の折れ返り線の幅と鼻翼の最大幅の相対的位置が重要です。
折れ返りが最大幅と同じ幅か折れ返りの方が大きいケースでは切らない鼻翼縮小術で折れ返り線を寄せるのが適した方法です。この場合に切除は禁忌です。もし行うと鼻翼がぺちゃんこになり動物の鼻になります。
鼻翼が丸く張り出して折れ返り線より明らかに大きいケースでは付け根より前の組織を三日月型に切除縫合する適応があります。このケースに切らない鼻翼縮小術をしても最大幅が小さくなりませんし、余計丸くなってしまい野暮ったくなります。
少なからずの症例で切除しても、折れ返りの幅が気になるケースがあります。この場合は併用手術か2段階の手術をする事もありますが、稀です。
術前に指で折れ返りを寄せてみてシミュレーションすれば、手術法の選択が見えます。患者さんにも予想が付きます。でも時に併用するべきか迷いますし、一方の手術の跡にもう一方の手術を加えるべきか迷う事もあります。でも切らないで寄せるべきが明らかな適応症例に切ってします医者が居るので困ります。というか切ったら戻せません。最近、適応を考えもしないで手を出す、素人同然の美容整形屋が多いのですね。
本症例の写真を見れば判りますよね。下からの画像で折れ返り線が最大幅です。他院での切除手術の前後で鼻翼幅が小さくなって見えないと訴えています。切除しても折れ返り線は変わらないからです。しかもぎりぎり動物の鼻に成り兼ねなかった形です。正面像でどことなくペチャンコっぽいでしょう。結局寄せて適度な丸みが出来ていい形になりました。術式の適応選択がいかに重要かを証明しています。
さて切らない鼻翼縮小術の症例が続いていますが、何故かというと、計測して数字を毎回提示しているので、信用されているからです。決して私が好んでいるからではありません。というのも鼻翼と鼻尖のバランスの面で術式の適応がまた変わるのです。要は元来の顔には個体差があり、より良い形態を作り出す為には、より正確な診察技術と、適切な術式選択が求められるのです。
鼻についていえば一つ付け加えると、内眼角間距離と鼻翼幅は同幅が美しいとされています。レオナルドダヴィンチが唱え、今でも認められています。一応知っていると理解し易いでしょう。
一般に`こばな`と呼ぶのが、医学用語では鼻翼です。ジェット機の翼みたいでしょ?。そして一般に`鼻の頭`と呼ばれるのが、医学用語では鼻尖です。でも一般的に`鼻先が丸い、でかい`といった時に鼻尖をいうのか鼻翼が大きいのかはマチマチです。ですから、要はバランスの問題です。上記の如く顔のサイズや、目の位置とのバランスが大小を決めますが、鼻翼と鼻尖の比率が崩れると、これはまた格好悪くなります。鼻翼のサイズは毎回提示してきましたが、鼻尖は始めてです。そもそもどうやって計るかというと、鼻尖のドームの両側の影を計ります。
所謂「鼻が丸い。」のは鼻尖がでかいのをいう事が多いのですが、要はバランスです。鼻翼の幅と鼻尖の幅は2:1が好ましいと見られます。鼻翼幅が34㎜なら鼻尖幅は17㎜が綺麗です。またまたRace;人種の話になりますが、アジア人は平均的に目が離れている。内眼角間が平均34㎜程度です。40㎜の人も居ます。当然の如く、鼻翼幅も平均的に大きいのです。白人は鼻が高いのですが、むしろ幅が無いのが特徴です。内眼角間距離は平均30㎜ですから、鼻翼距離も平均30㎜です。そして当然鼻尖の平均的なサイズにも差が認められます。白人は鼻が高いだけでなく幅が無いから美しいのです。しかも、鼻尖の皮膚が薄く軟骨の形が透けて見えます。したがってはっきりした鼻尖がツンっとして見えます。アジア人では鼻尖の皮膚が厚いため、サイズがどうあれボテッとしている事が多いです。
もちろん高さとの相関はありますが、方法論は多岐に渉りますので、またの機会に説明します。このブログでも提示した事はあります。今回述べたいのは、鼻翼と鼻尖のバランスを見ながら手術法を選択しなければ、美しい鼻にならないということです。鼻翼縮小術の2法を使い分け、鼻尖の縮小法を使い分け、併用するか?、どちらを優先するべきか?、私は常々、患者さんに提案してきました。何度も言いますが、患者さんの元の形態には個体差があり、何を持って理想の形態とするかも好みがあります。好みは周囲の目、生育環境等で培われて来た性向ですから、その面での社会的背景の聴取も必要です。こうして、私達の理想と捉える形態を提示し、改善法をサジェストし、患者さんと議論しながら、摺り合わせて落としどころを見出していくのが、美容医療で求められる術前診療です。カウンセリングなんていう適当な事でなく、真剣な医療行為なんです。
昨今では、医療の情報(あくまでも情報で知性では無い。)が氾濫しています。本来医療行為の一部である美容外科でも、広告宣伝は違法ですが、チェーン店系美容整形屋は擦り抜けてきました。近年のインターネットの情報提供は違法ではありませんから、こうしてブログも含めて提供してきました。でも、これらは一例です。インターネットの内容が万人に当てはまる訳がありません。患者さんの個性を知り、希望を掘り起こし、こちらの知識を披瀝し、議論の上で選択していく本来の美容医療からかけ離れて来ているように思われます。皆さんも心して下さい。
本症例から離れた議論を展開しましたが、思い出しました。本症例も初診時に、鼻尖の縮小術を提示しました。術後経過中には触れませんでした。今後検討して参りたいと考えます。