切らない眼瞼下垂手術=黒目整形=NILT法は私達にとっては定番定式の手術です。確かに結果がいい。こんなに綺麗で、明るく、若々しい雰囲気が作り出せます。年齢を感じさせません。サバ読めます。
なのにい~、他院で真似ッ子のナンチャって切らない眼瞼下垂手術をしているクリニックがあるようです。最近関西では林立しているようで、「効いて無ーい!」と訴えて来院される患者さんが増えました。患者さんは調べて、さすがに本家の当院を知る機会があるようです。これもブログとホームページでの私達の啓蒙活動が実っていると考えれば嬉しい限りですが、「いい加減はいけねえよ!」(急に江戸弁になる東京人)と叫びたくなる日々です。
症例は51歳、女性。これまでいくつかの美容外科医院で治療を受けています。私も何点か治療して来てブログにも掲示したことがあります。
今回の診断は見ての通りです。内側の瞼縁が挙がっていない吊り目型。二重を拡げたいが余計に吊り目になるし、眠そうになる。二重を拡げたい希望には黒目整形が必須といえる。前頭筋収縮が顕著で、特に外側の眉が挙がっている。どうにか開いて若返りを図ろうということになりました。
手術は、内側のNILT法で、瞼縁を挙げて、重瞼も広げる。右側の重瞼も広げる予定としました。ところが右は内側と外側だけだと中央の皮膚が落ち、左は中央から外側が落ちるので、術中に追加して重瞼ラインのカーブを丸く作り足しました。
どうも画像が不備です。「済みません!」ブログ提示症例であることを念頭に入れないで、撮影時に「目を開いてこのレンズを見て下さい。」と念を押すのを忘れました。上画像は左が術前、右が術直後ですが、術後に開きがイマイチです。
でもよく見て下さい。何か普通に近づいていますよね。もちろん術直後には腫脹が少々ありますし、開瞼も重瞼もオーバーです。でもラインが綺麗にカーブを描き、内側の瞼縁が直線的に落ちていないから、吊り目でなくアーモンドアイに近づき、明るく、元気っぽい、若々しい目元になりました。短期的に経過を診れば嬉しそうな画像が提示出来ると思います。
内側は、術中から充分に開き、パッと見て綺麗な窓になっています。術中結膜側を見ますと、切らない眼瞼下垂手術=NILT法の痕跡が見られない。私達はいつも見ているし、その痕跡は知っています。今回は敢えて教えます。結膜側の瞼板のすぐ上の糸の掛かっている点が凹むのです。この凹みは問題は起こしませんから、効果が見られる限り永続するはずなのです。本症例では切らない眼瞼下垂手術を施行したと前医は言っていたそうですが、痕跡は見られませんし、どう見ても内側の瞼縁は落ちています。何もんジャイそいつ!、インチキ野郎か?、ヘタクソなのか?。その為に患者さんは形態的に、また開瞼機能的に不満足をかこってくるはめになった様です。可哀相ですね。
今回の手術で少なくとも吊り目からアーモンドアイに形成されました。
何が問題なのか解っています。筋の締めが足りないのでなくて、掛ける部位がまずいのです。難しいからです。この手術が世に出たのは約10年前ですが、その頃池田先生が施行したのを、私はこちらでなく自分のクリニックをしていましたから、診たことがありました。どうも挙がっていなかったです。その頃池田先生は学会でも発表しました。私がどうやってかけているのか質問すると、的を得ない回答でした。その後当院に移籍してから手術を見たら、瞼板に掛けていました。私が「あの学会の時に教えなかったじゃない?。」と文句を言うと、彼は「この技は明かさないのです。」と開き直った。逆にさーすがあと思ったものでした。アッいけねえ!いまここで中身をばらしてしまった。でもこの手術の有用性と技術の進歩に感銘して、私は当院で池田先生と一緒に手術していきたくなり、やってみれば面白くてしょうがないから、もう9年間も、ここで美容医療に没頭していきました。
とにかく瞼板に掛けないとずっこけます。挙筋腱膜は本来瞼板に付着していて挙上力を瞼縁に伝達するためにあります。成人後少なからず剥がれてきて、力が伝わりにくくなります。その状態を改善したいのです。この手術を簡単に説明すると、挙筋腱膜とミューラー筋を瞼板に縫いとめる仕組みです。瞼板に掛けないで挙筋とミューラー筋を縫い縮めるだけだと、筋は繊維が縦方向なので、繊維に沿って糸はずれてきて縮めた効果はなくなります。対して、瞼板は硬いので抜けません。ところが、瞼板に掛けるのは技術と経験を要します。深く掛け過ぎると眼球側に糸が出てゴロゴロしていまいます。かといって浅くかかると抜けることもあります。本当に技術を習得できるまでは何年もかかります。しかも理論的な意味が分かっていなければその調節の意味も解からないのでいつまでも上達しません。そん所そこらの非形成外科の、ましてや麻酔科上がり等のにわか美容外科屋には知識さえも持ちえないのに、真似っこする奴が多いので困ります。
この症例は難しいのですが、まず手術時にはいい結果が予想されます。今後の経過をお楽しみに。