2016 . 10 . 20

切らない眼瞼下垂手術=黒目整形=NILT法はちゃんと締めましょうよ!の1週間後

切らない眼瞼下垂手術=黒目整形=NILT法は私達にとっては定番の手術です。確かに結果がいい。なのに、他院で受けて「効いて無ーい!」と訴えて来院される患者さんが増えました。患者さんは調べて、さすがに本家の当院を知る機会があるようです。

症例は51歳、女性。これまでいくつかの美容外科医院で治療を受けています。今回の診断は見ての通りです。内側の瞼縁が挙がっていない吊り目型。二重を拡げたいが余計に吊り目になるし、眠そうになる。二重を拡げたい希望には黒目整形が必須といえる。前頭筋収縮が顕著で、特に外側の眉が挙がっている。どうにか開いて若返りを図ろうということになりました。

手術は、内側のNILT法で、瞼縁を挙げて、重瞼も広げる。右側の重瞼も広げる予定としました。ところが右は内側と外側だけだと中央の皮膚が落ち、左は中央から外側が落ちるので、術中に追加して重瞼ラインのカーブを丸く作り足しました。

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上画像は左が術前、右が術直後ですが、術後に開きがイマイチです。もちろん術直後には腫脹が少々ありますし、開瞼も重瞼もオーバーです。でもラインが綺麗にカーブを描き、内側の瞼縁が直線的に落ちていないから、吊り目でなくアーモンドアイに近づきました。

前医の何が問題なのか解っています。とにかく瞼板に掛けないとずっこけます。挙筋腱膜は本来瞼板に付着していて挙上力を瞼縁に伝達するためにあります。成人後少なからず剥がれてきて、力が伝わりにくくなります。その状態を改善したいのです。この手術を簡単に説明すると、挙筋腱膜とミューラー筋を瞼板に縫いとめる仕組みです。瞼板に掛けないで挙筋とミューラー筋を縫い縮めるだけだと、筋は繊維が縦方向なので、繊維に沿って糸はずれてきて縮めた効果はなくなります。対して、瞼板は硬いので抜けません。ところが、瞼板に掛けるのは技術と経験を要します。深く掛け過ぎると眼球側に糸が出てゴロゴロしていまいます。かといって浅くかかると抜けることもあります。本当に技術を習得できるまでは何年もかかります。しかも理論的な意味が分かっていなければその調節の意味も解からないのでいつまでも上達しません。他院で真似っこするナンチャって美容外科医が多いので困ります。

この症例は難しいのですが、まず手術時にはいい結果が予想されます。と願いつつ、1週間目で来院されました。

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上画像は左が来院時。やはりまだ、前頭筋収縮癖が残り、眉を挙げています。これでは切らない眼瞼下垂手術の効果を画像上提示できません。そこで、額ボトックスを少量使います。上右画像がその直後です。すこーしだけ眉が下がりましたがそんなにすぐ効かないのがボトックスです。次週には効いている筈ですから、画像提示出来ると思います。

目を開く際に前頭筋が収縮し、眉を引き上げている人は眼瞼下垂症です。人類のまぶたは眼瞼挙筋という筋肉が引き上げます。目を開くという動作は不随意にされています。脳の視床下部という自律神経のセンターからコントロールされています。覚醒して行動する際には目を開いている必要がありますから、戦闘の神経である交感神経が優位になり、眼瞼挙筋に対して電気信号を発しています。ところが日本人の多くは眼瞼挙筋の作用が弱かったり、一重瞼の為に力が伝わらなかったりしています。さらに必ず加齢で開かなくなります。すると、目が開いてないのを感じた脳は前頭筋に指令を出して眉を引き上げようとします。こうして目を開いている際に不随意に眉を上げてしまう様になるのです。皆さん自分では動かしているつもりが無いし、鏡で見ても判らない。何故なら、目を閉じているときは見えないし、目を開いたときは既に眉が挙がっているからです。そこで触れば判ります。軽く触れながら目を閉じたり開いたりすれば判ります。もう一つ他人に見てもらえば判明します。そして、前頭筋が開瞼時に常時収縮しているので、額がしわだらけになっています。このしわは、長年たたまれていると刻み込まれて来ます。

ちなみに私も刻まれています。私は眼瞼下垂症では無いと思っていますし、患者さんにもよく「先生は目が大きくていいわねえ!」といわれるのですが、仲良しの信州大学形成外科の松尾清教授に言わせると「先生も眼瞼下垂ですよ。ほら前頭筋が収縮しているから!」だそうです。私は目を見開いて診療しているからで人並みの開瞼では足りないからです。特に手術時等は、気合いが入っているから、カッと目を見開いています。

ボトックスは筋肉に流れる信号を遮断する薬で、局所だけに効きます。額は広いので通常十カ所程度に分けます。眼瞼下垂症の人は前頭筋が収縮していて、眉を挙げて代償していますから、ボトックスをすると、まぶたが開かなくなります。眼瞼下垂症の人は眼瞼下垂手術をしてからで無いとボトックスはできないのです。本症例の如く、眼瞼下垂手術をしても前頭筋収縮癖が治らない人は多いのです。前頭筋に信号を伝える要らん神経繊維は簡単には退行しないからです。そして眉を挙げていると二重のラインが乱れます。ですから、本症例の様に眼瞼下垂手術をしても眉を上げる人にはボトックスを使います。術後なら重くなりません。でも念のためいっておくとボトックスは注射後効くまでに数日掛かります。上の画像でもほとんど変わっていません。次週がお楽しみということで・・。