2017 . 2 . 9

上口唇短縮術と口角挙上術の組み合わせは時間経過を要しますから、メイクで隠しましょう。

面白い症例で、組み合わせ手術による確実な結果を得るべくデザインに腐心しましたが、最終結果が出るまでは日時を要すると考えられます。評価はまだ下せないので、症例の紹介はコピペが主体になることをお許しください。

症例は40歳前後の女性。顔のバランスとして下顔面の割合が長いタイプである事を治したいと来院されました。いきなり、「見た中で一番形がいいし、創跡の位置が適切で、それでいて創跡がほとんど見えなくなっているのはこちらだけです。」とお褒めに預かりました。

サイズ計測に入ります。鼻柱基部〜Cupid’s bowの底を計りますが、15㎜でした。これまで書いて来た様に15㎜が基準です。実は私、一目見てあんまり長くないかも、でもなんかモッタリしている口元だなあ、と思ったので計ってみたんです。口角だけが薄く寂しいからでもあり、下がっていないのに暗い感じがもします。

私は診察時の当初は、短縮術の適応かどうか迷いました。でもなんかモソっとした口元が治せないか考えました。歯槽や歯が貧弱ですから、ぺたっとしていて唇も貧弱感があり、その為に長くないのに長く見える。例えれば日本人(アジア人)の平板な中顔面がノッペリしている為にやつれて見えるのと似ている形態です。長く見えるのは短くしてしまいたい希望は汲めます。歯槽が突出していないのに、口唇そのものが薄いと冷たい感じになるのです。まずは口唇(鼻の下は白唇部です。)短縮術を適応しました。

そして口角挙上術のデザインを検討しました。患者さんは「口角が薄く後退しているのは当然としても、それより内側まで薄いのです。」「先生のブログでは5〜7㎜上、内側に5〜7㎜三角形に切除とありますよね。」私「これまでその範囲で調整して来ました。」患者さんは「でも私、口角はそんなに下がっていないので、するのなら内側までしっかり切除して下さい。台形でもいいから。」と提案されました。よく診ますと、確かに口角から1㎝内側まで薄く貧弱です。台形に賛成です。それに鼻翼幅が34㎜と小さいので、ここだけ切除すると、口角が下がる。だから赤唇縁での挙上術が必要なのです。「だったら鼻翼基部の直下まで赤唇縁を切除するデザインが求められますね。」と廻りくどく説明して同意しました。

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型の如くの手術です。 深さは選べますが、本症例はやや裏返られせたいので、皮下脂肪層まで切除し、口輪筋をPlication; 折り畳む事にしました。3層縫合です。2層めの真皮縫合の終わった時点で創はピッタリ寄っていました。口角挙上術は下口唇縁まで切開を延長してたわみを無くすデザインです。口角を口輪筋ごと移動させて引き上げます。あたかも微笑んでいる様な口元が作り上げられます。

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術直後の腫脹と傷の為に形態の評価は難しいと思います。口唇周囲は血行が豊富なので腫脹が強く、表情筋である口輪筋が効かないため、力の無い写真になっています。でも血行が良いため腫脹の軽快も筋の回復も遷延しない傾向にあります。

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術後1週間での抜糸にいらっしゃいました。確かに腫脹の軽減傾向は見られますが、内出血が顕在化してきました。実は上の画像ではコンシーラーで隠してくださったのですが、赤唇部の紫は隠せませんでした。口紅で隠せるのかもしれません。

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上画像は術後2週間です。前回ブログに口紅で隠せるかどうかと書きましたら、患者さんは読んでいただいたそうで、本当に術後2週間には口紅を引いて、カモフラージュして再来されました。気持ちが伝わったのです。嬉しかったです。どうでしょう?。上手い!。口唇縁をスムースに書き上げています。なんかこの画像では、品性を備えながらも吸い付きたくなる様なセクシーさも感じさせる口元を演出しています。あくまでも化けているのですが・・。

そうです。今書きながら、私は凹んでいます。じゃあ手術はどれだけの効果を作り出せたのでしょう。私の仕事量が足りないのかもしれません。それはデザインの不足?、いやこれ以上のデザインはした事ないし。不足は追加で取り戻せるけど、過剰は取り戻せないから今回はこれでいいのです。確かにビビりではありました。じゃあ技術的には?、そういえば患者さんに尋ねられました。「下口唇の創跡がシワシワになっているじゃないですか?。」それは私は知っています。「辺の長さが違うのでしわになるのですが、唇は軟らかい組織ですから、収縮して治ります。」それに画像でもご覧いただける様によく見なければ判らないのです。口角部付近は後ろにあり口唇縁の畝;ridgeがない所なので、隠れるのです、でも確かに口紅も隠す道具の一つとなっています。グローでハイライトになっているから、シワシワが見えないのです。週を追って画像を見直してみたら判ります。糸のある状態と、内出血のある状態と、口紅で隠した状態では創跡の見栄えが格段に違います。これは技術的問題ではなく、むしろこうしないで上口唇だけ切ると引き攣れた様な挙がり方をしてしまうのです。私は必ずした口唇も切って口角を口輪筋ごと挙げます。これはこれで正しいと思います。

何と言っても赤唇縁のridgeとカーブが問題です。何度も説明した様にridgeがあるべき部分は切れません。もう一度正面像を見ると、切除部の内側の下がっている部に口紅を書き足してカーブを緩やかにしています。ところがそれを斜位像で見るとridgeより上方に、書いた口唇縁があります。そして、その外側の切除部から口角に掛けてはridgeが見られません。つまり継ぎ目になっています。特に正面像と斜位像では立体的見地に差があるのです。ですから、その部を追加切除出来るのかどうかでまた悩んでしまいます。唇が薄いとridgeが貧弱で、口元が寂しいし、白唇から赤唇に掛けてぺたっとして鼻の下がモタッとして品が無く見えます。だから本症例は数字的に長くないのに切除したのです。短い鼻翼幅の範囲での切除ですから、口唇横長と比べて足り無くなり口角が下がるので、口角挙上を今までで一番横長に切除しました。ridgeが低く、かなり内側まで捨ててもおかしくないと考えたからです。でも、こうして口紅を引いてもらって見たら、やはりridgeの有る無しは見えます。追加切除をしたい部分から徐々に高まりが生じているのが見えます。

そうだ!。ridgeは作り出せるのです。いつもやっているヒアルロン酸です。私は口唇にヒアルロン酸を打つ際にデザイン上いくつものポイントを頭に入れて来ました。口角の挙上、口唇結節の程度、下口唇の裏返りと中1/3〜半分だけの増量等々、引き出しを沢山持っています。ridgeの程度と部位も人により変えます。個体差と社会性や生活歴で使い分けるのです。セクシーと下品は紙一重で、社会歴が影響します。でもridgeがあるべき所にないと寂しくなります。加齢に伴い消失してくるのでridgeを足すと若返り、明るくなります。

本症例ではその適応でもありました。ridgeが貧弱で寂しく、立体感がないから手術適応となったのです。手術で形はまあまあいいし、追加もしたい気もする。でもridgeがどうなる?。そこで口紅を引いて魅せられるなら、ヒアルロン酸を打って見てみたい。そんな気持ちが募ります。追加切除の前に、シミュレーションとしてそこにridgeがあるべきかどうかを診てみたいのです。口紅を引いて縁を作る部分にridgeを作ってみれば、その形が欲しいかどうかが解るはずです。じゃあ追加手術の後にどうするのかはまた別の話しとなります。追加手術をしたら、創跡には当分(最低1ヶ月)打てないとは思います。

こうして2週間で口紅を引いてもらうと、確かになんかいい感じで口唇の用途を作り出せています。寂しくない口元なんです。品がありながらセクシー度をアップさせています。でも迷いも増えました。本症例の患者さんは協力的でよりお互いに信頼しているから、良い方向性を見出せると思います。術前はある意味特殊な形態でしたから、術前に時間をかけての検討を要しましたし、今後も考察を要する面白い症例です。

通常この手術は、白唇部が長いから切りましょう。鼻翼の幅に留めた方がいいですよ。結果口角が下がるからまたは下がっているから挙げましょう。数字的なデザインはシミュレーションで決めた通りでいいと思います。と、術前の診断はトントン拍子に出ます。手術は丁寧に上手に切って、丁寧にピッタリ縫合します。他にはない技です。

本症例はそうはいきませんでした。でも画像上形態は格段に改善し、確実にいい雰囲気が出ています。見た目の感じが大事です。ですから逆に形態改善の良いがあるなら、まだまだ検討の余地があるのです。その意味でも、まだまだよく診ていかなければならず、しばらく症例の評価を楽しめます。だから口唇は面白いのです。