2016 . 10 . 27

美容医療の神髄-歴史秘話第64話-”口頭伝承”:美容整形屋と美容形成外科医”その40”「相模原編6:美容外科学」

医師となり、北里大学形成外科・美容外科医局に入り13年目。研究員として、美容外科の中心的テーマである、二重瞼と一重瞼の差の科学的研究に携わったこの一年でした。思い出すと、記憶が蘇ります。それだけ濃厚な一年間だったのです。研究の手順を辿って記載して来ましたが、考えてみればこれは博士論文に記載した内容です。書いたときは頭の中に知識を詰め込みました。だから今も頭の中に残っているのですかね。それとも時に応じて論文を読むこともあるので、脳に刷り込まれているのかも知れませんね。

前回光学的顕微鏡の標本作製から紹介しました。生物系研究者なら誰でもが行う技術です。でも人のご遺体から標本を得る機会は稀少です。走査型電子顕微鏡での観察の機会を得たことでさらに稀少価値が高まりました。

その前に光学的顕微鏡とは子供の頃からなじみがあるやつですが、レンズで何倍かに拡大して、小さな物を肉眼的に観察することが出来ます。レンズの性能上かなり高性能でも200倍程度が限界です。10μmの物を判別出来る程度で、具体的には赤血球は見えるが細菌は形は見えても内容は不明。ウイルスはもちろん同定出来ません。8μmに薄切して染色して光を透過して拡大するので透過型です。実体顕微鏡という光を当てて拡大する機器もありますが、ピンとが合い難いのでアリンコくらいしか観察できません。

対して、電子顕微鏡には透過型と走査型があります。透過型とはやはり薄切した標本をX線を透過して観察する機械です。X線は知っての通り透過性が高く、直進性も高いので10万倍とかの高倍率が可能です。例えばウイルスの断面を観察し、DNAまで見られます。ただしあくまでも断面です。沢山の断面を重ねれば立体構造も把握出来る筈ですが、薄切標本を作れませんから、困難です。これに対して走査型では、ある方向からの立体構造を遠近関係なく観察出来ます。電子線を当てて反射した距離により凹凸を描出するものです。走査とは例えば、線源からの電子線を点々で並べて当てていって線を作る。次の列を当てて縞しま状に当てることで、面を見ることが出来るのです。判り易いのはテレビジョンの機械です。あれも、電子線を走査して当てて画像を描出しています。なんといっても、走査型電子顕微鏡は微細な立体構造を描出できる唯一の武器です。上に書いた様に透過型光学的顕微鏡では不能(もう一つの研究は連続切片をコンピューターソフト上で3D構築するのでバーチャルに立体)ですし、実体顕微鏡は立体構造を見るのですがせいぜい20倍でアリンコの毛の並びは見えても毛のキューティクルは見えない。透過型電子顕微鏡ではナノメートル単位まで薄切するので、連続切片は不可能です。

この様に走査型電子顕微鏡を利用して、眼瞼の微細な立体構造を描出する研究は、世界中探してもこれまで一度も行われていませんでした。論文を検索したので間違いありません。(この後中国から著作されました。)それでは走査型電子顕微鏡での画像取得はどの様な方法で行われるのか?。実技的に一年を掛けて行われるのですが、一般的に行われる主義ではありません。医学卒前教育ではもちろん、卒後医師として走査型電子顕微鏡を触ったことのある者は周りに一人も居りません。当然解剖学教室の技術者に一から手ほどきをお願いする訳です。とはいっても実際には手を取り足も使って指導を受けても、標本を作るのは私です。そしてその内容は論文にも記載しなければなりませんから、理解記憶する必要があります。とはいっても、もう16年前のことですから、仔細な記憶等ある筈がありません。アッ、思い出した。脳にはバラバラの記憶しかないけれど、論文は残っている。書物は永遠に残す為にあります。博士論文は国会図書館にも所蔵されているのです。実は自ら常に、コピーを持参しています。早速鞄の中から引っぱりだして手許に置きます。

論文は英文ですから、そのままコピペしても困るでしょうから、懸命に訳してみました。Methods    and Material:方法と検体 のページです。前置きが長くなりましたからブログも次ページにします。