2017 . 2 . 1

上口唇短縮術と口角挙上術の組み合わせは時間経過を要します。

面白い症例で、組み合わせ手術による確実な結果を得るべくデザインに腐心しましたが、最終結果が出るまでは日時を要すると考えられます。評価はまだ下せないので、症例の紹介はコピペが主体になることをお許しください。

症例はアラウンド40歳の女性。顔のバランスとして下顔面の割合が長いタイプである事を治したいと来院されました。いきなり、「見た中で一番形がいいし、創跡の位置が適切で、それでいて創跡がほとんど見えなくなっているのはこちらだけです。」とお褒めに預かりました。

サイズ計測に入ります。鼻柱基部〜Cupid’s bowの底を計りますが、15㎜でした。これまで書いて来た様に15㎜が基準です。実は私、一目見てあんまり長くないかも、でもなんかモッタリしている口元だなあ、と思ったのでいきなり計ってみたんです。口角だけが薄く寂しいからでもあり、下がっていないのに暗い感じがもします。

私は診察時の当初は、短縮術の適応かどうか迷いました。でもなんかモソっとした口元が治せないか考えました。歯槽や歯が貧弱ですから、ぺたっとしていて唇も貧弱感があり、その為に長くないのに長く見える。例えれば日本人(アジア人)の平板な中顔面がノッペリしている為にやつれて見えるのと似ている形態です。長く見えるのは短くしてしまいたい希望は汲めます。歯槽が突出していないのに、口唇そのものが薄いと冷たい感じになるのです。まずは口唇(鼻の下は白唇部です。)短縮術を適応しました。

そして口角挙上術のデザインを検討しました。患者さんは「口角が薄く後退しているのは当然としても、それより内側まで薄いのです。」「先生のブログでは5〜7㎜上、内側に5〜7㎜三角形に切除とありますよね。」私「これまでその範囲で調整して来ました。」患者さんは「でも私、口角はそんなに下がっていないので、するのなら内側までしっかり切除して下さい。台形でもいいから。」と提案されました。よく診ますと、確かに口角から1㎝内側まで薄く貧弱です。台形に賛成です。それに鼻翼幅が34㎜と小さいので、ここだけ切除すると、口角が下がる。だから赤唇縁での挙上術が必要なのです。「だったら鼻翼基部の直下まで赤唇縁を切除するデザインが求められますね。」と廻りくどく説明して同意しました。

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型の如くの手術です。 深さは選べますが、本症例はやや裏返られせたいので、皮下脂肪層まで切除し、口輪筋をPlication; 折り畳む事にしました。3層縫合です。2層めの真皮縫合の終わった時点で創はピッタリ寄っていました。口角挙上術は下口唇縁まで切開を延長してたわみを無くすデザインです。口角を口輪筋ごと移動させて引き上げます。あたかも微笑んでいる様な口元が作り上げられます。

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術直後の腫脹と傷の為に形態の評価は難しいと思います。口唇周囲は血行が豊富なので腫脹が強く、表情筋である口輪筋が効かないため、力の無い写真になっています。でも血行が良いため腫脹の軽快も筋の回復も遷延しない傾向にあります。

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術後1週間での抜糸にいらっしゃいました。確かに腫脹の軽減傾向は見られますが、内出血が顕在化してきました。実は上の画像ではコンシーラーで隠してくださったのですが、赤唇部の紫は隠せませんでした。口紅で隠せるのかもしれません。

問題は形態です。鼻翼基部〜鼻柱基部〜鼻翼基部は同幅に6㎜切除しました。口角部で最大7㎜で内側に向けて長底辺7㎜まで台形に切除したのは初めての大きなデザインだったのにも関わらず、継ぎ目が見られます。いやこの画像ではそうかも知れませんが、赤唇縁が炎症で膨らんでいてか、創跡の赤みが広がっているのかの為に、そう見えているのかもしれません。要するにまだ経過中で形態は評価出来ないと思います。

確かに面白い症例です。術前から形態的に特徴がありました。鼻の幅に対して唇の幅の比率があるので切除部位が広くなるのです。更に口唇が長過ぎないので切除幅の決定までに悩ませられました。また、口唇の前後位置関係がペタっとしているのでどうすれば治せるかにも悩みました。医療者も受療者も悩みながら、デザインを検討しました。

こうして1週間での経過を見ると、なんかいい!。すっきり感が醸し出せています。それでいて術前と比べてゴージャス感も作り出せています。寂しくない口元なんです。ちょっと色っぽいくらいかもしれません。

要はデザインの勝利です。取り足りない部分があって継ぎ目が出来たとしても追加切除は可能です。何度も言いますが、赤唇縁の切除は口角付近に限定されます。赤唇縁のridge;畝を無くすと貧弱になりますが、口角は後方にあり畝がないので切れるのです。症例ごとに口角のどこまでが切れるかは違います。ベタッとしている唇もあればプクッとしている唇もあります。本症例はモタッとしているのに貧弱なので幅を多く取りました。とはいっても今までで最大です。いきなりもっと取ってしまったら、治せません。もし取り過ぎたら戻せません。過ぎたるは及ばざるが如しです。

まだ創跡が膨らんでいるので評価は下せませんが、逆にここまで取って目立たない結果が得られるなら、もう一押し出来るかもしれません。追加切除は可能です。これまでも派手な事して来た私ですから、トライしたくなるかもしれません。また、次回の来院時にはメイクと口紅でどのように見えるかも知りたいものです。色合いで膨張と収縮を見せられますから、ridgeも含めて唇の立体感の微妙な感じが演出できると思います。

唇は動きが激しく立体的な構造なので、ゴールの設定が難しい部位です。ちなみに瞼は上下には大きく(正常では12㎜以上)動きますが前後には動きませんから、挙上力と余剰組織の処理が主体となり、術前のデザイン決定が定式的に出来ます。(実は私達が経験豊富だから慣れているだけかもしれません。)対して、口唇部ももちろん上下には動きますが、前後にも側方向にもかなり動く部位なので、形態の評価としてはより立体的な観点が要されると思います。勿論眼瞼も口唇も閉じないとまずいのですが、眼瞼を閉じる眼輪筋に比べて口唇を閉じる口輪筋は力が強いので、機能的問題は起き難い部位です。ただし周囲の骨格が影響します。頤が後退している人は口を閉じる際に後輪筋の収縮力が必要な為に梅干しの種の様なしわしわが出来ます。上口唇を短くし過ぎて閉じにくくすると、それが増悪するので注意が必要です。本症例では影響ありませんでした。

私はよく「キスしたくなる唇の形態が狙いです。」と言います。口唇を前に出して尖らせる運動はキスの時が一番セクシーでしょう?。唇は性器ですから?!。それは言い過ぎだとしても、赤唇縁のRidgeがないと、立体感が無くなり寂しい感じになります。また赤唇部の幅がないと冷たい感じになります。そして白唇幅との比率もかなり影響します。その意味では、本症例では今回の改良手術で充分な効果が見られると思います。縦横の比率も丁度いい感じです。

結局様々な評価を試みましたが、結論はまだ出ません。唇は生命現象を表現する臓器ですから、形態と機能面での詳細な検討を要しますし、術後の運動機能の回復に因る変化が生じますから、中期的な経過観察を要します。

その意味でも、長く診ていかなければならず、しばらく症例の評価を楽しめます。だから口唇は面白いのです。次回来週をお楽しみに!。